2018年07月20日

米中貿易戦争の行方-米中貿易摩擦がエスカレート。落し所の見えない貿易戦争による米経済への影響を懸念

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. トランプ大統領は、選挙期間中から中国に対して強硬な通商政策を実施する方針を示していたが、18年夏場以降は中国からの輸入品のおよそ半分に相当する額に対して追加関税を賦課する方針を示すなど、米中貿易摩擦問題は米中貿易戦争の様相を呈している。
     
  2. 米国が中国に対して強硬な通商政策を実施する背景としては、中国が01年のWTO加盟以来、対中貿易赤字が大幅に増加したほか、中国による知的財産権の侵害や米企業の技術流出などが問題視されていることがある。
     
  3. トランプ政権は、春先以降、太陽光パネルなどに16年ぶりとなるセーフガード措置を発動したほか、安全保障を根拠に鉄鋼、アルミ製品に対する追加関税を実施した。また、知的財産権の侵害や技術移転に対処するため、不公正貿易慣行を理由とする通商法301条を根拠に、中国に対して追加関税、WTO提訴、投資制限の方針を示している。
     
  4. 一方、関税の引き上げは、米国内物価の上昇を通じて消費を減退されるほか、国内製造業の輸出競争力を低下させる可能性が高いなど、実体経済への影響が懸念されており、実業界などからは政策方針の見直しを求める声が強い。
     
  5. しかしながら、11月の中間選挙を睨み、トランプ大統領は強硬姿勢を持続するとみられ、トランプ大統領の一貫性の無い発言など、政策意図が不透明なこともあって、米中双方で妥協点を見出し難い状況となっている。この結果、追加関税などの制裁措置などが長期化する可能性が高まっているため、米実体経済への影響が懸念される。
(図表1)米国の財貿易収支(主要相手国別)
■目次

1.はじめに
2.米中貿易摩擦の背景
  ・(対中貿易赤字):01年に中国がWTOに加盟して以来、貿易赤字は大幅増加
  ・(輸出入の内訳):資本財や消費財輸入の増加が顕著。輸出では食料・飲料で存在感
  ・(ハイテク製品の輸入増加):知的財産権の侵害や技術移転への危機感を醸成
3.トランプ政権による対中政策の概要と経済への影響
  ・(対中通商政策):18年入り後、制裁措置発動の動きが本格化
  ・(通商法301条に基づく措置):関税対象額は今後増加する可能性
  ・(実体経済への影響):現状では実体経済への影響は限定的も、影響評価は困難
4.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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