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2018~2020年度経済見通し-18年7-9月期GDP2次速報後改定
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
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1. 2018年7-9月期は前期比年率▲2.5%へ大幅下方修正
2018年7-9月期の2次速報と同時に2017年度の第一次年次推計値が公表され、実質GDP成長率は速報値の1.6%から1.9%へと上方修正された。公的需要(政府消費、公的固定資本形成)は下方修正されたが、民間消費(前年比0.8%→同1.0%)、設備投資(前年比3.1%→同4.6%)を中心に民間需要が速報値の前年比1.3%から同1.8%へと上方修正された。
また、2016年度は第一次年次推計値から第二次年次推計値への改定が行われ、実質GDP成長率は1.2%から0.9%へ下方修正された。2017年度とは逆に、民間消費(前年比0.3%→同0.0%)、設備投資(前年比1.2%→同▲0.5%)が下方修正されている。従来に比べて2016年度の減速、2017年度の加速がより明確となった。
四半期毎の成長率も過去に遡って改定され、2017年は4四半期のうち3四半期が上方修正され、特に2017年1-3月期は前期比年率2.3%から同3.3%へと1.0%の大幅上方修正となった。一方、2018年は3四半期ともに下方修正された。
12/3に財務省から公表された法人企業統計では、2018年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比2.2%と9四半期連続で増加したが、4-6月期の前年比17.9%から伸びが大きく低下した。季節調整済の経常利益は前期比▲14.3%(4-6月期:同16.9%)と3四半期ぶりに減少した。前期比で二桁の大幅減少だが、前期の高い伸びの反動による部分も大きく、2018年4-6月期に次ぐ過去2番目の高水準を維持している。
2. 実質成長率は2018年度0.8%、2019年度0.8%、2020年度1.2%
2018年7-9月期のGDP2次速報を受けて、11/15に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2018年度が0.8%、2019年度が0.8%、2020年度が1.2%と予想する。2018年7-9月期の実績値の下方修正を反映し、2018年度の成長率見通しを▲0.2%下方修正した。
政府は、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げが経済に影響を及ぼさないよう政策を総動員する方針としており、11/26に開催された経済財政諮問会議などの合同会議では、消費税率引き上げに向けての対応策が示された。
具体的には、①幼児教育無償化、年金生活者支援給付金の支給等、②軽減税率制度の実施、③低所得者・子育て世帯向けプレミアム商品券、④自動車・住宅の購入者に対する税制・予算措置、⑤消費税率の引き上げに伴う柔軟な価格設定(ガイドライン)、⑥中小小売業に関する消費者へのポイント還元支援、⑦マイナンバーカードを活用したプレミアムポイント、⑧商店街活性化、⑨防災・減災、国土強靭化対策、の9項目となっている。

消費税率引き上げ前後の駆け込み需要とその反動も前回増税時を下回るだろう。もともと、前回よりも税率の引き上げ幅が小さいこと(3%→2%)、住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については前回の引き上げ時に前倒しで購入した世帯が多いことから、駆け込み需要の規模はそれほど大きくならないことが想定されていたが、増税対策の拡充によってその可能性はより高くなった。キャッシュレス決済時のポイント還元(5%)や自動車減税などは増税前の買い控えをもたらす恐れすらある。

今回の予測では、オリンピック関連需要の一巡によるマイナスの影響を、消費増税後の反動減の緩和による押し上げが打ち消すことにより、2020年度前半まで景気は好調を維持するとした。しかし、オリンピック終了後の2020年度下期には押し上げ要因がなくなるため、景気の停滞色が強まることは避けられないだろう。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2018年9月に前年比1.0%と7ヵ月ぶりに1%に達した後、10月も同水準を維持したが、その主因は既往の原油高に伴うエネルギー価格の上昇幅拡大である。日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコアCPI)の上昇率はゼロ%台前半にとどまっている。

消費者物価は先行きも為替、原油価格などの外生的な要因によって左右されやすい状況が続くが、賃上げ率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力が限られることから、2020年度中に日本銀行が物価安定の目標としている2%に達することは難しいだろう。
コアCPI上昇率は2018年度が前年比0.8%、2019年度が同0.7%(1.2%)、2020年度が同1.0%(1.5%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。
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(2018年12月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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