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- シェアリング志向が強いのは誰?-安く買いたい若者だけでなく、堅実な公務員、合理的な高年収男性でも強い
2018年06月25日
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                                            3|年収別に見た違い~経済的理由で年収300万円前後、合理的判断で年収1千万円程度の男性で強い
次に、年収別に「中古・シェア」志向の強さを見ると、男女とも年収「200~400万円未満」にピークがある(図表6)。また、男性では「1000~1200万円未満」にもピークがある。
            次に、年収別に「中古・シェア」志向の強さを見ると、男女とも年収「200~400万円未満」にピークがある(図表6)。また、男性では「1000~1200万円未満」にもピークがある。
 1つ目のピークである年収300万円前後では、男性は20~30代で「民間非正規(フルタイム)」が、女性は30代前後で「民間非正規(フルタイム)」や「民間正規」が多い。2つ目のピークである男性の年収1千万円程度では40~50代で「民間正規」が多い。
                                                        1つ目のピークである年収300万円前後では、男性は20~30代で「民間非正規(フルタイム)」が、女性は30代前後で「民間非正規(フルタイム)」や「民間正規」が多い。2つ目のピークである男性の年収1千万円程度では40~50代で「民間正規」が多い。また、ピーク付近の変数のあてはまり度や他の消費志向を見ると、年収300万円前後では、男性は「中古品でも気にしない」の選択割合が高く、「電子決済」志向が強い。一方、女性は「ネットの個人間売買に抵抗ない」や「できるだけネット」の選択割合が高く、「堅実・慎重」志向や「情報収集」志向が強い傾向がある。また、男性の年収1千万円程度では、「できるだけレンタルやシェア」や「ネットの個人間売買に抵抗ない」の選択割合が高く、「価値観・ライフスタイル重視」志向や「電子決済」志向が強い傾向がある。
つまり、年収で見ると、「中古・シェア」志向の強い層は2つあり、1つは年収300万円前後で非正規雇用者が多く、中古品でも構わない男性、また、比較的堅実な消費態度を持ち、ネット購買を好み、ネットでの個人間売買への抵抗の弱い女性が多い層である。この層では、安くおさえたいという主に経済的な理由から中古品やシェアリングサービスを利用している様子が窺える。
 もう1つは、年収1千万円程度の高年収の正規雇用男性で、消費には自分の価値観やライフスタイルを重視し、ネット購買を好み、ネットでの個人間売買への抵抗が弱い層である。この層では、安くおさえたいというよりも、モノによっては(例えば消耗品など)コストパフォーマンスを重視して安くおさえるという合理的判断の上で利用している可能性もある。男性について年収別に、価値観・ライフスタイル重視志向を構成する主な変数のうち、コストパフォーマンス意識に最も関連の深い「価格が品質に見合っているかどうかをよく検討する方だ」について、あてはまる割合を見ると、年収とともに選択割合は上昇し、「中古・シェア」志向の男性の2つ目のピーク位置(「1000~1200万円未満」)と一致する(図表7)。一方で、年収1200万円以上の更なる高年収層では「中古・シェア」志向は弱まり、コストパフォーマンス意識も下がっている。
                                                        もう1つは、年収1千万円程度の高年収の正規雇用男性で、消費には自分の価値観やライフスタイルを重視し、ネット購買を好み、ネットでの個人間売買への抵抗が弱い層である。この層では、安くおさえたいというよりも、モノによっては(例えば消耗品など)コストパフォーマンスを重視して安くおさえるという合理的判断の上で利用している可能性もある。男性について年収別に、価値観・ライフスタイル重視志向を構成する主な変数のうち、コストパフォーマンス意識に最も関連の深い「価格が品質に見合っているかどうかをよく検討する方だ」について、あてはまる割合を見ると、年収とともに選択割合は上昇し、「中古・シェア」志向の男性の2つ目のピーク位置(「1000~1200万円未満」)と一致する(図表7)。一方で、年収1200万円以上の更なる高年収層では「中古・シェア」志向は弱まり、コストパフォーマンス意識も下がっている。
                                                            
                                            4|ライフステージ別に見た違い~短期間しか使わないモノで出費の嵩む未就学・義務教育児世帯で強い
最後にライフステージ別に「中古・シェア」志向の違いを見る。同年代でもライフステージが異なると、消費志向に違いがあるのではないだろうか。ここでは、同年代でも特にライフステージが多様化する30~40代に注目する。
            最後にライフステージ別に「中古・シェア」志向の違いを見る。同年代でもライフステージが異なると、消費志向に違いがあるのではないだろうか。ここでは、同年代でも特にライフステージが多様化する30~40代に注目する。
 30~40代について、ライフステージ別に「中古・シェア」志向の強さを見ると、男性は「末子未就学」で、女性は「末子義務教育」で最も強く、いずれも「未婚」を超える(図表8)。
                                                        30~40代について、ライフステージ別に「中古・シェア」志向の強さを見ると、男性は「末子未就学」で、女性は「末子義務教育」で最も強く、いずれも「未婚」を超える(図表8)。男性の「末子未就学」では職業は「民間正規」、年収は400~600万円未満が、女性の「末子義務教育」では職業は「民間非正規(短時間)」、年収は200万円未満が多い。
また、これらの層における変数のあてはまり度や他の消費志向を見ると、男性の「末子未就学」は「ネットの個人間売買に抵抗はない」や「できるだけレンタルやシェア」、「中古品でも気にしない」の選択割合が高く、「電子決済」志向が強い傾向がある。女性の「末子義務教育」は「中古品でも気にしない」の選択割合が高く、「安価重視」志向や「衝動買い」志向、「堅実・慎重」志向が強い傾向がある。
つまり、30~40代についてライフステージ別に見ると、「中古・シェア」志向が強い層では、主に経済的な理由から中古品やシェアリングサービスを利用している様子が窺える。なお、男性ではネットの個人間売買に抵抗が弱い影響もあるだろう。
子育て世帯では可処分所得が減少する中で、できるだけ消費を減らし貯蓄へつなげる傾向が強まっている12。子どもが小さいうちは、おもちゃなど一時期しか使わないものへの出費もある。子どもの成長にあわせて、洋服を頻繁に買い足す必要もある。このようなことが、未就学児や義務教育中の子どものいる世帯で「中古・シェア」志向が強い背景にあるのだろう。
12 久我尚子「共働き・子育て世帯の消費実態(1)~(3)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポートおよび基礎研レター(2017/3~2018/3)
4――おわりに~シェアで個人の「消費額」は減っていても、「消費量」は増えている可能性も?
                                            本稿では生活者1万人を対象にした調査データを用いて、「中古・シェア」志向の強い消費者層について分析した。その結果、「中古・シェア」志向は、女性より男性で、年齢は若いほど強く、職業別には学生や公務員で強い傾向があった。専業主婦で「中古・シェア」志向が弱いことは、実際のフリマアプリの利用状況とは異なる印象もあるのかもしれない。専業主婦はレンタルやシェアの利用意識は高いが、ネット間の個人間売買への抵抗の強さがネックだ。裏を返すと、専業主婦にも広く利用されているフリマアプリでは、個人間売買に対する不安感を上手く払拭できているのかもしれない。また、年収別には、「中古・シェア」志向は経済的理由で年収300万円前後の男女で強く、合理的判断から年収1千万円程度の男性でも強い。ライフステージ別には、おもちゃや洋服など短期間しか使わないものへの出費が嵩む未就学児や義務教育中の子のいる世帯で強い傾向がある。
経済指標における消費額の膨らみは力強さに欠けるようだが、シェアリング市場の状況を見れば、消費者個人を流通する「消費量」は増えている可能性もある。例えば、クルマを購入する場合は1台を数年間乗り続けるだろうが、カーシェアリングサービスを利用すれば色々な種類のクルマを楽しむことができる。また、フリマアプリでは、個人が3千円で買ったゲームソフトを飽きたら2千円で売る、2千円で買う消費者があらわれる、それをまた買う消費者があらわれる、というような連鎖も見られる。このような連鎖が、ゲームだけでなく洋服や靴など様々な消費領域で回っているとすれば、消費者が金額として費やす「消費額」は減りながらも、消費者個人が利用する商品数やサービス回数などの「消費量」は増えている可能性がある。
安くて便利、質も(そこそこ)良い商品やサービスがあれば、消費者の意識が向くのは当然だ。企業はシェアリングサービスと上手く共存するとともに、シェアリングサービスでは得られない付加価値を持つモノやサービスを生み出す必要がある。
            経済指標における消費額の膨らみは力強さに欠けるようだが、シェアリング市場の状況を見れば、消費者個人を流通する「消費量」は増えている可能性もある。例えば、クルマを購入する場合は1台を数年間乗り続けるだろうが、カーシェアリングサービスを利用すれば色々な種類のクルマを楽しむことができる。また、フリマアプリでは、個人が3千円で買ったゲームソフトを飽きたら2千円で売る、2千円で買う消費者があらわれる、それをまた買う消費者があらわれる、というような連鎖も見られる。このような連鎖が、ゲームだけでなく洋服や靴など様々な消費領域で回っているとすれば、消費者が金額として費やす「消費額」は減りながらも、消費者個人が利用する商品数やサービス回数などの「消費量」は増えている可能性がある。
安くて便利、質も(そこそこ)良い商品やサービスがあれば、消費者の意識が向くのは当然だ。企業はシェアリングサービスと上手く共存するとともに、シェアリングサービスでは得られない付加価値を持つモノやサービスを生み出す必要がある。
(2018年06月25日「基礎研レポート」)
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経歴
                            - プロフィール
 【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職
 ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
 ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
 ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
 ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
 ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
 ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
 ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
 【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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