2018年09月28日

中国経済:景気指標の総点検(2018年秋季号)~「景気悪化」のサインが継続

三尾 幸吉郎

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3.その他の景気4指標

まず、電力消費量の動きをみると、2018年1-3月期は前年比9.8%増、4-6月期は同9.0%増、そして7-8月期は同7.8%増と、期を追う毎に伸びが鈍化してきている。また、産業別に7-9月期を見ると、第1次産業は同8.3%増、第2次産業は同6.4%増(内工業部門は同6.3%増)、第3次産業は同10.4%増と、いずれも4-6月期の伸び率を下回った(図表-11)。

次に、貨物輸送量の動きをみると、2018年7-8月期は前年比6.9%増と4-6月期の同7.5%増よりも伸びが鈍化している。輸送手段別に見ると、水路貨物は同5.6%増、航空貨物は同6.8%増と4-6月期の伸びを上回ったが、鉄道貨物は同7.7%増と横ばいで、主力の道路貨物は同6.5%増と伸びが鈍化した(図表-12)。
(図表-11)電力消費量(業種別)/(図表-12)貨物輸送量
また、物価の動きをみると、消費者物価の上昇率はここもと前年比2%台前半に留まり、18年度の抑制目標である3%前後を下回っている。一方、工業生産者出荷価格は前年比4%台の上昇率を示しており、ほとんど上昇していなかった消費財にも波及し始めた可能性がある(図表-13)。

そして、金融面の代表指標である通貨供給量(M2)の動きをみると、7月は前年比9.0%増、8月は同8.7%増と9%前後の低い伸びが継続している。一方、銀行融資の動きをみると、8月は同13.2%増と二桁の伸びが継続しており、ここもと5月の同12.6%増をボトムにして、伸びが加速する気配もある(図表-14)。
(図表-13)工業生産者出荷価格/(図表-14)通貨供給量(M2)と銀行融資の推移

4.総合指標

4.総合指標

(図表-15)景気評価点の推移 以上で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”として一覧表にしたのが図表-16である。まず、需要面をみると、小売売上高は“○”と“×”が交互に生じており横ばいと判断できる。5月まで“×”が多かった固定資産投資は6月以降3ヵ月連続で“○”となっており持ち直しの兆しがある。他方、堅調だった輸出は4ヵ月連続で“×”となり悪化の兆しがでてきた。次に、供給面をみると、工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つが揃って2ヵ月連続の“×”となっており、悪化したと判断できる。一方、その他の景気指標(電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量)をみると、8月は4つが揃って“×”となった。まだ1ヵ月だけなので、9月には反動で“○”になる可能性もあるが、今後の動きを注視する必要がある。
以上を“○=1点”、“×=0点”として集計したものを筆者はこれを景気評価点と呼んでいる。評価に用いた景気指標は全部で10種あるので、景気が上向きか下向きかの分岐点は5点となる。この8月は2点となり「減速」と「やや減速」の間にある。図表-15に示したように、ここ数ヵ月の景気評価点は「横ばい」よりも下の水準で推移しており、景気は悪化していると判断できる。米中貿易摩擦が深刻化すれば、景気が失速する恐れもでてきただけに、今後の動きは要注意である。
(図表-16)景気評価総括表(○×表)
 
 

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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2018年09月28日「Weekly エコノミスト・レター」)

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