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- 米国経済の見通し-減税、拡張的な財政政策などから当面は堅調見通しも、通商政策や中間選挙動向が不安要因
2018年09月10日
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2.実体経済の動向
(設備投資)17年以降、堅調な伸びが持続。法人税制改革などを追い風に好調を持続する見込み
民間設備投資は、17年初から堅調な伸びが持続しているが、とくに18年入り後は伸びが加速している(図表9)。また、設備投資の先行指標である国防、航空除くコア資本財受注(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、18年7月が年率+11.5%と2桁の伸びとなっており、7-9月期も民間設備投資は堅調な伸びを維持しているとみられる。
さらに、全米製造業協会(NAM)による調査では、製造業企業の18年4-6月期の景況感指数が63.8と97年の統計以来最高となったほか、今後1年間の設備投資計画(前年比)も+4.1%と統計開始以来最高となるなど、設備投資意欲が非常に強いことが示されている(図表10)。
同調査では製造業者が、トランプ大統領が実現した税制改革法に伴う法人税率の引き下げや、設備投資に対する税制優遇措置、規制緩和を高く評価し、設備投資意欲が強まっていることが示されている。もっとも、NAMはトランプ政権の通商政策について、中国の知的財産権侵害に対する対応を評価しているものの、制裁措置として関税手段を活用することについては効果的ではないと明確に反対の立場を表明している。このため、追加関税を多用する保護主義的な通商政策が良好な製造業の景況感や設備投資計画に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。
民間設備投資は、17年初から堅調な伸びが持続しているが、とくに18年入り後は伸びが加速している(図表9)。また、設備投資の先行指標である国防、航空除くコア資本財受注(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、18年7月が年率+11.5%と2桁の伸びとなっており、7-9月期も民間設備投資は堅調な伸びを維持しているとみられる。
さらに、全米製造業協会(NAM)による調査では、製造業企業の18年4-6月期の景況感指数が63.8と97年の統計以来最高となったほか、今後1年間の設備投資計画(前年比)も+4.1%と統計開始以来最高となるなど、設備投資意欲が非常に強いことが示されている(図表10)。
同調査では製造業者が、トランプ大統領が実現した税制改革法に伴う法人税率の引き下げや、設備投資に対する税制優遇措置、規制緩和を高く評価し、設備投資意欲が強まっていることが示されている。もっとも、NAMはトランプ政権の通商政策について、中国の知的財産権侵害に対する対応を評価しているものの、制裁措置として関税手段を活用することについては効果的ではないと明確に反対の立場を表明している。このため、追加関税を多用する保護主義的な通商政策が良好な製造業の景況感や設備投資計画に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。
(住宅投資)住宅価格や住宅ローン金利上昇が回復に水を差す可能性
GDPにおける住宅投資は、好調な民間設備投資とは対照的に、17年以降の6四半期中4四半期でマイナス成長となるなど、停滞が続いている(図表11)。また、住宅着工件数や先行指標である着工許可件数の伸び(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、18年7月が▲22.3%、▲15.5%と、いずれも2桁の落ち込みとなっていることから、7-9月期の住宅投資も弱い可能性を示唆している。
一方、住宅ローン返済額と所得を比べた住宅取得能力指数は、足元で130台と依然として所得が住宅ローン返済額を3割程度上回っているものの、13年以降低下基調が持続しており、とくに18年に入ってからは低下スピードが加速している(図表12)。これは、住宅価格が上昇していることに加え、住宅ローン金利の上昇が住宅ローン返済額を増加させている影響が大きいと考えられる。
住宅価格や住宅ローン金利は今後も上昇が見込まれるため、住宅取得能力の低下基調は持続する可能性が高い。雇用不安の後退などを背景に住宅需要は強いとみられるものの、住宅取得能力の低下にみられるように、購入可能な住宅の減少が住宅市場の回復に与える影響が注目される。
GDPにおける住宅投資は、好調な民間設備投資とは対照的に、17年以降の6四半期中4四半期でマイナス成長となるなど、停滞が続いている(図表11)。また、住宅着工件数や先行指標である着工許可件数の伸び(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、18年7月が▲22.3%、▲15.5%と、いずれも2桁の落ち込みとなっていることから、7-9月期の住宅投資も弱い可能性を示唆している。
一方、住宅ローン返済額と所得を比べた住宅取得能力指数は、足元で130台と依然として所得が住宅ローン返済額を3割程度上回っているものの、13年以降低下基調が持続しており、とくに18年に入ってからは低下スピードが加速している(図表12)。これは、住宅価格が上昇していることに加え、住宅ローン金利の上昇が住宅ローン返済額を増加させている影響が大きいと考えられる。
住宅価格や住宅ローン金利は今後も上昇が見込まれるため、住宅取得能力の低下基調は持続する可能性が高い。雇用不安の後退などを背景に住宅需要は強いとみられるものの、住宅取得能力の低下にみられるように、購入可能な住宅の減少が住宅市場の回復に与える影響が注目される。
(政府支出、債務残高)19年度歳出法案審議が佳境。来年以降は中間選挙結果が左右
今後10年間で1.5兆ドル規模の減税が実現したことに加え、2018年超党派予算法で18年度(17年10月~18年9月)と19年度(18年10月~19年9月)の裁量的経費の上限が2年間の合計で0.3兆ドル引き上げられたことから、財政政策は18年と19年の成長率を+0.6~+0.8%ポイント押上げることが見込まれている。
一方、19年度予算の編成作業は前述の超党派予算法によって予算の大枠は決まっているものの、具体的に資金配分を決める歳出法案は成立しておらず、10月からの新年度開始を直前に控えて政治的な駆け引きが激しくなっている。
議会共和党は通常12本に分かれる歳出法案のうち、移民政策などで審議が難航しそうな「商務・司法・科学・その他関係機関」、「国土安全保障」、「国務・外交活動・その他関係機関」の3本については、中間選挙後まで暫定予算で凌ぐ一方、「国防」などを含む残り9本については3本の包括歳出法案にまとめて今月中の成立を目指している。これに対し、トランプ大統領は議会が見込んでいない「国境の壁」建設のための予算230億ドルを盛り込むことを要求しており、歳出法案に署名しないことで10月からの政府機関の一部閉鎖も辞さない姿勢を示しているため、政府閉鎖のリスクが燻っている。
一方、来年以降の財政政策を占う上で中間選挙の結果が注目される。トランプ大統領は現在25年末までの暫定措置となっている個人向け減税措置の恒久化を目指す税制改革第2弾や、今後10年間で1.5兆ドルのインフラ投資の実現を目指している。仮に、中間選挙で野党民主党が上下院のどちらかでも過半数を確保する場合には、民主党が反対する政策の実現はこれまで以上に困難になる。とくに、民主党は個人向け減税を富裕層優遇であると批判していることから、減税の恒久化などは軌道修正を与儀なくされよう。
今後10年間で1.5兆ドル規模の減税が実現したことに加え、2018年超党派予算法で18年度(17年10月~18年9月)と19年度(18年10月~19年9月)の裁量的経費の上限が2年間の合計で0.3兆ドル引き上げられたことから、財政政策は18年と19年の成長率を+0.6~+0.8%ポイント押上げることが見込まれている。
一方、19年度予算の編成作業は前述の超党派予算法によって予算の大枠は決まっているものの、具体的に資金配分を決める歳出法案は成立しておらず、10月からの新年度開始を直前に控えて政治的な駆け引きが激しくなっている。
議会共和党は通常12本に分かれる歳出法案のうち、移民政策などで審議が難航しそうな「商務・司法・科学・その他関係機関」、「国土安全保障」、「国務・外交活動・その他関係機関」の3本については、中間選挙後まで暫定予算で凌ぐ一方、「国防」などを含む残り9本については3本の包括歳出法案にまとめて今月中の成立を目指している。これに対し、トランプ大統領は議会が見込んでいない「国境の壁」建設のための予算230億ドルを盛り込むことを要求しており、歳出法案に署名しないことで10月からの政府機関の一部閉鎖も辞さない姿勢を示しているため、政府閉鎖のリスクが燻っている。
一方、来年以降の財政政策を占う上で中間選挙の結果が注目される。トランプ大統領は現在25年末までの暫定措置となっている個人向け減税措置の恒久化を目指す税制改革第2弾や、今後10年間で1.5兆ドルのインフラ投資の実現を目指している。仮に、中間選挙で野党民主党が上下院のどちらかでも過半数を確保する場合には、民主党が反対する政策の実現はこれまで以上に困難になる。とくに、民主党は個人向け減税を富裕層優遇であると批判していることから、減税の恒久化などは軌道修正を与儀なくされよう。
(2018年09月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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