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インド経済の見通し~19年度後半は景気底入れも、内外需の停滞で低成長が継続、20年度は農村部の需要回復で景気上向きへ(2019年度+5.2%、2020年度+6.3%)

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠
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経済概況:投資減速で2013年以来の低成長


同様に、政府消費は同15.6%増(前期:同8.8%増)の二桁増に加速し、7-9月期のGDPを押し上げた。
純輸出については、輸出・輸入ともに昨年の二桁成長から落ち込んだ。まず輸出は同0.4%減(前期:同5.7%増)となり、世界経済の減速や米中貿易戦争を背景に急速に鈍化してマイナス圏に転じた。また輸入は同6.9%減(前期:同4.2%増)となり、輸出悪化と国内需要の鈍化を受けて輸出を上回る減少幅となった。結果として、純輸出の成長率寄与度は+1.8%ポイント(前期:+0.1%ポイント)と改善した。
1 インドでは不良債権問題を背景に国営銀行の融資が厳格化するなか、ノンバンク金融会社(NBFC)がインドの中小企業や消費者向けの信用供与を拡大させてきた。預金を持たないNBFCは資本市場で資金調達を行うため、IL&FSのデフォルトをきっかけとする流動性逼迫により経営状況が悪化している。
経済見通し: 景気は底入れも、回復は遅れる見通し
まず19年度後半は内外需ともに伸び悩むだろう。自動車販売は今年8月を底に増加傾向に転じたほか、来年4月の排ガス基準「バーラト・ステージ(BS)6」導入を前に現行車両に対する駆け込み需要が見込まれる。一方、今年のカリフ作の農業生産の低下を受けて農村部の消費需要が低迷するため、民間消費の回復は限定的となりそうだ。またRBIはこれまでに大幅な利下げを実施、政府は8月と9月に景気刺激策(不振に喘ぐ自動車と住宅、ノンバンク、中小企業分野の支援、法人税減税)を公表したが、昨年から続くノンバンク金融会社の流動性収縮の影響が燻るなか、景気の先行き不透明感が払拭できていないため、民間部門を中心に投資の伸び悩みが続くだろう。外需は、世界経済の減速や米中貿易戦争の長期化、米政権によるインドの一般特恵関税制度(GSP)対象国除外2など貿易環境は依然として厳しく、輸出は停滞するだろう。

以上の結果、19年度は内外需揃って低迷して実質GDP成長率が+5.2%と、18年度の+6.8%から大きく減速するだろうが、20年度は農村部の需要回復や輸出の底打ち、政府と中銀の景気下支え策の効果発現などにより+6.3%成長まで回復すると予想する(図表5)。
2 5月31日、米トランプ大統領がインドを一般特恵関税制度(GSP)の対象から除外することを発表した。GSPは途上国の経済発展を促すことを目的に米国への輸入にかかる関税を一部免除する制度である。GSP除外により、インドから輸出される自動車部品や化学薬品、食器類に最大7%の関税が課されることになる。
(為替の動向)ルピー弱含みが続く

先行きもルピーの軟調な推移が続くだろう。原油価格は世界経済の減速や米国でのシェールガスの生産拡大などが押し下げ要因となり、引き続き伸び悩む見通しであるほか、景気減速が続くなかでも貿易収支の悪化が回避されることはルピー相場の安定に寄与するだろう(図表7)。しかし、米中貿易摩擦の長期化や米国の金融政策の緩和休止などによる新興国からの資金流出圧力、RBIの金融緩和策や為替介入、そして税収減に伴う財政赤字の拡大などが加わり、ルピー相場は軟調な推移が続くと予想する。
(物価の動向)当面は食品価格を中心に高めで推移するが、徐々に物価安定へ

先行きのインフレ率は当面、食品インフレによってRBIの中期インフレ目標を上回る推移が続くだろうが、南西モンスーンの影響で収穫が遅れていた作物の供給が広がるなかで食品インフレは落ち着いていくだろう。また今後も国内需要の回復が遅れて需給が引き締まらないため、コアインフレ率は低位安定して推移しよう。CPI上昇率は19年度末に+4.0%、20年度末に+3.6%になると予想する。
(金融政策の動向)景気下支えに向けて利下げを継続

先行きについては、当面は緩和的な政策スタンスを継続するだろう。これまでの積極的な利下げにもかかわらず、景気減速に歯止めがかかっていないこと、厳しい外部環境から輸出停滞が当面続くと見込まれること、コアインフレ率が低水準で推移していることなどから、RBIは12月に0.25%、来年2月に0.15%の追加利下げを実施すると予想する。今後、景気は底入れするが、回復は遅れると予想され、政策金利は2020年度も低水準に据え置かれるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年12月04日「基礎研レター」)
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03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
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