2018年02月14日

QE速報:10-12月期の実質GDPは前期比0.1%(年率0.5%)-消費、設備主導で8四半期連続のプラス成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●10-12月期は前期比年率0.5%と8四半期連続のプラス成長

本日(2/14)発表された2017年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.1%(前期比年率0.5%)と8四半期連続のプラス成長となった(当研究所予測1月31日:前期比0.2%、年率0.8%)。

民間消費(前期比0.5%)が2四半期ぶり、設備投資(前期比0.7%)が5四半期連続で増加したが、7-9月期に成長率を大きく押し上げた外需(前期比・寄与度▲0.0%)、民間在庫変動(前期比・寄与度▲0.1%)がいずれもマイナスとなったため、成長率は7-9月期の前期比年率2.2%から大きく低下した。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.1%(うち民需0.2%、公需▲0.1%)、外需が▲0.0%であった。
 
10-12月期の成長率が7-9月期から大きく低下した理由は、輸入が7-9月期の前期比▲1.2%の減少から同2.9%の増加に転じたこと、民間在庫変動が前期比・寄与度0.4%から同▲0.1%のマイナスに転じたことである。輸入、民間在庫変動によって7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率2%以上押し上げられたが、10-12月期は逆に同▲2%以上押し下げられ、10-12月期の減速のほとんどがこれによって説明できる。輸入の増加、民間在庫変動のマイナス寄与は最終需要の弱さを示すものではなく、7-9月期から10-12月期にかけて景気が実勢として弱まったわけではない。

なお、民間在庫変動のうち、原材料在庫、仕掛品在庫は1次速報では内閣府の仮置き値が用いられており、実質GDP成長率への寄与度はそれぞれ前期比▲0.1%、▲0.0%となっている。2次速報では3/1公表予定の法人企業統計の結果が反映され、民間在庫変動が上方修正される可能性もある。

2017年10-12月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、実質GDP成長率(前期比年率)は2017年1-3月期が1.5%から1.2%へ、4-6月期が2.9%から2.5%へ、7-9月期が2.5%から2.2%へといずれも下方修正された。
需要項目別結果
名目GDPは前期比▲0.0%(前期比年率▲0.1%)と5四半期ぶりのマイナス成長となった。GDPデフレーターは前期比▲0.1%(7-9月期:同0.1%)、前年比0.0%(7-9月期:同0.2%)であった。民間消費を中心に国内需要デフレーターが前期比0.3%(7-9月期:同0.1%)と伸びを高めたが、原油高の影響などから輸入デフレーターが前期比2.7%となり、輸出デフレーターの伸び(同0.4%)を上回ったことがGDPデフレーターの押し下げ要因となった。
 
この結果、2017年の実質GDP成長率は1.6%(2016年は0.9%)、名目GDP成長率は1.4%(2016年は1.2%)となった。

<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.5%と2四半期ぶりの増加となった。ただし、天候不順の影響でサービス消費を中心に弱い動きとなった7-9月期の落ち込み(前期比▲0.6%)を取り戻しておらず、持ち直しのペースは緩慢にとどまっている。消費の基調は強くない。

家計消費の内訳を形態別にみると、食料品などの非耐久消費財は前期比▲0.1%(7-9月期:同▲0.2%)と2四半期連続で減少したが、7-9月期に3四半期ぶりに減少した自動車、テレビなどの耐久財は前期比3.6%(7-9月期:同▲1.1%)と大幅に増加したほか、天候不順の影響で7-9月期の前期比▲0.8%の減少となったサービスも同0.3%と持ち直した。

雇用者報酬は名目で前年比1.9%(7-9月期:同2.2%)、実質で前年比1.2%(7-9月期:同1.7%)となり、いずれも7-9月期から伸びが鈍化した。
実質雇用者報酬と実質可処分所得の推移 消費を取り巻く環境を確認すると、名目賃金が伸び悩むなかでも、雇用者数の高い伸びを主因として雇用者報酬は比較的順調に伸びている。しかし、個人消費に直結する家計の可処分所得の伸びは、超低金利の長期化に伴う利子所得の低迷、特例水準の解消やマクロ経済スライドによる年金給付額の抑制、年金保険料率の段階的引き上げなどから、雇用者報酬の伸びを大きく下回っている。安倍政権が発足した2012年10-12月期(景気の谷)から2017年10-12月期までの5年間で実質雇用者報酬は4.7%増えているが、この間に実質可処分所得は▲0.5%減少している(実質可処分所得は当研究所による試算値)。消費不振の根底には可処分所得の伸び悩みがあると考えられる。
住宅投資は前期比▲2.7%と2四半期連続で減少し、7-9月期の同▲1.5%から減少幅が拡大した。雇用所得環境の改善や低水準の住宅ローン金利が住宅投資を下支えしているが、相続税対策の需要一巡に伴う貸家の減少などから、新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2017年4-6月期の98.7万戸から7-9月期に95.5万戸、10-12月期が94.8万戸と2四半期連続で減少した。GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、2018年1-3月期も減少することが予想される。
 
設備投資は前期比0.7%と5四半期連続で増加した。日銀短観2017年12月調査では、2017年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比9.0%(全規模・全産業)となり、前年同時期の前年度比3.4%(2016年12月調査の2017年度計画)を上回り、12月調査としては過去10年で最も高い伸びとなっている。設備投資/キャッシュフロー比率は低水準にとどまっており、企業の投資スタンスは積極化しているわけではないが、企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に、設備投資は底堅い動きが続く可能性が高い。
 
民間在庫変動は前期比・寄与度▲0.1%(前期比年率▲0.3%)と成長率を押し下げた。製品在庫(7-9月期:0.0兆円→10-12月期:0.5兆円)はプラス幅が拡大したが、流通在庫(7-9月期:▲0.4兆円→10-12月期:▲0.6兆円)のマイナス幅が拡大したことに加え、1次速報段階では内閣府の仮置き値となっている原材料在庫(7-9月期:0.7兆円→10-12月期:0.0兆円)、仕掛品在庫(7-9月期:0.3兆円→10-12月期:0.2兆円)のプラス幅縮小が押し下げ要因となった。

公的需要は、政府消費が前期比▲0.1%と4四半期ぶりの減少、2016年度補正予算の執行一巡から公的固定資本形成が前期比▲0.5%と2四半期連続で減少した。2017年度補正予算では、災害復旧等・防災・減災事業を中心に公共事業関係費が約1兆円積み増されたが、執行は2018年度にずれ込むことから、公的固定資本形成は2018年1-3月期も減少する可能性が高いだろう。
 
外需寄与度は前期比▲0.0%(前期比年率▲0.1%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。財貨・サービスの輸出はIT関連を中心にアジア向けが好調だったことから、前期比2.4%の高い伸びとなったが、7-9月期の落ち込みの反動、国内需要の持ち直し、新型スマートフォンの発売に伴う通信機の急増などから、財貨・サービスの輸入が前期比2.9%と輸出を上回る高い伸びとなったため、外需は成長率の押し下げ要因となった。

(先行きも企業部門主導の成長が続く見込み)
前述したとおり、10-12月期の減速は輸入の増加、民間在庫変動のマイナス寄与によるものであり、景気の基調は引き続きしっかりしている。また、表面的には7-9月期が外需主導、10-12月期が内需主導の成長となったが、7-9月期、10-12月期を通して好調なのは輸出、設備投資の企業部門だ。一方、10-12月期の民間消費は増加に転じたが、7-9月期と均してみれば横ばい圏の動きにとどまり、住宅投資は2四半期連続で減少した。家計部門は低調な推移が続いていると判断される。

先行きについても、海外経済の回復に伴う輸出の増加、企業収益の改善を背景とした設備投資の回復が続くことが予想される。一方、名目賃金の伸び悩みや物価上昇に伴う実質所得の低迷から家計部門は厳しい状況が続きそうだ。当面は企業部門(輸出+設備投資)主導の経済成長が続く可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年02月14日「Weekly エコノミスト・レター」)

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