2019年04月26日

【インド】農民の困窮とモディ政権の農業政策~儲かる農業の実現、アグリテックが転機に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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■要旨

現在インドは中国を上回る経済成長を遂げているが、農家は貧困に喘ぎ、成長から取り残されてしまっている。人口の約6割を占める農業・農村の発展の遅れは今年の総選挙の結果を左右する問題となるだろう。

インドは1947年の独立後に食料不足に直面していたが、「緑の革命」により穀物生産が拡大して現在は農業大国となっている。しかし、非農業部門の雇用が不十分なために農業就労者が増え続けていることや農業部門固有の問題により、労働生産性は伸び悩んでいる。インドの農業は、大半が零細・小規模経営であることや機械化・農業知識などの技術面の遅れ、非効率なサプライチェーン、自然環境に左右されやすいといった問題を抱えている。

モディ政権は農業部門の問題解決に取り組み、インターネットを活用した農産物市場の導入によってサプライチェーンの効率化を図るなど一部で進展は見られたものの、成果の出るまでに時間のかかる課題が多く、短期間で貧困に苦しむ農家の負担を和らげることはできなかった。その間に天候要因や景気の悪化により農家の生活は苦しくなっていき、結果としてMSPの引き上げなど従来型の補助金漬けの農業政策に頼らざるをえない状況に追い込まれていった。こうした農家を保護するための補助金は財政の負担であり、農業部門の改革に充てる財源は制限されてしまっているようだ。

本稿では、こうした農業部門と農業政策の現状を整理した上で、今後の農業政策の行方を考察する。

■目次

1――はじめに
2――農業・農民の困窮
  2-1|増加する穀物生産量と世界水準に比べて低い単位面積当たりの収量
  2-2|農業部門と非農業部門で拡がる格差
3――農業部門が抱える構造問題
  3-1|経営規模の問題
  3-2|技術面の問題
  3-3|サプライチェーンの問題
  3-4|自然環境の問題
4――インド政府の農業政策
  4-1|伝統的な農業政策
  4-2|モディ政権の農業政策
  4-3|モディ政権の農業政策に対する批判
  4-4|インドの農業部門と農政を巡る課題(まとめ)
5――今後の農業政策の展望
6――おわりに
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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