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- もし、J-REITに100万円を投資したならば~J-REITを個人の不動産投資のものさしに~
コラム
2018年10月31日
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「もし、J-REIT(不動産投資信託)に100万円を投資したならば、年間の分配金はいくら受け取れるか?」、この問いに対して、J-REITをご存知であれば、「分配金は約4.0万円(利回り4.0%)、税引き後の手取り額は約3.2万円(利回り3.2%)」と多くの方がざっくりと回答できるのではないでしょうか。
一方で、「もし、J-REIT に100万円を投資したならば、その先にある不動産はいかにして分配金4.0万円を生み出しているか?」、この問いに対して、直ぐに答えを思い浮かべることのできる人は少ないと思われます。これは、J-REITが個人投資家の間で証券投資として名が知れていても、不動産投資としてはまだ十分に認識されていない証でもあります。
それでは、J-REITに100万円を投資した場合、その先にある不動産の収支はどうなっているのか?以下では、個人による不動産投資の参考になるように、賃貸マンションに投資する住宅系REIT7社の運用実績(H30年4月期までの直近1年)をもとに答えを確認したいと思います(図表1)。
一方で、「もし、J-REIT に100万円を投資したならば、その先にある不動産はいかにして分配金4.0万円を生み出しているか?」、この問いに対して、直ぐに答えを思い浮かべることのできる人は少ないと思われます。これは、J-REITが個人投資家の間で証券投資として名が知れていても、不動産投資としてはまだ十分に認識されていない証でもあります。
それでは、J-REITに100万円を投資した場合、その先にある不動産の収支はどうなっているのか?以下では、個人による不動産投資の参考になるように、賃貸マンションに投資する住宅系REIT7社の運用実績(H30年4月期までの直近1年)をもとに答えを確認したいと思います(図表1)。
まず、不動産投資額について、J-REIT「100万円」の投資は、賃貸マンション「150万円」の投資に相当します。その際、借入金「67万円」を利率「1.0%」で調達しています(借入比率「45%」)。
次に、収入と費用について、賃貸マンション「150万円」の賃料収入は「9.5万円」、賃貸費用1は「2.3万円」(対収入比率24%)、大規模修繕費(資本的支出)は「0.4万円」(対収入比率4%)です。この結果、賃貸純収益(NOI)は「7.2万円」、不動産から得られるキャシュフロー(NCF)は「6.8万円」となります。
これにより、J-REITが全国に分散して保有する高品質の賃貸マンションの利回りは、表面利回りが「6.3%」、NOI利回りが「4.8%」、NCF利回りが「4.5%」となり、この水準が現在のプロによる賃貸マンション投資の利回り目線だと言えるでしょう。
ここから、支払利息「0.7万円」(対収入比率7%)、資産運用報酬を含む管理コスト「0.6万円」(対収入比率6%)を差し引いた運用収益は「5.6万円」(対収入比率59%、利回り3.7%)となります。そして、この「5.6万円」が投資家の受け取る分配金「4.0万円」(利回り4.0%)の原資となっています2。
ところで、「かぼちゃの馬車」問題が表面化して以降、個人による不動産投資の危うい実態が新聞などで報じられています3。また、金融機関側の不正行為が明るみに出るなか、金融庁は個人向け投資用不動産融資について調査しモニタリングを強化する方針を示しています。
個人が不動産投資を検討するにあたり、習得すべき知識はいくつか挙げられますが4、本稿で記したJ-REITの運用実績も不動産投資におけるものさしの1つとして活用できるのではないでしょうか。
1 賃貸費用の内訳は、建物管理委託費「26%」、公租公課「22%」、その他諸経費「17%」、修繕費「16%」、水道光熱費「6%」など
2 実際のJ-REITの分配金は会計上の利益のため、大規模修繕費の代わりに減価償却費を控除し不動産の売却損益などが反映される
3 『スルガ銀シェアハウス問題、家賃保証 実勢の2倍超も』(日本経済新聞朝刊、2018年10月11日)
4 渡邊布味子『はじめての不動産投資入門(1)』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2018年7月31日)
次に、収入と費用について、賃貸マンション「150万円」の賃料収入は「9.5万円」、賃貸費用1は「2.3万円」(対収入比率24%)、大規模修繕費(資本的支出)は「0.4万円」(対収入比率4%)です。この結果、賃貸純収益(NOI)は「7.2万円」、不動産から得られるキャシュフロー(NCF)は「6.8万円」となります。
これにより、J-REITが全国に分散して保有する高品質の賃貸マンションの利回りは、表面利回りが「6.3%」、NOI利回りが「4.8%」、NCF利回りが「4.5%」となり、この水準が現在のプロによる賃貸マンション投資の利回り目線だと言えるでしょう。
ここから、支払利息「0.7万円」(対収入比率7%)、資産運用報酬を含む管理コスト「0.6万円」(対収入比率6%)を差し引いた運用収益は「5.6万円」(対収入比率59%、利回り3.7%)となります。そして、この「5.6万円」が投資家の受け取る分配金「4.0万円」(利回り4.0%)の原資となっています2。
ところで、「かぼちゃの馬車」問題が表面化して以降、個人による不動産投資の危うい実態が新聞などで報じられています3。また、金融機関側の不正行為が明るみに出るなか、金融庁は個人向け投資用不動産融資について調査しモニタリングを強化する方針を示しています。
個人が不動産投資を検討するにあたり、習得すべき知識はいくつか挙げられますが4、本稿で記したJ-REITの運用実績も不動産投資におけるものさしの1つとして活用できるのではないでしょうか。
1 賃貸費用の内訳は、建物管理委託費「26%」、公租公課「22%」、その他諸経費「17%」、修繕費「16%」、水道光熱費「6%」など
2 実際のJ-REITの分配金は会計上の利益のため、大規模修繕費の代わりに減価償却費を控除し不動産の売却損益などが反映される
3 『スルガ銀シェアハウス問題、家賃保証 実勢の2倍超も』(日本経済新聞朝刊、2018年10月11日)
4 渡邊布味子『はじめての不動産投資入門(1)』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2018年7月31日)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年10月31日「研究員の眼」)
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03-3512-1858
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
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