2018年11月30日

鉱工業生産18年10月-挽回生産で予想を上回る高い伸び

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10月の生産は挽回生産で高い伸び

経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、18年10月の鉱工業生産指数は前月比2.9%(9月:同▲0.4%)と2ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.2%、当社予想は同2.5%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比5.4%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲1.4%と2ヵ月ぶりに低下した。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 7-9月期の生産は豪雨、台風、地震による工場の稼動停止の影響で前期比▲1.3%の減産となったが、10月は挽回生産から高い伸びとなった。また、9月は関西空港閉鎖の影響などから出荷が滞り、在庫の積み上がりが見られたが、10月は出荷の伸びが生産を上回ることで在庫水準が低下した。自然災害による供給制約はほぼ解消されたとみてよいだろう。

10月の生産を業種別に見ると、自然災害の影響で7-9月期に前期比▲5.1%と大きく落ち込んだ自動車が挽回生産によって前月比3.1%の高い伸びとなったほか、在庫の大幅な積み上がりが続く電子部品・デバイスも前月比8.6%の高い伸びとなった。
なお、鉱工業指数は18年9月確報分より2010年基準から2015年基準への切り替えが実施され、ウェイトや採用品目、業種分類が変更されている。生産指数における業種ウェイトの変更状況を確認すると、電気・情報通信機械工業(11.2%→8.4%)、電子部品・デバイス工業(8.2%→5.8%)が低下する一方、食料品・たばこ工業(6.1%→13.1%)が大きく上昇した。食料品・たばこ工業は速報値では公表されないため、従来に比べて確報値での改定幅が大きくなる可能性があることには留意が必要だ。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年7-9月期の前期比▲1.5%の後、10月は前月比5.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年7-9月期の前期比▲1.4%の後、10月は前月比3.2%となった。

18年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比▲0.2%と小幅ながら8四半期ぶりの減少となったが、自然災害による供給制約の影響を受けており、企業収益の好調を背景とした設備投資の回復基調は維持されていると考えられる。10-12月期の設備投資は増加に転じる可能性が高いだろう。

消費財出荷指数は18年7-9月期の前期比▲1.6%の後、10月は前月比5.2%となった。耐久消費財が前月比5.0%(7-9月期:同▲5.8%)、非耐久消費財が前月比5.2%(7-9月期:同1.3%)といずれも高い伸びとなった。
財別の出荷動向 18年7-9月期のGDP統計の民間消費は前期比▲0.1%と2四半期ぶりの減少となった。豪雨、台風上陸による外出手控え、生鮮野菜、エネルギー価格の大幅上昇が消費の下押し要因となったが、10月以降は比較的天候に恵まれており、生鮮野菜の価格も11月には下落に転じている。

現時点で公表されている10月の消費関連指標は比較的強めのものが多い。個人消費は依然として力強さには欠けるものの、GDP統計の民間消費は10-12月期には増加に転じることが予想される。

2.10-12月期は2四半期ぶりの増産へ

製造工業生産予測指数は、18年11月が前月比0.6%、12月が同2.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ▲2.2%、▲0.8%であった。
最近の実現率、予測修正率の推移 18年10月の生産指数を11、12月の予測指数で先延ばしすると、18年10-12月期は前期比3.9%の高い伸びとなる。実際の生産が計画を下回る傾向が続いていることを割り引いても10-12月期は2四半期ぶりの増産となる可能性が高い。

夏場以降の生産は、自然災害による工場の操業停止とその後の挽回生産で振れが大きくなっており、基調が読みにくくなっている。

10-12月期の生産は高めの伸びとなることが見込まれるが、輸出の増加ペース鈍化を背景に基調としては緩やかな回復にとどまっていると判断される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年11月30日「経済・金融フラッシュ」)

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