2017年12月25日

【11月米個人所得・消費支出】個人所得(前月比)は予想対比下振れも、消費支出は予想を上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は前月、市場予想対比下振れも、消費は前月、市場予想を上回る

12月22日、米商務省の経済分析局(BEA)は11月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月値:+0.4%)となり、前月から伸びが鈍化、前月並みの伸びを予想していた市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.6%(前月値改定値:+0.2%)と、+0.3%から下方修正された前月、市場予想の+0.5%も上回った(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.4%(前月改定値:横這い)と、こちらも+0.1%から下方修正された前月を上回ったほか、市場予想の+0.2%も上回った(図表5)。貯蓄率1は2.9%(前月:3.2%)と前月から低下した。

一方、価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速、市場予想の+0.3%は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.2%)と、こちらは前月から伸びが鈍化した一方、市場予想(+0.1%)には一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.8%(前月値:+1.6%)と前月から伸びが加速、市場予想(+1.8%)に一致した。コア指数も+1.5%(前月値:+1.4%)と、総合指数同様、前月から加速、市場予想(+1.5%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:年末商戦を迎えた11月の消費は堅調

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 11月の名目個人消費(前月比)は、17年9月の+1.0%に比べれば低かったものの、それを除けば16年9月以来の伸びとなっており、消費が堅調であることを示した(図表1)。

米国では11月下旬の感謝祭から年末までの年末商戦が消費をみる上で重要だが、先日発表された11月の小売統計も、自動車ディーラー、ガソリン・スタンド、食品サービスを除く売上高が前年同月比+6.0%と昨年の同+4.6%を上回る伸びとなっており、これまでの所、年末商戦が非常に好調であることを示している。7-9月期のGDP確定値では、個人消費が前期比年率+2.2%(前期:+3.3%)と前期から伸びが鈍化していたが、10-12月期は前期からの伸びの加速が期待できる状況である。

一方、物価(前年同月比)は、総合指数、コア指数ともに揃って前月から伸びが加速した。総合指数、コア指数ともに力強い加速はみられないものの、17年8月に総合指数で+1.4%、コア指数で+1.3%で底入れした可能性があるとみられる。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが加速も利息・配当収入の伸びが鈍化

個人所得は個人消費を下回る伸びに留まったが、内訳をみると賃金・給与が前月比+0.4%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した一方、利息・配当収入が+0.5%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化したことが分かる(図表2)。労働需給のタイト化が持続しているほか、製造業や建設業などの業種で熟練労働力の不足が深刻化していることから、賃金・給与は今後も底堅い伸びが続こう。

個人所得から社会保障支出や税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.4%(前月:+0.4%)と、3ヵ月連続で堅調な伸びとなった(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースは前月比+0.1%(前月:+0.3%)と、こちらは前月から伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連は減少も全般的に前月から伸びが加速

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.8%(前月:横這い)、サービス消費が+0.6%(前月:+0.2%)と、財、サービス消費ともに前月から伸びが加速した(図表4)。

もっとも、財消費では耐久財が横這い(前月+0.3%)と前月から伸びが鈍化した。これは、自動車・自動車部品が▲2.3%(前月:+0.2%)とマイナスに転じことが大きい。自動車以外では、家具・家電が+1.4%(前月:+0.9%)となったほか、娯楽財・スポーツカーなども+1.8%(前月:▲0.4%)と前月から伸びが加速した。

また、非耐久財は+1.2%(前月:▲0.1%)と伸びが加速した。衣料・靴が+1.0%(前月:0.5%)と前月から加速したほか、ガソリン・エネルギーが+6.7%(前月:▲2.5%)と前月のマイナスから大幅なプラスに転じた。

さらに、サービス消費も、住宅・公共料金が+0.7%(前月:+0.3%)、外食・宿泊も+0.6%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速したほか、娯楽が+1.2%(前月:▲1.3%)と前月のマイナスから大幅なプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が物価を押し上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+4.3%(前月:▲1.1%)と前月のマイナスからプラスに転じ物価を押し上げた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:横這い)とこちらは3ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

前年同月比でも、エネルギー価格指数が+10.4%(前月:+6.9%)と、2ヵ月ぶりに2桁の伸びとなり物価を大幅に押し上げた(図表7)。食料品価格指数は+0.6%(前月:+0.5%)と、5ヵ月連続のプラスとなったものの、伸びは小幅に留まっている。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2017年12月25日「経済・金融フラッシュ」)

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