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2019年11月19日
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■要旨
- ユーロ圏経済の低調な推移が長引いており、低調な推移はさらに続く見通しだ。当研究所では21年にかけて潜在成長率を下回る低成長とECBの目標圏を下回る低インフレが続くと予測している。EUの欧州委員会は、経済見通しを、19年初の大幅な下方修整の後、連続で引き下げてきた。11月の「秋季経済見通し」では、従来の「早期回復シナリオ」を放棄、「低空飛行が今後も続くシナリオ」に軌道修正した。
- ECBが9月の政策理事会で決めた5本柱の「包括的緩和パッケージ」は、ドラギ前総裁率いる執行部が異論を押し切ったとされる。追加緩和余地はそもそも乏しくなっていることもあり、ラガルド新体制はECBは当面、政策手段の効果と副作用の検証や、金融政策の戦略の見直し、そして政策理事会内の対立解消に重点を置かざるを得ない。
- 長期停滞リスクへの政策対応の手段としての財政政策への期待は高まっており、特に、財政余地が大きいドイツの財政出動への期待は高い。欧州委員会は20年度のドイツは「やや拡張的」と判断している。近隣諸国やECBから踏み込み不足に映る政策だが、ドイツは景気刺激策を積み増す必要はないとの立場だ。
- 主力産業の自動車産業の不振には100年に1度の大変革期にあることも関わっている。ドイツは、本格的な財政出動がなくとも、製造業を取り巻く環境の激変に適応できるのか、20年以降の最大の注目点の1つだ。
(2019年11月19日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2015~2024年度 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017~2024年度 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022~2024年度 Discuss Japan編集委員
・ 2022年5月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
・ 2024年10月~ 雑誌『外交』編集委員
・ 2025年5月~ 経団連総合政策研究所特任研究主幹
伊藤 さゆりのレポート
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