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- 米国保険業界の資産運用アウトソーシング その2-米国保険監督官協会(NAIC)のデータから-
2019年09月10日
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3――資産運用アウトソーシングの目的
図表3は、アセットアウトソーシングエクスチェンジ社が公表した、保険会社に資産運用をアウトソーシングする目的を聞いた調査の結果である。
「会社の内部では手に入らない投資の専門能力が必要だから」が調査対象の保険会社の78%からの賛同を得ている。
これに、「専門的な投資戦略や専門能力が必要だから」63%、「会社の内部では手に入らない(適切な支援インフラストラクチャー等の)リソースにアクセスする必要があったから」41%、と専門能力や専門的なリソースを専門業者にアウトソースすることで手に入れたいとする回答が続く。
その後、「投資の成果目標にかなうことの困難さが増したから」34%、「投資マネジメント上の問題の複雑さが増したから」29%と、昨今の低金利環境等が持続する中で目標投資利回りを挙げることや投資をマネジメントすることの困難さを認識したことから専門的な資産運用会社の活用に踏み切ったとする回答が続く。
「外部への運用委託の方がコストを下げるから」と、コスト要因をアウトソーシングの目的としている保険会社は全回答会社のわずか15%にすぎない。
「適格な内部スタッフを見つけ、維持することが困難だから」14%、「キーパーソンであった内部スタッフが退職したから」9%は、内部マネージャー体制を維持する組織的な困難さの問題である。
「会社の内部では手に入らない投資の専門能力が必要だから」が調査対象の保険会社の78%からの賛同を得ている。
これに、「専門的な投資戦略や専門能力が必要だから」63%、「会社の内部では手に入らない(適切な支援インフラストラクチャー等の)リソースにアクセスする必要があったから」41%、と専門能力や専門的なリソースを専門業者にアウトソースすることで手に入れたいとする回答が続く。
その後、「投資の成果目標にかなうことの困難さが増したから」34%、「投資マネジメント上の問題の複雑さが増したから」29%と、昨今の低金利環境等が持続する中で目標投資利回りを挙げることや投資をマネジメントすることの困難さを認識したことから専門的な資産運用会社の活用に踏み切ったとする回答が続く。
「外部への運用委託の方がコストを下げるから」と、コスト要因をアウトソーシングの目的としている保険会社は全回答会社のわずか15%にすぎない。
「適格な内部スタッフを見つけ、維持することが困難だから」14%、「キーパーソンであった内部スタッフが退職したから」9%は、内部マネージャー体制を維持する組織的な困難さの問題である。
この調査結果でも見られる通り、グループ外の資産運用会社を活用することの、もっとも大きな利点は、保険会社が、特定の投資専門スキルを持つ1つ以上の資産運用会社を選択的に活用できることである。保険会社は、必要に応じ、専門スキルを持つ資産運用会社と契約して、投資ポートフォリオを完成させることができる。
近年は特に低金利環境の中、プライベートエクイティ、ヘッジファンド等の形での代替資産への資産配分も増加している。厳しい運用環境の中でも、保険会社の資産が持続的に増加しつつあり、運用利回りを追究するために新しい資産種類や投資手法に挑まなければならない状況が、保険業界におけるグループ外の資産運用会社へのアウトソーシングの動きを呼び起こしている。
近年は特に低金利環境の中、プライベートエクイティ、ヘッジファンド等の形での代替資産への資産配分も増加している。厳しい運用環境の中でも、保険会社の資産が持続的に増加しつつあり、運用利回りを追究するために新しい資産種類や投資手法に挑まなければならない状況が、保険業界におけるグループ外の資産運用会社へのアウトソーシングの動きを呼び起こしている。
さいごに
ゴールドマンサックスアセットマネジメントが今年4月に発表した、GSAM INSURANCE SURVEY2019では、アンケートに回答した全ての保険会社のうち、全世界で82%、南北アメリカで83%、アジアで81%の保険会社が、2019年に2018年とほぼ同額をアウトソースするまたはアウトソーシングを増やす予定と答えている。
またブラックロックも昨秋発表した「グローバル保険レポート2018」の中で、「購入または構築するのではなく、この分野の専門知識を借りるという実用的な決断は一般的なものです。全体では、回答者の約35%がプライベートマーケット資産の保有の管理を完全にアウトソースし、別途52%が部分的にアウトソースしています。与えられた理由は、ほとんどの保険会社が、これらの資産に関し自社内に専門知識を構築することによる、コスト増加と収益性の希薄化に消極的であることを示唆しています」、「プライベートマーケット資産のアウトソーシング管理は、現在ではどこの保険会社でも確立された戦略であり、規模に左右されることはないようです」、「これは、回答者の投資収益を改善するための最優先事項が非伝統的資産クラスへの配分の増加および投資関連の手数料および費用の削減であるという2017年の調査結果に照らして特に意味があります。これら2つの目標を達成する上で、アウトソーシングはますます重要な役割を果たしています。」としている。
受け皿としての資産運用会社の知識、ノウハウの向上もあって、今後とも、保険会社の資産運用アウトソーシングは活用が進んでいきそうである。
動向のフォローに努めたい。
またブラックロックも昨秋発表した「グローバル保険レポート2018」の中で、「購入または構築するのではなく、この分野の専門知識を借りるという実用的な決断は一般的なものです。全体では、回答者の約35%がプライベートマーケット資産の保有の管理を完全にアウトソースし、別途52%が部分的にアウトソースしています。与えられた理由は、ほとんどの保険会社が、これらの資産に関し自社内に専門知識を構築することによる、コスト増加と収益性の希薄化に消極的であることを示唆しています」、「プライベートマーケット資産のアウトソーシング管理は、現在ではどこの保険会社でも確立された戦略であり、規模に左右されることはないようです」、「これは、回答者の投資収益を改善するための最優先事項が非伝統的資産クラスへの配分の増加および投資関連の手数料および費用の削減であるという2017年の調査結果に照らして特に意味があります。これら2つの目標を達成する上で、アウトソーシングはますます重要な役割を果たしています。」としている。
受け皿としての資産運用会社の知識、ノウハウの向上もあって、今後とも、保険会社の資産運用アウトソーシングは活用が進んでいきそうである。
動向のフォローに努めたい。
(2019年09月10日「保険・年金フォーカス」)
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