- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 子ども・子育て支援 >
- データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?
データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに
少子化とは、まさに「子ども人口の減少」である。当然ながら、エリア少子化対策のKGI(Key Goal Indicator:ゴールとなる指標)は出生率ではなく、エリアの子ども人口数である。
あるエリアにおいて、過去よりも子ども人口が増加していればエリアとしての少子化対策は奏功したといえる。しかし、減少していれば、失敗したといえるのである。
そこで今回は、第2次世界大戦後まだまもない1950年からの65年間の「47都道府県の子ども人口の推移」をみることで、47都道府県における「戦後の子ども超長期人口政策の成果」を比較してみたい。
1950年からの65年間でみると、3エリアは子ども人口が増加
前回のレポートにおいてなぜ誤りであるかの計算根拠をすでに述べたので、今回は47都道府県の子ども実数で子ども人口政策の真の成果を確認してみたい(図表1)。
戦後出生率が低下の一途をたどる日本であるが、1950年から2015年の65年間で子ども人口を減少させずにむしろ増加させたエリアが3エリアある。
戦後における超長期子ども人口戦略の勝ち組、すなわち「次世代人口の育成に成功したエリア」といえる。
しかし、神奈川県は134%、埼玉県は117%、千葉県は101%へと、65年前と比べて子ども人口を増加させてきたのである。
その一方で、子ども人口を減少させた残りの44都道府県のうち、70%までの減少にとどめることが出来たエリアはわずか4エリア、大阪府、愛知県、東京都、滋賀県のいわゆる三大都市+1県に過ぎない。
出生率高低の競争でみるならば、大都市圏はあまねく負け組かに見える。しかし、エリア最終目標としての「エリア子ども人口」の推移からみた結果はむしろ正反対ともいえる。
総じて、若い母親候補人口を大量にかき集める大都市、特に東京都のベッドタウンエリア(通勤圏エリア)として位置づけられて来たエリアに、子ども人口の確保における軍配が上がっている。
同じ大都市圏として周辺地方からの人口を集めるエリアであっても、九州の中核都市をもつ福岡県や東北の中核都市を持つ宮城県は、子ども人口がともに50%前後にまで減少した。
25道府県については、子ども人口が65年前の40%にも満たない減少であり、さらに30%を切る県も9県存在する。30%を切る県をみると、東北エリアが6県中5県(青森県、岩手県、福島県、山形県、秋田県)もランクインしており、東北エリアの次世代子ども人口が特に危機的状況であることがわかる。加えて四国の2県(徳島県、高知県)、長崎県、島根県となっている。超長期的にみると東北地方がもっとも子ども人口危機に瀕しており、次に四国地方が危機的な状況となっている。
戦後次世代育成力は狭いエリアに集中、強まるエリア格差の震源は
図表1からは、全国では65年前よりも子ども人口が53%に減少したことがわかる。しかし、全国一律に半減したわけではなく、全国水準より減少率の低いエリアが11であるのに対して、減少率の高いエリアが36も存在するという格差がみてとれる。
言い方を変えるならば、都道府県数で換算してわずか2割程度のエリアが全体の子ども人口の減少を抑制している形である。
このような顕著な子ども人口の推移のエリア格差が「大都市で低く、地方で高い傾向の出生率」とは逆方向に起こっているにも関わらず、長期に出生率の高低がエリア少子化指標として大きくとりあげられ、子ども人口や母親候補である女性人口の変化が議論されることがほとんどなかったことはなぜだろうか。
出生率の高低よりも、子どもを生み出す母親候補=女性人口の母数の変化が注目されてこなかったことと、世界経済フォーラムが2018年に発表した世界のジェンダーギャップ指数ランキングにおいて、日本が149カ国中110位(指数0.660 1.0が完全な男女平等/ちなみに103位中国、108位インド、109位モーリシャスなど)と低位であることは、その背景を同じくしているように思う。
ジェンダーギャップ指数において日本が低位であるのは、女性が管理職や政治家といったいわゆる「女性がマネジメントする」という点2において117位と他の指標に比べて著しく劣位であるためである。
もし、都道府県の子ども人口を考える政治・行政・民間などの「マネジメント層」に、子どもを持ちつつ働く女性が(もしくは自らの娘の育児・教育・就職に深く関わった男性でもよいが)もっと参加していたなら、女性人口の社会移動がもたらす女性人口の一部エリアへの集中という問題に対し、もっと深刻に、早期に取り組むことができたのかもしれない。
2 ECONOMIC PARTICIPATION AND OPPORTUNITY分野において著しく低位であることが全体の指数を大きく引き下げている
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1878
(2019年04月26日「研究員の眼」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月28日
“ガソリン補助金”について改めて考える~メリデメは?トリガー条項との差は? -
2024年03月28日
健康無関心層へのアプローチ -
2024年03月28日
中国経済:景気指標の総点検(2024年春季号) -
2024年03月28日
高齢者就業への期待と課題(中国) -
2024年03月28日
中国における結婚前の財産分与から見た価値観の変化
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
データで知る、「本当の少子化」の震源地-47都道府県 子ども人口の推移(1)~子ども人口シリーズ 戦後65年・超長期でみた真の勝ち組エリアとは?のレポート Topへ