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自動運転が普及したときのまちづくり-完全自動運転が普及した社会とまちづくり。その9

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
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そのような社会がもたらされれば、人々は必要性より、楽しさを求めて移動するようになるはずだ。自動運転の移動サービスで、楽しい場所に移動する。ただし、そこでは徒歩で過ごすだろう。人気のあるまちに電車で出かけてブラブラする、広い公園にクルマで行きのんびり過ごすという行動は、完全自動運転が普及した社会でも変わらないはずだ。
また、人々は利便性より、魅力的な場所に住まいを求めるだろう。今は通勤や通学に便利な立地を優先する傾向があるが、それ以上に、地域の魅力を評価して住まいを選択するようになる。地域の魅力とは、例えば、散歩が楽しそうだとか、コミュニティの質が高いとか、理想的な子育てができるなどだ。何に魅力を感じるかは、人それぞれであろうが、住まいの選択肢は今より確実に広がるはずである。
このように考えると、まちづくりの方向性も見えてくる。まちは魅力的で、人々を惹き付けるものでなくてはならない。そして、歩いて楽しめなければならない。そうでなければ人が来たり、暮らそうと思ったりしない。
この方向性は、商業地も住宅地も変わらない。もちろん楽しみ方の質は異なる。しかし、いずれにしても、まちの魅力を高め、歩いてひとときを過ごすことができるようにすることが、これからのまちづくりにとって重要になる。だからこそ、駐車場など、完全自動運転の普及によって必要なくなる空間を、まちの魅力づくりのために活用するのである。
さて、魅力を高める、歩いて楽しめるといったまちづくりの方向性は、実に古くから言われていることだ。まちづくりに携わる者にとっては、常にそこを意識してきた面がある。しかしながら、自家用車での移動を前提にした社会では、それが十分に実現できなかったと言える。
完全自動運転の普及によって、そのようなまちづくりが実現することを期待するのである。
(2018年03月30日「研究員の眼」)
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03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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