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現代消費文化を斬る-若者が映画館から離れた「4つの理由」

生活研究部 研究員 廣瀬 涼
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はじめに
1 現代消費文化を斬る-「今時の若いもんはなぜ消費しないのか」という問いに対する試論https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=62515?site=nli
1――サブスクは本当にシネマのパイを食べているのか
北米においても、過去12ヶ月に劇場で映画を鑑賞した本数が多い人ほど、サブスクリプション・サービスで消費する時間が大きい傾向にあったことが3、劇場所有者協会(NATO)の調査で分かった。同様に、劇場に足を運ばない人はサブスクリプション・サービスにも時間を使わないことも分かった。また、2018年中のアメリカにおけるケーブルTVや有料TVサービスの解約率が32.8%、3,300万件にまで登ったことから、サブスクリプション・サービスがパイを奪い合うのは、ケーブルTVや有料TVサービスの視聴者であると言及している。
一方米PostTrakの調査によると、北米における劇場観客の年齢比率は、18~24歳が27%で最大で、全体の49%の観客が24歳以下の観客であるという。日米間で若者の映画館に対する意識に差はあるが、それでもそれぞれの調査から、サブスクリプション・サービスが映画館市場のパイを奪うということに関しては、まだ断言することはできないと筆者は考えている。
他の視点から見てみよう。実際に映画館離れによって来場者数や映画館数は変化しているのだろうか。国内の映画製作配給大手四社の団体である一般社団法人日本映画製作者連盟が1955年から継続している調査をみると映画館利用者人口は1958年の11.27億人をピークに急速に入場者数は減少し、1970年後半以降はほぼ横ばいの形を崩していない(図表1)。
2 定期購読が元々の意味で、製品やサービスなどを一定期間利用する事に対して、代金を払うシステムのこと。動画配信サービスにおいては、月額いくらで動画が見放題のサービスを意味する
3 https://theriver.jp/streaming-and-theaters/
https://variety.com/2018/film/news/streaming-netflix-movie-theaters-1203090899/
4 公開本数が大幅に増加した一方で、入場者数の増加度合いは穏やかである点から映画1本あたりの平均入場者数が減少していると指摘する声もあるが利用者人口を維持していることには変わりない。http://www.garbagenews.net/archives/2034792.html
2――1900円は高い金額なのか
第54回学生生活実態調査によると、大学生の74.1%がアルバイトをしているという。彼らの中には学費、家賃や光熱費などを自身でまかなっている者もいる。また一人暮らしでなくても家計に収入を入れている者もいる。しかし、大部分のアルバイトをしている学生は、自分で自由に使えるお金を有しているのではないか。地方差もあり全体のアルバイト平均収入は月4万円前後といわれてはいるが、東京に限った調査では平均月5万円といわれている。それにプラスして、長期休みを利用して稼ぐ学生も多くいる。筆者も学生時代、所得税控除のラインである年間103万円ギリギリまで稼いでいたタイプの学生であり、不自由なく学生生活を過ごしてきた。
3――米国と比べて割高な日本の映画料金
一方でアメリカ映画協会の調査によると2016年のものではあるが映画平均料金は$8.65(932円6)であった。この価格によって北米においては、数ある大衆娯楽の中で、映画が最も身近で手軽な娯楽としての位置づけを保っている。また、北米における平均的な家族のサイズが4人であることから、北米における大衆文化であるスポーツ観戦やテーマパークの4人分の入場料と4人分の映画料金を比較している(図表5)。この調査によれば、家族4人でも$35(3,770円)という低予算で娯楽を楽しめることが、生活者に映画館が根付いている要因の一つであるとしている。
都内で、家族4人(両親・中学生以下2人)で映画を見たとすると、大人1,900円が2枚、子ども1,000円が2枚で6,000円はかかってしまう。先日筆者自身も家族4人で久しぶりに映画館まで足を運んだが、大人4人で7,500円を越えていて驚いた。日本において映画は手軽な娯楽とはいい難い存在になっているのかもしれない。
5 株式会社アスマーク映画に関するアンケート調査2011年10月25日~10月26日より引用
6 2019年9月27日でのレート
(2019年10月01日「基礎研レポート」)

03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・公益社団法人日本マーケティング協会 第17回マーケティング大賞 選考委員
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
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