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- ブラジル経済の見通し-始動した新政権。足元のファンダメンタルズは比較的良好も、先行きは改革の動向次第。
2――需要項目別の動向
2018年の民間消費は5月下旬にトラック業界の大規模ストライキが発生したものの、前年比1.9%上昇と2017年の同1.4%から加速し、10-12月期も堅調に推移している。2019年も適度なインフレと緩和的な金融環境が継続すると見込まれることに加えて、新政権への期待から家計の消費マインドが改善しているため、引き続き堅調に推移するだろう。
足元の消費関連指標は、小売売上高、国内新車販売台数ともに前年比増が続いている(図表7)。また、消費者信頼感指数(季節調整済系列)は上昇傾向が続いており、特に期待指数は2012年以来の高水準に達している(図表8)。インフレ率が4%台で推移すると見込まれる他、政策金利も過去最低の6.50%で据え置かれると予想されるため、2019年の民間消費は引き続き堅調に推移するだろう。
8 2017年から2018年にかけてインフレ率は低下した後、2018年半ばから再び上昇したため、実質賃金の変化はインフレ率ではなく労働市場の構造(雇用形態)
10-12月期の総固定資本形成9は前期比2.5%減と前期の同5.5%から大きく減速したものの、これは前期の高い伸びによる反動であると考えられ、回復基調が続いていると見られる。企業業績の回復による設備投資の拡大やインフラ投資プログラムの効果顕在化も期待されるため、2019年の総固定資本形成は加速すると予想する。
中央銀行が政策金利の引下げを継続してきた結果、銀行の貸出金利は17年初から低下傾向が続いている(図表10)。住宅市場では、景気後退による住宅価格の下落と貸出金利の低下によって、新規住宅着工戸数が2017年以降大きく増加している(図表11)。しかし、足元の貸出金利に上昇の兆しが見られるため、住宅投資に水を差すことも考えられる。
10-12月期の純輸出の寄与度は輸入の減少によって前期比1.5%ポイントと成長率を大きく押上げたが、これは7-9月期の高い伸び(前期比9.4%増)の反動と大統領選挙という一時的な要因によるものであるため、再び輸入は増加するだろう。また、輸出についても2018年に大きく増加した中国向け輸出が鈍化すると予想されることから、2019年の純輸出の寄与度は悪化するだろう。
2018年の貿易動向を通関ベースで見ると、輸出は財別では一次産品、地域別では中国向けが輸出増額を押上げた(図表14・15)。特に、2018年の中国向けの輸出総額は前年比で34.2%も増加し、全体の輸出総額に占める割合も26.6%と4分の1を上回るなど中国への依存度が高まっている。これは、米中貿易戦争において中国が米国製品への追加関税を発動した結果、大豆や牛肉などのブラジル産農産物への需要が高まり、中国向け輸出が増加したためである。しかし、今後は中国景気の減速や中国による米国産農産物の輸入拡大が見込まれるため、輸出総額を押下げるだろう。
10 自身の支持基盤である福音派信者に配慮しての公約である。
11 アラブ諸国のうち、サウジアラビアはブラジル産鶏肉の最大の輸出先となっている。
3――物価・金融政策等の動向
為替は、米国の利上げ観測の高まりによって18年4月頃からレアル安が急速に進行し、さらに10月の大統領選挙に向けて不透明感が高まると、9月には4.0レアル/米ドルを割り込んだ。しかし、構造改革を訴えるボルソナロ氏の当選が市場で好感され、レアル高に転じた。足元では、新政権への期待の高まりや米国の利上げ観測の後退によって3.7レアル/米ドル付近で推移している。
今後も、3.7~3.8レアル/米ドル台で推移すると予想するが、足元では新政権への期待が先行していることから、年金改革等の動向次第では、大きくレアル安が進行することも考えられるだろう。
インフレ率(IPCA、対前年比)は、16年以降に大きく鈍化し、特に17年7月から18年5月にかけてはインフレ目標の下限である3%を下回っていたが、6月以降は前述のレアル安の進行による輸入物価の上昇や国際原油価格の上昇に伴う燃料価格の上昇によって4%を上回った。しかし、足元では為替や国際原油価格が落ち着きを取り戻したため、インフレ率も落ち着いている。足元のインフレの圧力が弱いため、インフレ率は、当面の間4%台で推移するだろう(図表16)。
12 法案には中銀の総裁及び理事における固定任期制の導入が盛り込まれている。現行制度では中銀の総裁及び理事は政権交代にあわせて総入れ替えとなるのが通例であるが、固定任期制が導入されれば、時々の政権からの介入を受けにくくなると期待されている。
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(2019年03月06日「基礎研レター」)
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