コラム
2019年05月13日

データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(2)~子ども人口シリーズ 四半世紀・25年間でみた子ども人口の推移

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに

前回の研究員の眼においては、1950年~2015年戦後の超長期間でみた47都道府県子ども人口の変化を俯瞰した。

超長期でみると、国全体としての少子化とは逆の方向を進んだ子ども人口100%超の多子化エリアが3エリアあった。そして2割程度の都道府県が、日本全体の子ども人口減少割合を抑制しているというエリア格差を紹介した。

今回は、より近年のエリア子ども人口の増減を見るべく、1990年から2015年の25年間の変化をみてみたい。この25年間は、91年から93年のバブル崩壊から始まる期間であり、また、団塊ジュニア世代が成人へ移行を開始(1993年時点で20歳~22歳へ)し始めてからの時期であるなど、子ども人口の推移をみるにあたって、興味深い期間となっている。

今回は、中期的な各エリアの子ども人口の動きを俯瞰し、戦後まもなくからの65年間という超長期における子ども人口の推移との比較も行ってみたい。

1990年からの25年間でみると、全エリアで子ども人口が減少・8割までの減少は5エリア

バブル崩壊は1991年から1993年1であるので、1990年からの子ども人口の25年の変化は、ほぼバブル崩壊以降の各エリアの子ども人口の変化を示すこととなる。

この25年間でみると、超長期の変化とは異なる点として、全エリア、子ども人口を減少させた。日本全体では25年間で7割に減少している(図表1)。しかしながら、その減少程度にはやはり大きなエリア格差があり、8割までの減少に留めたエリアが5エリアある一方で、子ども人口が25年前の6割を切るエリアも11エリア存在する。

65年間推移では全国6位であった東京都の子ども人口は、1.0から1.2台という全国最低の出生率をこの期間継続するが、それとは無縁に、全国1位の子ども人口キープ率へと浮上する。

25年で約9割キープという、2位の神奈川県(65年間の変化では全国1位の子ども人口を維持)の変化を5ポイント引き離す、中期的な子ども人口キープにおける追い上げを見せている。

東京都のベッドタウンの一角であり、期間出生率が1.2から1.3台という神奈川県、三大都市の1つである愛知県(同1.3~1.5台)ならびに大阪府・京都府の「府エリアベッドタウン」として存在する滋賀県(滋賀府民という呼称があるそうである、1.3~1.5台)、そして、全国最高出生率維持の沖縄県(1.7~1.9台)が子ども人口8割以上キープにランクインした。
【図表1】1990年から2015年・47都道府県 0歳~14歳子ども人口増減率ランキング2015年子どもの数/1990年子どもの数
子ども人口を8割までの減少にとどめた、ランキングの1位から5位エリアを見ると、出生率で子ども人口の変化を説明することは難しい。基礎研レポート、データで見る「エリア出生率比較」政策の落とし穴-超少子化社会データ解説-エリアKGI/KPIは「出生率」ではなく「子ども人口実数」、にて解説したが、<出生率>と<母親候補となる女性人口>、この双方の変化を見ることなく、エリアをふるさととする人口の未来を考えることが出来ないことが、25年間の推移からも示されている。
 
一方、子ども人口が25年前の6割を切るエリアをみると、出生率水準の高い島根県、長崎県(同1.4~1.8台、2017年ともに1.7超)が含まれており、当該エリアは出生率の高さよりも、むしろその効果を相殺する母親候補人口減少(流出)の次世代人口への影響を考えねばならず、その深刻さもわかる。

また超長期65年間での変化に同じく、東北エリアが苦戦(6割未満に減少11エリア中5エリアが東北地方)している。
 
1 経済企画庁調査局「経済の回顧(要旨)  平成10年(日本経済の現況と見通し(平成11年1月))」等

65年超長期と25年中期での子ども人口変化の比較

バブル崩壊直後の影響や団塊ジュニアが次世代人口育成世代に入った25年間。47都道府県は超長期と比較してどのような動きを見せたのだろうか(図表2)。
【図表2】戦後65年増減率順位とバブル崩壊以降25年増減率順位の変動状況
超長期に比べて順位が大きく上昇(5ランク超アップ)したのは島根県、熊本県、岡山県、長野県、山梨県、佐賀県である。この6エリアに関しては、中期的には相対的順位が上がっているために、この四半世紀における社会変化によって、他のエリアよりも子ども人口に大きなダメージを受けたのだという議論は難しいエリアということになる。ランクアップしたエリアをみると、すべて中部エリアよりも西側のエリアであることが見て取れる。
 
一方、65年超長期でみても、25年中期でみても相対的ランキングが変わらないエリアも3つ存在する。

岐阜県、栃木県、秋田県である。これらのエリアに関しては相対的にみて、他のエリアよりバブル崩壊後の経済状況や団塊ジュニアの適齢期期間などの影響によらず、全国における相対的地位が変わらないようなエリア特性があり、それが子ども人口減少に影響していると見てよいだろう。
 
中期において、相対的に順位を大きく(-10ランク以上)下げたのは4エリアで、宮城県、北海道、奈良県、茨城県となっている。このエリアに関してはこの四半世紀における、子ども人口政策のパフォーマンスが相対的に見て特に芳しくない、ということが指摘できるだろう。

ふるさととする子ども人口を増やすためには

エリア子ども人口の足し算の合計として日本全体の子ども人口、すなわち次世代人口が決まることは間違いない。しかしながら、そのエリアごとの少子化政策(子ども人口の変化)は出生率高低で語ることは難しく、「女性人口の社会移動」という視点が重要であることを最近のレポートで解説してきた。

末子が18歳未満の子どもをもつ女性の約7割が就労している2令和時代の幕開けにおいて、これまでの男性(もしくは男女合計)の人口の社会移動、ならびに男性目線のエリアの就労・産業構造を考えていても、エリアの人口繁栄の未来は見えないことをデータは示唆している。

では一体、女性人口の社会移動は何をキーとするのか等については、次稿以降において、順次データ分析結果等を紹介していきたい。
 
2 厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2019年05月13日「研究員の眼」)

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