2018年07月09日

ラジアーの年功型賃金モデルから見る長澤運輸事件の最高裁判決

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨
 
  • 横浜市の運送会社「長澤運輸」に定年後再雇用された嘱託社員3人が起こした訴訟の最高裁判決(2018年6月1日)で、精勤手当や超勤手当を除いた大半の手当(能率給、職務給、住宅手当、家族手当、役付き手当、賞与)の格差が不合理ではないと判断された。
     
  • 日本企業の賃金制度についてはラジアーがモデル化してその制度的特徴について言及している年功型賃金モデル によって説明できる。
     
  • 今回の最高裁の判決はラジアーの年功型賃金モデルを反映しているのではないかと思う。定年後の再雇用による賃金は年功型賃金に該当するものではなく、その時の会社への貢献度(限界生産性)を基準にすべきだということを強調した判決であるだろう。
     
  • 定年退職後に再雇用された高年齢者の立場から考えると、今回の最高裁の判決は彼らの働く意欲を低下させる要因になったかも知れない。従って、今後、政府は高年齢者の働く意欲を引き出す措置を行う必要がある。段階的な定年延長や定年廃止を推進することもその一策として考えられるだろう。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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