コラム
2019年12月09日

どうなる一般NISA~運用可能期間の長期化が必要~ 

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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2024年以降に制度変更?

2014年から始まった少額投資非課税制度(詳細は【図表1】。以後、一般NISA)。株や投資信託の運用益に通常、約20%課税されるところが非課税になる制度である。2018年からは つみたてNISAも始まり、2019年6月末時点で一般NISAが1,162万口座、つみたてNISAが147万口座、合計して1,308万口座、買い付け額は17兆円(うち一般NISAが16.9兆円)を超えている。
 
一般NISAが2023年に投資期限を迎えるにあたって、政府が制度の見直しを検討している。つみたてNISAは投資可能期間の延長といった簡単な変更にとどまる見込みであるが、一般NISAは大きく変わる可能性が出てきている。その背景には、日経新聞等の各種報道によると現在の一般NISAは短期売買に使われることが多いことなどがあげられている。実際に足元の11月にネット証券の一般NISAから短期投資に用いられる弱気型ETF(日経平均株価が下がったら2倍に上がる指数に連動するETF)が大量に買い付けられたことが話題になったばかりである。
【図表1】 「一般NISA」と「つみたてNISA」

一般NISAは長期投資向きなのか

そもそも一般NISAの制度ができた当初から、一般NISAは長期投資向きではないとの見方があった。損益通算ができないのにも関わらず、投資可能期間が5年しかないためである(ゆえに筆者は年間の投資可能額は少ないが つみたてNISA派である)。実際に日経平均株価を単純に5年間買い持ちしてもうまくいかない年が多かった【図表2】。つまり過去の日本株式にとって5年は短すぎる、長期投資とはといえなかった。そのため、一般NISAが長期投資に向かないと考えているものの、1年ごとの投資可能額が つみたてNISAと比べて多いことに魅力を感じている投資家が多いと思われる。そのような投資家が一般NISAを用いて高配当株に投資し得られる配当を非課税にすることや、または一般NISAを用いて短期売買で売却益を狙うことは合理的な投資行動といえる。
【図表2】 1984年から毎年5年間、日経平均株価に120万円を投資すると

年間60万円で期間10年にしてはどうか

にもかかわらず、観測報道では5年を変更するという話は筆者の知る限りでは出てきていない。今度の制度変更の狙いが本当に長期投資の促進であるならば、やはり投資可能期間の長期化が必要不可欠なのではないだろうか。例えば、年間投資可能額を現行の120万円から60万円にする代わり、投資可能期間を5年から10年に延ばしてみてはどうだろうか。現在、一般NISAを利用している投資家、さらには財務省からも理解が得やすい上に、現行よりは長期投資に用いる投資家が増えるのではないだろうか。今後の制度変更がどうなるのかが注目される。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2019年12月09日「研究員の眼」)

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