コラム
2019年04月26日

データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?

生活研究部 准主任研究員   天野 馨南子

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はじめに

今月発表した基礎研レポート1において、「地域(以下、エリアと表記)少子化」におけるエリア出生率比較の計算上の意味を考察し、エリア出生率高低比較だけでは、エリアの少子化政策の成功や失敗をほとんどのエリアにおいて語ることが出来ないことを述べた。
 
少子化とは、まさに「子ども人口の減少」である。当然ながら、エリア少子化対策のKGI(Key Goal Indicator:ゴールとなる指標)は出生率ではなく、エリアの子ども人口数である。
あるエリアにおいて、過去よりも子ども人口が増加していればエリアとしての少子化対策は奏功したといえる。しかし、減少していれば、失敗したといえるのである。
 
そこで今回は、第2次世界大戦後まだまもない1950年からの65年間の「47都道府県の子ども人口の推移」をみることで、47都道府県における「戦後の子ども超長期人口政策の成果」を比較してみたい。

1950年からの65年間でみると、3エリアは子ども人口が増加

戦後、日本の出生率は減少を続け、1975年以降2.0、1993年以降1.50を恒常的に下回る。この超低出生率社会において「低出生率エリアでは子どもが増えない」というイメージがもしあるならばそれは大きな誤りである。
前回のレポートにおいてなぜ誤りであるかの計算根拠をすでに述べたので、今回は47都道府県の子ども実数で子ども人口政策の真の成果を確認してみたい(図表1)。
 
戦後出生率が低下の一途をたどる日本であるが、1950年から2015年の65年間で子ども人口を減少させずにむしろ増加させたエリアが3エリアある。
戦後における超長期子ども人口戦略の勝ち組、すなわち「次世代人口の育成に成功したエリア」といえる。
【図表1】1950年から2015年・47都道府県 0歳~14歳子ども人口増減率ランキング(1000人)
出生率から来る印象的には、日本国中どのエリアも子ども人口がさすがに超長期的には減少したであろう、と思うかもしれない。
しかし、神奈川県は134%、埼玉県は117%、千葉県は101%へと、65年前と比べて子ども人口を増加させてきたのである。
 
その一方で、子ども人口を減少させた残りの44都道府県のうち、70%までの減少にとどめることが出来たエリアはわずか4エリア、大阪府、愛知県、東京都、滋賀県のいわゆる三大都市+1県に過ぎない。
 
出生率高低の競争でみるならば、大都市圏はあまねく負け組かに見える。しかし、エリア最終目標としての「エリア子ども人口」の推移からみた結果はむしろ正反対ともいえる。
総じて、若い母親候補人口を大量にかき集める大都市、特に東京都のベッドタウンエリア(通勤圏エリア)として位置づけられて来たエリアに、子ども人口の確保における軍配が上がっている。
 
同じ大都市圏として周辺地方からの人口を集めるエリアであっても、九州の中核都市をもつ福岡県や東北の中核都市を持つ宮城県は、子ども人口がともに50%前後にまで減少した。
25道府県については、子ども人口が65年前の40%にも満たない減少であり、さらに30%を切る県も9県存在する。30%を切る県をみると、東北エリアが6県中5県(青森県、岩手県、福島県、山形県、秋田県)もランクインしており、東北エリアの次世代子ども人口が特に危機的状況であることがわかる。加えて四国の2県(徳島県、高知県)、長崎県、島根県となっている。超長期的にみると東北地方がもっとも子ども人口危機に瀕しており、次に四国地方が危機的な状況となっている。

戦後次世代育成力は狭いエリアに集中、強まるエリア格差の震源は

筆者が関東における子ども人口増加、すなわち少子化どころか「多子化状態」に気がついたのは、自らが親となり、子どもの受験に参戦したことであった。筆者が住む関東においては年々受験生の増加で中学受験が激戦化している。このことは、関東で暮らす子どもの親として子育てしていれば当然気がつく話ではあった。進学塾では毎年あっという間に定員オーバーとなり、大手の進学塾に入ることがまず難しい。東京都では小学校5年生ともなると、入塾テストにさえも半数から7割が不合格という状況のため、大手進学塾は教室増加を検討するも、過密化で新規に場所が確保できない始末である。東京都の1.0に極めて近い出生率の長期推移が、そのまま「東京都の子ども人口激減」につながっているとは到底思えない経験の日々である。
 
図表1からは、全国では65年前よりも子ども人口が53%に減少したことがわかる。しかし、全国一律に半減したわけではなく、全国水準より減少率の低いエリアが11であるのに対して、減少率の高いエリアが36も存在するという格差がみてとれる。
言い方を変えるならば、都道府県数で換算してわずか2割程度のエリアが全体の子ども人口の減少を抑制している形である。
 
このような顕著な子ども人口の推移のエリア格差が「大都市で低く、地方で高い傾向の出生率」とは逆方向に起こっているにも関わらず、長期に出生率の高低がエリア少子化指標として大きくとりあげられ、子ども人口や母親候補である女性人口の変化が議論されることがほとんどなかったことはなぜだろうか。
 
出生率の高低よりも、子どもを生み出す母親候補=女性人口の母数の変化が注目されてこなかったことと、世界経済フォーラムが2018年に発表した世界のジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、日本が149カ国中110位(指数0.660 1.0が完全な男女平等/ちなみに103位中国、108位インド、109位モーリシャスなど)と低位であることは、その背景を同じくしているように思う。
 
ジェンダーギャップ指数において日本が低位であるのは、女性が管理職や政治家といったいわゆる「女性がマネジメントする」という点2において117位と他の指標に比べて著しく劣位であるためである。
もし、都道府県の子ども人口を考える政治・行政・民間などの「マネジメント層」に、子どもを持ちつつ働く女性が(もしくは自らの娘の育児・教育・就職に深く関わった男性でもよいが)もっと参加していたなら、女性人口の社会移動がもたらす女性人口の一部エリアへの集中という問題に対し、もっと深刻に、早期に取り組むことができたのかもしれない。
 
2 ECONOMIC PARTICIPATION AND OPPORTUNITY分野において著しく低位であることが全体の指数を大きく引き下げている
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生活研究部   准主任研究員

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
少子化対策・女性活躍推進

(2019年04月26日「研究員の眼」)

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