2018年11月16日

米中間選挙結果と今後の経済政策への影響-追加減税やオバマケア廃止の軌道修正は必至

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 11月6日に実施された中間選挙では与党共和党が上院で過半数を維持した一方、下院で野党民主党が過半数を奪取した。トランプ大統領の信任投票と位置付けられた中間選挙では、その関心の高さから投票率が前回中間選挙から大幅に上昇した。一方、出口調査は、性別、年齢、学歴など投票者の属性によって支持政党が分かれる米国の分断状況を反映した結果となった。
     
  2. 選挙結果を受けて、来年からの新議会は上下院の多数派政党が異なる「ねじれ」議会となることが決まった。与野党議員の党派性が強まっているため、与野党の対立から、新議会は、機能不全に陥る可能性が高い。また、ロシア疑惑に関するモラー特別検察官の報告書の内容次第では弾劾裁判開始の可能性もあり、政治的な混乱が続く見通し。
     
  3. 一方、中間選挙の争点として関心が高かったオバマケア(ACA)、関心が高くなかったもののトランプ大統領が実現を目指す追加減税策では、下院民主党の反対により、大幅な軌道修正は不可避だろう。また、通商政策では関税などの制裁手段の見直しの可能性はあるものの、中国に対する強硬姿勢には変更がない見込み。一方、インフラ投資では民主党と政策協調の余地は残るものの、政治的な思惑や財源課題が絡み実現は不透明。
     
  4. 当面の注目点は、モラー特別検察官の報告書に加え、現議会で行う12月期限の暫定予算と、新議会で迎える19年3月期限の債務上限への対応。これらの審議次第では政府機関の一部閉鎖や、最悪の場合米国債のデフォルトが発生するため、米経済への影響が大きい。新議会の動向を占う上でも注目される。
(図表1)上院政党別議席数(過半数51)/下院政党別議席数(過半数218)
■目次

1.はじめに
2.中間選挙結果とその評価
  ・(上下院・投票率)
   :下院で民主党が過半数を奪取。関心の高さから投票率は大幅上昇
  ・(出口調査結果)
   :有権者属性毎に支持政党の乖離が大きく、米国の分断を象徴
  ・(ねじれ議会)
   :党派性が強まっている中で議会は機能不全に陥る可能性
3.経済政策への影響
  ・(中間選挙の争点)
   :「医療」や「移民」、「経済・雇用」が争点。「税」の関心は低い
  ・(財源・債務残高)
   :追加減税、インフラ投資など実現のためには財源確保が不可避
4.当面の注目材料
  ・(ロシア疑惑に関する報告書)
   :報告書の内容次第では弾劾裁判開始と政治混乱に拍車
  ・(19年度暫定予算)
   :12月7日期限の暫定予算審議がレイムダックセッションのヤマ
  ・(債務上限問題)
   :19年3月に期限を迎える債務上限引き上げ動向に注目
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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