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人口減少社会データ解説「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」(中)-女性人口エリアシャッフル、その9割を東京グループが吸収-
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
東京都はこの10年ですっかり「男性よりも特に女性の社会増加に強い」エリアへと変貌を遂げたのである。
3――「地方創生」対策効果を揺るがす、女性人口の一極集中
この37万人という数字は2019年6月ベースで見て、長野県の県庁所在地である長野市、大阪府吹田市、愛知県豊橋市の総人口にほぼ匹敵する規模である。
わずか10年で県庁所在地都市レベルの女性人口が、現地の出生率に関係なく社会流出入だけで増加したことになる。わかりやすく言うと、10年間の女性純増数だけで、1つの市が東京都にできる勢いという状況である。この10年間の東京都の女性人口吸引力は驚異的といわざるを得ない。
地方創生では様々な視点で政策が講じられているとは思うものの、もしそれが昭和型の男性吸引力増強志向に立脚した
「男性に仕事を与えれば、それに嫁がついてくる」
「男性に仕事があれば子育て世帯が誘致できる」
という考え方では、女性社会人口増加が強相関をもつ(本レポートの(上)参照)子ども人口を増加させることは難しく、30年後人口(推計値)を増加に転じさせることに成功した東京都のこの10年間の姿とは統計的に見事なまでの逆張り政策となる。
ここでもう一度、(上)で示した下の図を見てみたい(図表6)。
そして人口移動のグロスデータとネットデータの差からは、男性より少なく転出し、「関所」目線で見れば動いていないかに見える女性たちは、その転出入差という視点で見てみると、男性よりも「1度出て行ったら容易には戻ってこない」という性質をみせていることを、地方創生や少子化政策策定において十分に考慮に入れなくてはならない。
次回レポートでは、女性人口が何をキーにして動くのか、について分析結果を紹介したい。
総務省.「住民基本台帳人口移動報告」
東京都.「東京都住民基本台帳人口移動報告 平成30年」
国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」
厚生労働省.「人口動態調査」
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」
総務省総計局. 「国勢調査」
国立社会保障人口問題研究所.「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
天野 馨南子.“人口減少社会データ解説「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」(上)-10年間エリア子ども人口の増減、都道府県出生率と相関ならず-”ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2019年6月10日号
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天野 馨南子.“データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2019年4月26日
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03-3512-1878
(2019年07月16日「基礎研レポート」)
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