2018年11月22日

消費者物価(全国18年10月)-コアCPI上昇率は年末までに再び1%割れへ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は2ヵ月連続の1%

消費者物価指数の推移 総務省が11月22日に公表した消費者物価指数によると、18年10月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比1.0%(9月:同1.0%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:1.0%、当社予想も1.0%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(9月:同0.4%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品が前年比10.8%(9月:同5.6%)の高い伸びとなったことから、総合は前年比1.4%(9月:同1.2%)と3ヵ月連続の1%台となった。
コアCPIの内訳をみると、電気代(9月:前年比3.6%→10月:同4.5%)、ガス代(9月:前年比2.8%→10月:同3.2%)、ガソリン(9月:前年比17.3%→10月:同17.8%)、灯油(9月:前年比23.2%→10月:同25.8%)の上昇幅がいずれも前月から拡大したため、エネルギー価格の上昇率は9月の前年比8.1%から同8.9%へと高まった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 また、増税に伴いたばこが値上げ(9月:前年比1.1%→10月:同8.8%)され、諸雑費の上昇率が9月の前年比0.2%から同0.8%へと高まったこともコアCPIを押し上げた。

一方、東京都区部では18年7月に上昇に転じた住居は全国では下落が続いており、10月は前年比▲0.2%(9月:同▲0.1%)と小幅ながらマイナス幅が拡大した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.70%(9月:0.63%)、食料(生鮮食品を除く)が0.21%(9月:0.23%)、その他が0.09%(9月:0.14%)であった。

2.上昇品目数の割合はほぼ横ばい

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、10月の上昇品目数268品目(9月は266品目)、下落品目数は183品目(9月は186品目)となり、上昇品目数が前月から若干増加した。上昇品目数の割合は51.2%(9月は50.9%)、下落品目数の割合は35.0%(9月は35.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は16.3%(9月は15.3%)であった。

上昇品目数の割合は18年8月に50%を割り込んだ後、9月、10月と再び50%を上回った。しかし、17年までに比べるとその水準は低く、物価上昇に裾野の広がりは見られない。

3.コアCPI上昇率は年末までに1%割れへ

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 コアCPI上昇率は2ヵ月連続で1%となったが、その主因は既往の原油高に伴うエネルギー価格の上昇幅拡大である。原油価格(ドバイ)は10月上旬の1バレル=80ドル台をピークに60ドル台前半まで急低下している。市場価格が遅れて反映される電気代、ガス代はしばらく上昇率が高まることが見込まれるが、ガソリン、灯油価格はすでに大幅に下落している。エネルギー価格の前年比上昇率は10月をピークに縮小傾向が続くことが予想される。

基調的な物価上昇圧力は依然として弱く、物価は当面為替や原油価格などの外生的な要因によって左右される状況が続く公算が大きい。コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇率縮小を主因として18年末までには再び1%割れとなる可能性が高いだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年11月22日「経済・金融フラッシュ」)

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