2018年02月15日

2018・2019年度経済見通し(18年2月)

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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公的固定資本形成は、2016年度第2次補正予算の執行本格化から2017年4-6月期に前期比4.7%の高い伸びとなったが、その効果が一巡した7-9月期(同▲2.6%)、10-12月期(同▲0.5%)は2四半期連続で減少した。
公共事業関係費の推移 安倍政権発足後は毎年、年度途中に補正予算が編成される一方、当初予算は抑制気味(2017年度当初予算の公共事業関係費は前年比+0.0%)となっており、補正予算がなければ年度末にかけて公共事業が落ち込んでしまう構造になっている。2017年度補正予算では、災害復旧等・防災・減災事業を中心に公共事業関係費が約1兆円積み増された。しかし、2016年度補正予算の1.6兆円に比べて規模が小さいこと、2018年度の当初予算案でも公共事業関係費は前年比+0.0%の横ばいとなっていることを踏まえれば、公的固定資本形成は先行きも弱めの動きが続くことが見込まれる。2018年度以降も年度途中で補正予算の編成が必要となるだろう。

輸出は海外経済の回復を背景に堅調な推移が続くことが予想されるが、ITサイクルの改善ペースが鈍化することなどに伴い、3%台後半の世界経済の成長率と整合的な伸びに収束していくことが見込まれる。財貨・サービスの輸出は2016年度の前年比3.4%から2017年度には同6.4%へと加速するが、2018年度が同4.4%、2019年度が同3.3%と伸びが低下すると予想する。

一方、財貨・サービスの輸入は2016年度の前年比▲1.0%の減少から、国内需要の持ち直しを反映し、2017年度に前年比4.1%と増加に転じた後、2018年度が同3.2%、2019年度が同2.6%と底堅い推移が続くだろう。この結果、2016年度に前年比0.8%の大幅なプラスとなった外需寄与度は、2017年度が同0.4%、2018年度が同0.2%、2019年度が同0.1%とプラス幅が徐々に縮小することが予想される。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2017年1月に前年比0.1%と1年1ヵ月ぶりの上昇となった後、12月には同0.9%まで伸びを高めた。物価上昇の大部分はエネルギー価格の上昇によるものだが、ゼロ%程度で推移していた「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の上昇率も2017年12月には前年比0.3%のプラスとなり、基調的な物価にも改善の兆しがみられる。

先行きは、景気回復に伴う需給バランスの改善が先行きの物価の押し上げ要因となることが見込まれる。当研究所が推計する需給ギャップは、消費税率引き上げ後の2014年度前半には▲2%近く(GDP比)までマイナス幅が拡大したが、潜在成長率を上回るプラス成長を続けたことから、2017年4-6月期にプラスに転じた。10-12月期は潜在成長率を下回る成長となったものの、0.3%とプラスを維持している。景気は今後も堅調に推移するため、需給ギャップは当面プラス圏で推移する可能性が高い。

また、2017年度の企業業績の改善、物価上昇を受けて賃金上昇率が高まることから、低迷が続いているサービス価格にも徐々に上昇圧力がかかるだろう。コアCPI上昇率は当面ゼロ%台後半の推移を続けた後、2018年半ば頃に1%に達することが予想される。ただし、企業の価格改定に直結する個人消費の回復が緩やかにとどまり、経済成長率を下回る状態が続くこと、賃金上昇率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力も限られることなどから、上昇率はその後頭打ちとなり、2019年度中に日本銀行が物価安定の目標としている2%に達することは難しいだろう。

コアCPI上昇率は2017年度が前年比0.7%、2018年度が同1.0%、2019年度が同1.6%(1.1%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。
潜在GDPと需給ギャップの推移/消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測
日本経済の見通し(2017年10-12月期1次QE(2/14発表)反映後)/米国経済の見通し/欧州(ユーロ圏)経済の見通し
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年02月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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