2019年11月08日

オフィスは需給逼迫が継続。REIT指数は上昇基調を強める。-不動産クォータリー・レビュー2019年第3四半期

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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1. 経済動向と住宅市場

2019年4-6月期の実質GDP(2次速報)は、前期比0.3%(前期比年率1.3%)と3四半期連続のプラス成長となった。海外経済の減速や世界的なIT需要の落ち込みなどによる外需の悪化を堅調な国内需要がカバーする状況が続いている。

経済産業省によると、2019年7-9月期の鉱工業生産指数は、前期比▲0.6%と2四半期ぶりに下落した(図表-1)。自動車や半導体製造装置の輸出減少を背景に、輸送機械や生産用機械の生産が落ち込んでいる。また、2019年9月の日銀短観によると、大企業・製造業の業況判断DIは+5(前期比▲2)となり、3四半期連続で景況感が悪化した(図表-2)。
図表-1 鉱工業生産(前期比)/図表-2 日銀短観 業況判断DI(大企業)
ニッセイ基礎研究所は、9月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2019年度0.6%、2020年度0.7%になると予測する(図表-3)1。2019年10月の消費増税は前回の増税時(2014年4月)に比べて経済への悪影響は小さくなるが、民間消費を中心に国内需要が一定程度落ち込むことは避けられず、当面は1%を下回る成長を見込む。
図表-3 実質GDP成長率の推移(年度)
2019年7-9月期の新設住宅着工戸数は約23.3万戸(前年同期比▲5.4%)となった。個人向けアパートローン融資の厳格化を背景に、貸家が13カ月連続で前年同期比マイナスとなる等、引き続き低水準の着工が続いている(図表-4)。
図表-4 新設住宅着工戸数(全国、暦年比較)
2019年9月の首都圏のマンション新規発売戸数は2,359戸(前年同月比▲30.0%)と前年同月を大幅に下回った(図表-5)。1-9月累計でも19,566戸(前年同期比▲16.3%)にとどまっており、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金など、消費増税後の住宅取得に対する支援策が講じられたこともあり、目立った駆け込み購入は起こらなかった模様である。

また、注目を集めていた東京・晴海の五輪選手村跡地における開発プロジェクト「HARUMI FLAG(分譲戸数4,145戸)」の第1期販売(600戸)が7月~8月に行われた。首都圏全体の販売状況が低迷するなか、申し込み数は1,543 組で平均倍率は約2.6倍となり、売れ行きは堅調であった。
図表-5 首都圏のマンション新規発売戸数(暦年比較)
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2019年第3四半期の首都圏の中古マンション成約件数は9,406件(前年同期比+8.3%)となり、引き続き高い水準と維持している(図表-6)。
図表-6 首都圏の中古マンション成約件数(12カ月累計値)
また、日本不動産研究所によると、住宅価格指数(首都圏中古マンション)は高値圏で推移している。2019年8月の指数は前期同期比+0.9%となり、17ヶ月連続で前年同月比プラスとなった(図表-7)。中古マンションは、新築に対する価格面での割安感や優良ストックの拡充等を背景に、需要が高まっており価格も上昇している。
図表-7 不動研住宅価格指数(首都圏中古マンション)

2. 地価動向

地価の上昇は継続し、上昇幅も拡大している。国土交通省の「地価LOOKレポート(2019年第2四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「97」、横ばいが「3」、下落が「0」となり、6期連続で上昇地区が9割以上を占めた(図表-8)。再開発事業の進展により繁華性が向上したエリアや利便性の高いエリアを中心として不動産投資が活発で、大阪圏の商業系3地区(「西梅田」・「茶屋町」・「新大阪」)は前期の 「3~6%%上昇」から 「6%以上の上昇」となり、上昇幅が拡大した。
図表-8 全国の地価上昇・下落地区の推移
一方、野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(2019年10月1日時点)は前期比0.1%となった(年率0.1 %上昇)。「横ばい」を示した地点の割合は94.0%(前回91.1%)となり、横ばい傾向が継続している(図表-9)。
図表-9 首都圏の住宅地価格(変動率、前期比)

3. 不動産サブセクターの動向

3. 不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2019年9月の都心5区空室率は1.64%(前月比▲0.07%)と過去最低水準となった。平均募集賃料は69カ月連続で前月比プラスとなり、賃料の上昇ペースも年率7%前後の高水準を維持している。他の主要都市でもオフィス需給が逼迫するなか空室率は低下し、賃料上昇が続いている(図表-10)。
図表-10 主要都市のオフィス空室率
三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」によると、2019年第3四半期の東京都心部Aクラスビルの空室率は0.6%と4期連続で1%を下回り、極めて逼迫した需給環境が続いている(図表-11)。一方、2019年第3四半期の成約賃料(月/坪)は39,624円となり、前期(41,392円)を下回った(前期比▲6.9%)。三幸エステートは「品薄感は強いものの、テナント側の賃料負担力は伸び悩んでおり、40,000円/坪前後で天井感が広がる兆しも見られる」と指摘している。
図表-11 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
ニッセイ基礎研究所は、東京都心部A クラスビルの賃料見通しを8月に改定した。A クラスビルの成約賃料は40,000 円台/月・坪の水準を維持した後、大量供給による空室率の上昇や、東京五輪開催後の経済低迷等に伴い下落基調に転じ、2023 年には約35,000 円となると予測する(図表-12)。現在の賃料水準は下回るものの、2017 年の賃料水準(34,599 円)と同水準に留まる見通しである。
図表-12 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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