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- 日本経済のジレンマ~消費主導の景気回復は実現しない?~
2018年01月12日
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■要旨
- 戦後2番目の長さとなった今回の景気回復に実感が伴わない理由のひとつは、経済成長率に比べ個人消費の伸びが低いことである。アベノミクス始動後の個人消費の伸びは年平均で0.5%と実質GDP成長率の3分の1にすぎない。
- そもそも、日本では消費の伸びが実質GDP成長率を上回る消費主導の景気回復を経験したことがほとんどない。景気後退期には個人消費の落ち込みが緩やかで、景気の下支え役になるというプラス面があるものの、景気回復が長期化するほど個人消費の相対的な弱さが浮き彫りになるというジレンマがある。
- 一方、米国では、景気回復局面における個人消費の伸びと実質GDP成長率はほぼ等しく、景気回復と個人消費の回復が両立することが多い。
- 日本では、景気回復局面における個人消費の伸びが実質GDP成長率を1%近く下回る(1980年以降の平均)。労働分配率の低下、財産所得、社会給付・負担、税負担なども含めた可処分所得の低迷、交易条件の悪化が個人消費の押し下げ要因となっている。
- 先行きは、株価上昇による資産効果や賃上げに伴う労働分配率の上昇は期待できるものの、賃上げの加速は企業収益の圧迫要因にもなる。過去の景気回復局面では、労働分配率が上昇し始めると企業収益の伸びが大きく鈍化し、景気がピークアウトすることが多かった。今回の景気回復局面で個人消費の本格回復が実現する可能性は低いだろう。
(2018年01月12日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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