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- 副業は日本社会に定着するだろうか - 副業の現状や今後の課題 -
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1――はじめに
1 本稿は、金 明中(2018)「働き方改革シリーズ⑥:副業・兼業の現状と今後の課題」『福利厚生情報』2018 年度Ⅰを修正・加筆したものである。
2――政府が副業を奨励
副業による労働者のメリットとしては、(1) 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、 労働者が主体的にキャリアを形成することができること、(2) 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができること、(3) 所得が増加すること、(4) 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができることを挙げている。そして、留意点としては、(1) 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要であること、(2) 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要であること、(3) 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要であることが挙げられた。
一方、副業による企業のメリットとしては、(1) 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができること、(2) 労働者の自律性・自主性を促すことができること、(3) 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上すること、(4) 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながることを挙げている。そして、留意点として、必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要であると説明している。
現在、日本では副業が法律で禁止されてはいないものの、厚生労働省の「モデル就業規則」に基づいて多くの企業では会社の法律とも言える「就業規則」で副業を禁止している。今後、政府はモデル就業規則に「本業に影響を与えないこと」、「副業が労働者と副業をする会社に利益を発生させる一方、本業をする会社に損害を発生させないこと」等の条件を追加することで、副業と兼業禁止規定を変更し、副業を原則として許可していく方針である。今後政府はモデル就業規則改定などの環境整備を行い、2027年度には希望者全員が原則として副業を行うことができる社会を構築することを計画している(図表1)。
2 総務省統計局(2018)「人口推計(平成29年(2017年)10月確定値,平成30年(2018年)3月概算値) (2018年3月20日公表)」
(2018年03月30日「基礎研レポート」)
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生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
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