2019年09月06日

ケアプランの有料化で質は向上するのか-本質は報酬体系の見直し、独立性の強化

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   三原 岳

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■要旨

2021年度に予定されている介護保険制度改正のうち、介護保険サービスを受ける際の前提となるケアプラン(介護サービス計画)の有料化が一つの焦点となっている。ケアプラン作成を含めたケアマネジメントについては、利用者から自己負担を徴収しておらず、財務省はケアプランの有料化を通じて、介護給付費の抑制に繋がるとしている。さらにケアプラン作成を担う専門職のケアマネジャー(介護支援専門員)の間で競争原理が働くようになり、結果的にケアマネジャーの質が上がる可能性を指摘している。

しかし、ケアプランの有料化による給付抑制のインパクトは小さい。さらに質の問題についても、ケアマネジャーは介護を必要とする高齢者の意思決定を支援する「代理人機能」という本来の役割を持っているが、ケアプランを有料化したとしても、この機能の充実に結び付くとは想定しにくい。

むしろ、代理人機能を阻害している要因としては、(1)介護保険サービスをケアプランに組み込まなければ、ケアプラン作成に関わる介護保険の報酬を受け取れない「報酬体系の問題」、(2)ケアマネジャーの勤める居宅介護支援事業所が他の介護保険サービス事業所に併設されており、利用者の代理人機能が発揮されにくい「独立性の問題」――という2つの制度的な課題が大きく、ケアマネジャーやケアマネジメントの質の問題を考える上で本質的な論点である。

本レポートでは、制度創設時の理念や経緯にさかのぼりつつ、ケアプラン作成に至るプロセスであるケアマネジメントや、ケアマネジャーに期待されている本来の役割を考察した上で、ケアプラン有料化を巡る政府内の議論を取り上げる。その上で、ケアマネジャーが本来の専門性を発揮できる環境整備に向けて、報酬体系の見直しや独立性の強化など制度改正の選択肢を挙げる。

■目次

1――はじめに~ケアプラン有料化で質は確保できるのか~
2――ケアプランとケアマネジメントとは何か
  1|ケアプラン作成に関する費用
  2|ケアマネジメントとは何か
  3|ケアプランとは何か
  4|ケアマネジャーとはどんな専門職か
  5|ケアマネジャーの資質向上問題
3――ケアプラン有料化を巡る動き
  1|質の問題と絡めて有料化を求める財政制度等審議会の主張
  2|有料化に向けて検討すると記述した骨太方針
  3|有料化に反対する日本ケアマネ協会の主張
4――ケアプラン有料化の論点(1)~財源論からの視点~
  1|自己負担を導入した場合の給付抑制効果は500億円程度
  2|有料化によるマイナス面の予想 1) ~利用控えの懸念~
  3|有料化によるマイナス面の予想 2) ~自己作成者の増加による市町村の負担増~
  4|本質は「質」の問題
5――ケアプラン有料化の論点(2)~質の観点~
  1|コストと質を同時に議論している財政審の問題点
  2|良質なケアプラン、良質なケアマネジメントとは何か
  3|質の向上に欠かせない利用者の納得感
6――ケアマネジャーを巡る制度的な課題(1)~報酬体系の問題~
  1|介護支援専門員が介護「保険」支援専門員になるインセンティブ構造
  2|給付管理にしか介護報酬が付かない制度創設の経緯
7――ケアマネジャーを巡る制度的な課題(2)~独立性の問題~
  1|介護「保険サービス営業支援」専門員になる事業所経営の構造
  2|制度創設時から焦点になっていたケアマネジャーの公正中立性問題
  3|「公正中立性」が損なわれていることを示す事実
  4|公正中立性の欠落が需要を誘発?
8――ケアマネジメントの質を高めるための選択肢
  1|報酬体系の見直し
  2|ケアマネジメントの報酬引き上げ
  3|経営体の分離、あるいは情報交換の規制
  4|給付から切り離す選択肢
  5|その他の制度改正
9――おわりに
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

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