2018年12月20日

「健康経営」で株価も元気!Part2-連続選定企業の企業価値向上が鮮明

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾

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健康経営1とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」である。企業が従業員や家族の健康保持・増進のための取り組みを行うことで、従業員の活力・生産性・創造力が改善し、長期的に企業価値の向上が期待される。若い世代が仕事に求める価値観の変化やSNSでの情報拡散の影響力を考えると、従業員が働きやすい会社、長く勤めたい会社という評判が広まることは、優秀な人材の確保にもつながる。
図表1:健康経営で長期的な企業価値向上が期待される
経済産業省と東京証券取引所は、従業員の健康保持・増進に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として2015年から毎年選定・公表している。2018年2月は26社が選定され、うち6社は4年連続の選定となった。今回選定された26社は、メタボ予防、メンタルヘルス対策、禁煙対策などの様々な施策を実施している。その中でも、4年連続選定の6社については、その場限りではない継続的な取り組みが特に評価されたようだ。
 
具体的には、各施策に対するPDCAサイクルの徹底、中期経営計画に「社員と家族の健康維持」を明記、平均残業時間、平均有給休暇取得日数、健診受診率などの目標値の公表があげられる。目標値や実績を可視化することで、会社全体で進捗率が確認できる。また、自治体などとの連携を通じて、成果を挙げた健康維持プログラムを社外へ提供している企業もあり、こちらも企業価値向上につながるといえるだろう。
 
筆者は過去のレポートで、「健康経営銘柄2016」を対象に株式投資の収益率(以下、収益率)を分析した(「『健康経営』で株価も元気!」(2016年3月4日付))。結果は、健康経営銘柄の平均収益率がTOPIX(東証株価指数)を超過していたため、「健康維持・増進への取り組みによる企業価値の向上を株式市場が評価したのかもしれない」と述べた。そこで、2018年の健康経営銘柄も同様の結果が得られるか、また4年連続選定の6社の収益率は他社と違いがあるのか分析した。
 
図表2は2018年選定の健康経営銘柄の収益率及びリスクである(2006年1月~2018年11月)。全体では26社のうち18社が、4年連続選定6社のうち5社がTOPIXの収益率を上回った。約7割の銘柄がTOPIXを超過したことから、リスクは高めではあるものの、健康経営に力を入れている企業の株価は相対的に堅調だったといえる。
図表2:約7割の企業がTOPIXの収益率を上回った
平均的にはTOPIXをどのくらい上回るのか調べるため、2018年選定の健康経営銘柄26社に均等投資した場合の収益率を計測したところ(図表3)、2006年から直近までTOPIXを安定的に上回った。さらに、4年連続選定6社の平均は26社の平均よりも株価が上昇したことがわかる。
 
長期的に株価がTOPIXを超過したということは、選定銘柄の企業価値が継続的に向上した可能性が示唆される。「健康経営」に積極的に取り組むことは、従業員・企業だけでなく、株主にもプラスの効果がありそうだ。
図表3:連続選定企業は株価がさらに上昇した
<参考> 健康経営銘柄2018
 
1 「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標
 
 

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金融研究部   主席研究員 チーフ株式ストラテジスト

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本ファイナンス学会理事
     ・日本証券アナリスト協会認定アナリスト

(2018年12月20日「基礎研レター」)

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