2019年02月08日

社会保障関係法の「自立」を考える-映画『こんな夜更けにバナナかよ』を一つの題材に

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

社会保障における自立とは何か――。現在、公開されている映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』を観て、そんなことを強く感じた。これは筋ジストロフィーの男性を主人公としており、セリフの中で「障害者の自立」という言葉を繰り返し使われていたためである。そこで、社会保障関係法の条文における「自立」という言葉の使い方を調べてみると、様々な意味や文脈で多用されていることに気付く。

具体的には、(A)支援を要する利用者が自己決定する自立、(B)定職に就く職業的自立、(C)収入を得ることによる経済的自立、(D)社会生活に適応する自立、(E)他人の支援を必要としない身体的自立、(F)自治体の財政的自立、(G)現場の関係職が支えるべき自立――の7つに大別できると考えている。本稿は社会保障に関する主要な法律の条文を比較し、それぞれの意味や論点を考える。


■目次

1――はじめに~社会保障関係法の「自立」~
2――ネタバレにならない範囲で、映画のあらすじと論点
  1|自立を追求した主人公
  2|映画で頻繁に登場した自立
3――社会保障関係法における自立
  1|障害者基本法などの条文
  2|障害者雇用促進法などの条文
  3|生活保護法などの条文
  4|児童福祉法などの条文
  5|母子父子寡婦福祉法などの条文
  6|介護保険法などの条文
  7|医療法などの条文
  8|社会福祉士介護福祉士法などの条文
4――社会保障関係法の自立の解釈
  1|自立の整理
  2|自立が多義的な理由
  3|自立は相対的?
5――おわりに
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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