2018年10月03日

残業時間の上限は本当に720時間なのか?-より明確で分かりやすい制度に見直しを-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 2018年6月29日、参院本会議で「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が可決・成立した。
     
  • 働き方改革関連法案の中で、特に注目を浴びているのは長時間労働を是正するための措置である「残業時間の上限規制」だろう。
     
  • 今回の残業時間の上限規制により、長時間労働はある程度解消されると期待されるものの、その内容をみると、一つ疑問点がある。それは、1カ月で100時間未満と2~6カ月の平均で80時間以内には「休日労働を含む」ことがきちんと明記されているのに、年720時間には「休日労働を含む」という内容が入っていないことである。
     
  • 厚生労働省が発表した残業時間の上限は、現在のところ基準が明確でないので、多様な形で解釈することが可能である。そして、期間ごとに異なる基準が設定されているので、どの基準に合わせて残業時間の上限を設定すれば良いかがよく分からない。
     
  • 労働基準法第36条の問題が再び発生しないように、残業時間の上限規制に関する基準を明確し、より分かりやすい制度に見直す必要があるだろう。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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