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- インターネット通販市場の成長と物流施設利用の方向性(1)~インターネット通販市場の成長可能性
2018年07月20日
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1――はじめに
いまや即日・当日配送が常識となっている物販系EC(インターネット通販)の貨物を扱う物流施設(配送センター等)では、大量の商品を迅速に入出荷することが求められている。そのため、不動産投資家(REIT等)が投資対象とする高機能な大規模物流施設が利用されることが多い。世界主要都市で事業展開している大手不動産会社のJLLの調査によれば、2010年から2014年にかけて首都圏で新規供給された先進的物流施設では、インターネット通販のテナントが約2割を占めた(延床面積ベース)。物流施設投資の見通しを立てるにあたり、インターネット通販の現状を把握することは必須といえる。
本稿では2回に分けて、インターネット通販市場の成長が物流施設利用に与える影響について考察する。第1回は、インターネット通販市場の成長可能性、等について概観する。そして、第2回では、第1回で概観した通販市場の状況を踏まえて、物流施設利用の方向性について考察する。
本稿では2回に分けて、インターネット通販市場の成長が物流施設利用に与える影響について考察する。第1回は、インターネット通販市場の成長可能性、等について概観する。そして、第2回では、第1回で概観した通販市場の状況を踏まえて、物流施設利用の方向性について考察する。
1 チケット販売、金融サービス、旅行サービス、等。
2 電子書籍、有料音楽・動画配信、オンラインゲーム、等。
3 すべての商取引額(商取引市場規模)に対する電子商取引額の割合。
2 電子書籍、有料音楽・動画配信、オンラインゲーム、等。
3 すべての商取引額(商取引市場規模)に対する電子商取引額の割合。
2――インターネット通販市場の成長可能性
本章では、インターネット市場の成長可能性を、(1)年代別にみたネットショッピングの利用状況、(2)ラストワンマイルにおける人手不足、(3)シェアリングエコノミーの拡大の3つの観点で考察する。
1|年代別にみたネットショッピングの利用状況
総務省「家計消費状況調査」によれば、年代別にみたネットショッピングの利用率は、「39歳以下」の年代(45%)が最も高く、年齢が上がるにつれて低下する傾向にある(図表5)。
一方、ネットショッピング支出額は、「50~59歳」の年代(年間41万円)が最も多く、次いで「60~69歳」(年間40万円)、「70歳以上」(年間39万円)の世代が多い(図表6)。ネットショッピングを利用している層に限定してみると、ミドル・シニア層(50代以上)の方が、若年層と比べてネットショッピングの支出額が多い傾向にある。
1|年代別にみたネットショッピングの利用状況
総務省「家計消費状況調査」によれば、年代別にみたネットショッピングの利用率は、「39歳以下」の年代(45%)が最も高く、年齢が上がるにつれて低下する傾向にある(図表5)。
一方、ネットショッピング支出額は、「50~59歳」の年代(年間41万円)が最も多く、次いで「60~69歳」(年間40万円)、「70歳以上」(年間39万円)の世代が多い(図表6)。ネットショッピングを利用している層に限定してみると、ミドル・シニア層(50代以上)の方が、若年層と比べてネットショッピングの支出額が多い傾向にある。
総務省の調査によれば、ネットショッピングを利用する理由に関して、「24時間いつでも買物ができるから」や「実店舗に出向かなくても買物はできるから」との理由の回答割合は、年代による差が小さい。一方、「買いたいものが検索機能等ですぐに探し出すことができ、時間の節約になるから」や「自宅に持ち帰るのが大変な重いものが手軽に買えるから」といった理由を挙げる人の割合は、年代が上がるにつれて上昇する傾向がみられる(図表7)。一般的に、徒歩での買い物が可能な範囲は自宅から半径400~500mと言われている。比較的経済力があるミドル・シニア層は、実店舗で買い物をする労力や手間を省くために、ネットショッピングでの購入が多いと考えられる。
前述の通り、若い年代ほど、ITリテラシーが高く、ネットショッピングを利用する人は多い。例えば、現時点で「50~59歳」の世帯のネットショッピングの利用率よりも、10年後の「50~59歳」(現在の「40~49歳」)のネットショッピングの利用率は高いことから、ネットショッピングの利用率は今後、ますます上昇すると見込まれる。
また、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、総世帯数は2023年まで増加し続け(図表8)、世帯構成は、ネットショッピング支出額が多い50代以上の割合が高まる見通しである(図表9)。今後、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層は現時点より拡大すると見込まれる。
以上の状況を踏まえると、ネットショッピングの利用率の上昇と、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層の拡大に支えられ、インターネット通販市場の成長は継続すると思われる。
前述の通り、若い年代ほど、ITリテラシーが高く、ネットショッピングを利用する人は多い。例えば、現時点で「50~59歳」の世帯のネットショッピングの利用率よりも、10年後の「50~59歳」(現在の「40~49歳」)のネットショッピングの利用率は高いことから、ネットショッピングの利用率は今後、ますます上昇すると見込まれる。
また、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、総世帯数は2023年まで増加し続け(図表8)、世帯構成は、ネットショッピング支出額が多い50代以上の割合が高まる見通しである(図表9)。今後、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層は現時点より拡大すると見込まれる。
以上の状況を踏まえると、ネットショッピングの利用率の上昇と、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層の拡大に支えられ、インターネット通販市場の成長は継続すると思われる。
(2018年07月20日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
2025年7月より現職
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
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