2018年03月14日

介護ロボットの「導入・利用で考えられる課題・問題」の一部再考-「平成28年度 介護労働実態調査」に見る導入状況と課題-

  青山 正治

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■要旨

「平成28年度 介護労働実態調査」((公益財団法人)介護労働安定センター)の事業所調査に介護ロボットの「導入状況」と「導入・利用で考えられる課題・問題」を尋ねた設問があり注目し、その集計結果に補足を加え考察を行った。

なお「導入状況」については、上記の調査実施時期が2016年10月であり、厚生労働省の「介護ロボット等導入支援特別事業(平成27年補正予算:52億円、同28年度に繰越)が実施中であるため、調査時点における導入上位機種についてのみ補足しコメントした。上記の調査時点で導入率トップは「入浴支援機器」が1.8%、次いで「見守り支援機器(介護施設型)」が1.5%、「コミュニケーションロボット」が1.0%となっている。ただ、「重点分野」の「入浴支援機器」はまだ上市している機器が少ないにも関わらず導入トップであり注目される動きである。このため導入支援事業が2016年度末頃には終了したと推測され、2017年の「介護労働実態調査」の結果が2018年夏頃に公表される見通しであり、「導入支援特別事業」の結果が大いに注目される。2016年と同様の介護ロボットに関する導入状況の事業所調査が実施されれば、全国の介護サービス事業所の大まかな導入状況が把握されよう。

特に「課題・問題」については、再考を進めていく上でその背景にある共通点で3分類した。それらは「A.情報提供等(共有を含む)の不足」「B.導入に付随する課題」「C.基本的な課題・問題」の3つである。なお、Bについては個別性が高く、Cについては解決が困難な「課題」も多いため、本稿ではAに絞って考察する。

A    情報提供等の不足        2-誤動作の不安、 5-技術活用面での心配、 7-介護ロボットの情報不足

B    導入に付随する課題      3-機器の維持・管理の負担、4-設置・保管スペースの課題

C    基本的な課題・問題      1-導入予算なし、6-費用対効果、8-ケアへの利用反対、9-現場の業務実態に不適合

上記Aの3課題について考察する。

<以下、3章 2|(1)~(3)の考察>

(1) 「誤動作の不安」については2つの視点からの対応を
「2-誤動作の不安(=誤動作の不安がある)」は、全体の2番目に位置しており、「課題・問題」への意識が他の項目に比較して若干高くなっている。その背景には、介護現場で活用する機器の「誤動作」は、対象者(被介護者)の転倒や落下などの事故に繋がる可能性があり、介護職自身も被介護者を守ろうとして事故に巻き込まれるかも知れない等の先入観から来る不安もあるのではないだろうか。

しかし、よくよく考えれば「重点分野」の機器群は、経済産業省などの開発支援を受けて公的試験施設で開発段階から様々な実証試験も行なわれ、年度ごとに実施された厳しい審査を受けた機器群である。このため、機器が需要サイドに提供される時点で誤動作等に対する主要な対応は終了している。

とすれば、介護系のユーザーが「2-誤動作の不安」で供給サイドに求める対応は、2つの視点が推測される。1つ目は[1]開発機器に備わった安全性確保の機能やシステムについての基本的知識(例えば、防水機能など)について、2つ目が[2]自身の操作中に「誤動作」が生じた際の具体的対処方法(例えば、緊急停止をさせた際の機器の挙動、機器適用の被介護者の安全確保の対応、その後の対処方法(機器のリセットや再起動方法など))についてであろうと筆者は推測する。

これらのことを通じて、「機器全般への漠然とした不安感、心理的恐怖感」や「機器の安全性についての情報不足」、「操作方法の習熟に対する不安」など、ユーザーが肌で感じている不安感を払拭することが導入に先立つ最優先の課題であるかも知れない。
 
 
(2) 「技術活用面での心配」は全職員に十分な講習と演習等の確実な実施を
2つ目の「5-技術活用面での心配(=技術的に使いこなせるか心配である)」は主に介護職が感じている不安である。

この背景には上述した内容に近い事柄も含まれようが、基本的には介護ロボット等の事前の試用導入や本格的導入時点で、十分な講習や演習(機器を実際に使った講習)等を関係者全員に確実に実施することが重要であろう。また、供給サイド(開発企業や販売代理店等)には、講習の開催方法の工夫や講習内容についても単に“とおり一遍”の機器の操作方法だけでなく、多忙な介護現場での機器の利活用の一連の流れと取り扱いの注意点など、ユーザー側に立った効果的情報の提供を期待したい。

繰り返しになるが、供給サイドには機器を安全かつ効果的に“利活用できる情報・知識・経験(ノウハウ)”を提供することが必要である。つまり、供給サイドが需要サイドに提供するのは、介護ロボットという機器だけでなく、その適切な運用も含めた「介護サービス」そのものだからである。
 
 
(3) Webの情報も充実してきているが、導入候補は直に試用することが重要
 3つ目の「課題・問題」である「7-介護ロボットの情報不足(=どのような介護ロボットがあるかわからない)」という点については、すでにWebなどにより様々な情報発信の取組みも行われている。例えば「介護ロボットポータルサイト」(経済産業省等)では代表的な「重点分野」のロボット等の介護現場における導入事例動画なども閲覧可能である。さらに、国際福祉機器展や様々の展示会で、導入を検討する機器メーカーや代理店の担当者と十分な質疑応答を行い、事前に十分な下調べを行うこともできる。また、それら展示会場は、機器のデモを見学するだけでなく、実機を試用することも可能であり、介護関係者が感じる疑問や不安の大半が改善・解決されると筆者は考えている。
 
 
おわりに
今回、本稿で筆者が推測し補足・考察した「介護労働実態調査(事業所調査)」の介護ロボットに関する調査・集計結果からは、開発・導入初期段階の各種タイプ別の介護ロボットの導入状況や介護サービス事業所の「課題・問題」意識が把握された。しかし、それら「課題・問題」は全く独立した別個のものでなく前節で検討、考察したように情報の効果的な提供や介護側の真の情報ニーズ把握があれば、解消可能な「課題・問題」も少なくないと考えている。

現在、様々な介護ロボット等の機器が多数登場しているが、少子高齢化を考えるとき、介護ロボットのことだけでなく、サービス産業の人手不足、介護職の加齢の進行、外国人技能研修生の受入等々の様々な要因をも十分に考えなければならない。それら介護分野の様々な課題・問題を検討する上で「介護労働実態調査」は極めて有益なデータを提供してくれるものであり、今後の継続調査の実現とその集計結果の公表に大いに注目したい。

■目次

はじめに
1――注視が必要な「介護労働実態調査」の介護ロボットに関する2つの設問
2――介護ロボットのタイプ別「導入状況」について
  1|タイプ別導入状況の集計結果について(複数回答)
  2|調査時点での導入率上位3タイプの機器について
3――介護ロボットの「導入・活用における課題・問題」について(複数回答)
  1|集計結果について「課題」解決の観点からの考察
  2|「課題・問題」の「A.情報提供等の不足」について課題解決の視点からの考察
おわりに
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青山 正治

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