2018年12月03日

法人企業統計18年7-9月期-自然災害、既往の原油高の影響で、企業収益、設備投資の改善が一服

経済研究部 経済調査部長   斎藤 太郎

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1.企業収益の伸びが急低下

経常利益の推移 財務省が12月3日に公表した法人企業統計によると、18年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比2.2%と9四半期連続の増加となったが、18年7-9月期の前年比17.9%から伸びが大きく低下した。製造業が前年比▲1.6%(4-6月期:同27.5%)と2四半期ぶりの減益となったことに加え、非製造業が前年比4.6%(4-6月期:同12.4%)と前期から増益幅が縮小した。

7-9月期は豪雨、台風、地震など相次ぐ自然災害が経済活動を大きく下押ししたが、企業収益にもその影響が表れる形となった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)
製造業は、売上高が前年比4.3%(4-6月期:同6.7%)と前期から伸びが大きく低下する中、売上高経常利益率が17年7-9月期の7.0%から6.6%へと低下したことが収益の悪化につながった。自然災害に伴う供給制約によって輸出、生産活動が停滞したことが売上高の伸びを押し下げた。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因、減価償却費要因、金融費用要因は利益率を押し上げたが、既往の原油高の影響で変動費が前年比5.3%と売上高の伸びを上回ったことが、利益率の悪化要因となった。

非製造業は、売上高が前年比6.6%(4-6月期:同4.5%)と前期から伸びを高めたが、売上高経常利益率が17年7-9月期の4.6%から4.5%へと低下した。製造業と同様に既往の原油高に伴う変動費の上昇が利益率の悪化要因となった。

2.経常利益(季節調整値)は大幅減少も、高水準は維持

季節調整済の経常利益は前期比▲14.3%(4-6月期:同16.9%)と3四半期ぶりに減少した。前期比で二桁の大幅減少だが、前期の高い伸びの反動による部分も大きく、18年4-6月期に次ぐ過去2番目の高水準を維持している。製造業が前期比▲22.5%(4-6月期:同31.6%)と3四半期ぶりの減少、非製造業が前期比▲8.8%(4-6月期:同8.8%)と4四半期ぶりの減少となった。
経常利益(季節調整値)の推移 18年7-9月期の経常利益の悪化は、自然災害による供給制約と既往の原油高によるところが大きい。両者はいずれも10-12月期には剥落しているため、企業収益は再び改善に向かうことが見込まれる。ただし、17年中に収益を大きく押し上げた輸出は、海外経済の回復ペース鈍化に伴い基調として減速しているとみられるため、先行きの増益ペースは緩やかとなることが予想される。

3.設備投資も自然災害の影響を受ける

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比4.5%と8四半期連続で増加したが、4-6月期の同12.8%から伸びが大きく鈍化した。製造業(4-6月期:前年比19.8%→7-9月期:同5.1%)、非製造業(4-6月期:前年比9.2%→7-9月期:同4.2%)ともに前期から伸びが低下した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比▲4.0%(4-6月期:同6.1%)と5四半期ぶりに減少した。製造業が前期比▲5.3%(4-6月期:同10.3%)と2四半期ぶりに減少、非製造業が前期比▲3.3%(4-6月期:同3.8%)と3四半期ぶりに減少した。

設備投資は前期比では5四半期ぶりの減少となったが、自然災害による供給制約が悪影響を与えた可能性が高く、回復基調は維持されていると判断される。
設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 製造業の能力増強投資、人手不足対応の省力化投資、東京五輪関連の建設投資、訪日外国人急増に伴うホテル建設など、設備投資の押し上げ要因は多い。経常利益やキャッシュフローに対する設備投資の比率は低水準にとどまっており、企業の投資スタンスは積極化しているわけではないが、企業収益の改善に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に、設備投資は底堅い動きが続く可能性が高い。

4.7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/10公表予定の18年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.4%(前期比年率▲1.5%)となり、1次速報の前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)から下方修正されると予測する。
2018年7-9月期GDP2次速報の予測 設備投資は前期比▲0.2%から同▲1.5%へと下方修正されるだろう。設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比2.5%と4-6月期の同14.0%から伸びが急低下した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整しても前年比でほぼ横ばいとなった。また、金融保険業の設備投資は前年比▲16.8%(4-6月期:同7.3%)の大幅減少となった。GDP1次速報の設備投資は名目・前年比5.2%となっており、本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度▲0.1%から同0.0%へと上方修正されるだろう。その他の需要項目では、公的固定資本形成は9月の建設総合統計の結果が反映され、前期比▲1.9%から同▲1.7%へ若干上方修正されると予想する。

なお、12/10の18年7-9月期GDP2次速報では、17年度の年次推計値が合わせて公表され、四半期の計数は18年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定される。また、供給側QE推計における推計品目の分割・詳細化、共通推計項目の拡充、家計消費支出の推計における需要側推計値と供給側推計値の統合比率の見直し、「鉱工業指数」基準改定の反映等が行われる。

18年7-9月期の成長率は、法人企業統計を中心とした基礎統計の追加に加え、17年度の年次推計に伴う遡及改定、推計方法変更の影響を受けるため、不確定要素が多いことを念頭に置いておく必要がある。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2018年12月03日「経済・金融フラッシュ」)

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