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返礼品競争から脱却できるか?-ガバメントクラウドファンディングとしての機能

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
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今回は、支援策の1つ「ふるさと起業家支援プロジェクト」に焦点を当てる。「ふるさと起業家支援プロジェクト」の目的と概要は、図表1に示すとおりである。筆者には、このプロジェクトに関し、思うことが2つある。
ふるさと起業家支援プロジェクトに対する危惧
起業家の事業に関する審査項目として、事業の公益性や採算性の他、自社製品の送付等がふるさと納税の趣旨に沿ったものであるか等が例示されている。御存知の通り、3割を超える返礼割合のものは、ふるさと納税の趣旨に反するとされている(2017年4月の総務大臣通知)。では、起業が成功した場合にのみ贈呈される場合、何割以下までなら許容されるのだろうか。「確実にもらえる3割相当の返礼品」と「成功した場合に限りもらえる3割相当の贈呈品」では、釣り合わない。投資理論に基づけば、不確実性を伴う場合の適切な贈呈割合は起業が成功する確率に大きく依存する。しかし起業が成功する確率を正しく見積もることはできない。起業が成功する確率を正しく補足できない以上、起業が成功した際に贈呈される新製品の適正割合は設定できない。これが、返礼品競争の新たな抜け道になることを危惧している。
ふるさと起業家支援プロジェクトに対する期待
ふるさと納税の意義の一つに、「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。」とある。この意義に照らせば、都市部の取るべき戦略は、地域で営業する輸入業者が取り扱うフランス産ワインを返礼品とし、非居住者から寄附を集める事ではなく、地域課題の解決の道筋を示し、居住者から寄附を集める事ではないだろうか。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年01月24日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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