コラム
2019年05月16日

人生100年時代を見据えた保険・金融業界の最新動向

生活研究部 主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任   前田 展弘

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「平成」から「令和」の時代へ、日本は新たな未来へ歩み始めた。迎える未来は本格的な高齢化が進む、人生100年時代とも言われる“超高齢未来”である。そうした未来に向けて私たちにもたらされた大きな課題は、“人生100年を如何に安心して最期まで自分らしく生き抜いていけるか”ということだ。このテーマに取り組んでいくには、一人ひとりの個人だけでなく社会を構成するあらゆる機関の協働が必要である。

すでに行政、大学、企業等、あらゆる機関がこのテーマに取り組んできているところであるが、近年特に精力的な動きを見せているのが「保険・金融業界」ではないだろうか。ここ数年の間に人生100年時代を見据えた新たな商品・サービスを続々と市場に投入してきている。すでに知られた内容も多いかとも思うが、近年に見られる動向の一部を紹介してみたい。

■「長生きリスク」の不安に応える商品

まず人生100年時代を見据えた対応として、「長生きリスク」、つまり長生きできることによって資産が枯渇してしまうリスクに応える商品が提供されてきている。実際、高齢夫婦世帯(無職)の毎月の家計収支の平均では、年金収入だけでは足りず毎月「5.5万円」の赤字(貯蓄を取り崩している)となっており(図表1)、“お金にも寿命がある”ように貯蓄を延々と取り崩していけばいずれ枯渇してしまう。こうした不安に応える商品として提供され始めたのが「トンチン年金」である(商品名は各社で異なる)。これは年金の受取開始までの死亡保険金や解約返戻金を低くすることで、長生きするほど年金が多くもらえる “長生きするほど得をする”年金なのである。2016年に日本生命のニッセイ長寿生存保険「Gran Age」が発売されて以降、同様の商品が生保各社から相次いで発売されてきている。
図表1:高齢夫婦無職世帯の家計収支(2017年)

■「認知症」の不安に応える商品等

次に「認知症」の不安に応える商品等の充実をはかる動きがある。認知症にかかる可能性は75歳以降5歳ごとに倍増し、95歳以上になれば8割の人が認知症を患っていると言われる1。認知症になることは死ぬこともよりも不安と思われている人が少なくないなか、こうした不安に応えるために保障対象を認知症に絞ることで保障を手厚くしながら保険料を抑えるなど、認知症に特化した商品が充実してきている。図表2(2)において各社の商品を紹介しているが、この中で三井住友海上火災保険が提供する「認知症事故救済制度」は個人が加入する「認知症保険」とは異なり、自治体が加入する制度であり注目される。認知症患者が誤って踏み切りに入って電車を止めてしまう等、何らかの事故を起こしてしまったときに、監督責任のある家族にその賠償を求められることもある。そうしたリスクを市民全体で回避できるように、自治体の税金を財源として万一の場合を補償する仕組みとなっている。2018年4月に全国初の試みとして神戸市にてこの制度がスタートした2。非常に画期的である。
 
1 厚生労働省社会保障審議会介護保険部会(第46回)参考資料1(2013.8.28)より
2 厚生労働省「認知症バリアフリーに関する懇談会(第2回)」資料(2019.3.25)より

■「最期までの安心」を提供する商品・サービス

信託商品も高齢化に対応した充実が見られる。高齢者の資産を狙った詐欺事件が後を絶たないなか、安心して最期まで個人の資産を保全し承継していくことは本人家族だけの問題でなく社会としても重要なことである。こうしたなか預けた資金はあらかじめ指定した家族などの同意がないと支払いできない仕組みのセキュリティ型信託など新たな信託商品が続々と提供されてきている。

また、生活支援を中心に付帯サービスの充実もはかられてきている。その中でも日本生命の家族機能代行サービス「Gran Age Star」は注目される。今後、身寄りがない独居高齢者はますます増加していく可能性が高い。晩年、療養生活を迎えたとき、病院の手続きや通院の付き添いだったり、旅立った後の葬儀から遺品整理などの対応は家族が当たり前のように行ってきているわけであるが、身寄りがない独居高齢者にとってはそうはいかない。当サービスはこうした家族が行ってきた機能を代行するサービスである。

■「健康・予防」を応援する商品

高齢期の不安やリスクへの対応だけでなく、前向きに生きる、健康づくりを応援する保険も登場し始めた。2018年に住友生命から「Vitality」、この4月からは明治安田生命より健康状態に応じ保険料の一部がキャッシュバックされる「ベストスタイル健康キャッシュバック」が発売された。
図表2:保険・金融業界における「高齢社会に対応する商品・サービス」の開発動向
以上、いくつかの動向を紹介したが、このように人生100年時代を見据えて高齢期の生活を支え応援する保険・金融商品が数多く市場に投入されてきていることは社会として歓迎すべきことである。ただ、高齢期の生活課題及びニーズは多様であり、さらに対応が求められる取組視点は数多い。セカンドライフ・キャリアづくりをサポートする視点(ライフデザイン、活躍・社会参加支援等)、独りで身体が弱っても安心して暮らし続けられるように自立生活を支える視点(住まいや移動、生活支援等)、高齢期の楽しみを提供する視点など様々考えられる。これらについては改めてご紹介することにしたい。
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生活研究部   主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2019年05月16日「研究員の眼」)

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