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超高齢社会の人の“移動”を支援する機器開発の動き-モーターショーに見るパーソナルモビリティやコンセプトモデル-

青山 正治
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1――東京モーターショーに出展されたパーソナルモビリティやコンセプト機器

図表-1はWHILL(ウィル)株式会社が今夏に発売した最新モデル「WHILL MODEL C」というパーソナルモビリティである。開発コンセプトは「暮らしを楽しくする新しい“クルマ”」とする電動車いすで、外出や買い物といった日常生活を快適に過ごすことを目標としている。勿論、介護保険の福祉用具貸与の対象である。
このモビリティは、一般的なハンドル型電動車いす(シニアカー)と比べると小回りが効き、5cmの段差を乗り越えられ、若干の砂利道や芝生上も走行できる。さらに、10°程度の坂道も走行可能で、傾いた道を横切る際の片ながれ(低い側に車輪を取られる現象)も自動制御され直進でき、活動範囲が広いという特長を有している。本体は電動車いすとは思えないほどスリムなデザインで歩道や屋内でも走行可能である。この他にも、運搬や格納のために簡単に3つに分解でき、セダンタイプの自動車のトランクにも積めるほか、座席下には20リットルのかごを標準搭載している。このようにユーザーニーズに対応した様々な工夫が、日常生活での活動範囲を広げ快適な散歩や買い物などを可能としている。
現在、新たなロボティクス技術(自律走行等)を付加した次世代機(ロボティクスモビリティ 「WHILL NEXT」)開発が、同社とパナソニック株式会社により進展しており、今後の同機の進化に注目したい。
本節以降は、ホンダ(本田技研工業株式会社)が提案する「近未来のモビリティ」のコンセプトモデル(開発の方向性や概念を示すモデルで発売は未定)である。“もっと、家族と一緒にいよう。”を基本コンセプトとして「家族のつながり」に焦点を当て家族の生活の新しい可能性が提案されている。ここでは展示された複数のコンセプトモデルの中から3点を紹介し、筆者の感想などを記す。

この機器の特長はシート高が調節でき、やや高めにすると一緒に歩く人とほぼ同じ目線で周りの視線を気にせずに移動が出来るという。車いすの活用を始めた人は着座位置が低く周囲の人が大きく感じられ、上から見下ろされる視線がとても気になるという。この機器の活用では、恐らくハイチェアに腰掛けて移動する感覚で、周りの視線を気にせず、同伴者が車いすの場合のように屈み込む負担も減ろう。また、自身で歩行可能だが脚力が低下した高齢者等の活用では、疲れた場合はシートを低くして通常の椅子としても使える。コンパクトであり屋内から屋外までの移動が想定されている。

図表-3は「Honda ふれモビ Concept」という、人と人の“ふれあい”を開発コンセプトにしたモビリティである。最大の特長は二人乗りが可能なコンパクトな電動車いすである。サイズ的には一人乗り電動車いすとほぼ同じであり、介助者がシート後部に立ち乗りすることが想定されている。
今後、高齢化の進行に伴い、連合いが歩行介助や車いすが必要になると、老夫婦そろっての外出機会は減ってこよう。そのような際の移動に最適な電動クルマ椅子のコンセプトモデルがこの「Honda ふれモビ Concept」であろう。また、高齢化の進行によって親子で「ふれモビ」を活用するシーンも増えるのではないだろうか。介助用車いすで外出する際の介助者の負担軽減と同時に、一緒に移動出来ることの楽しみに注目しつつ、コンセプトモデルながら今後の実用化へ向けた取組に期待したい。

図表-4、5は「Honda 家モビ Concept」である。このコンセプトモデルは、高齢社会を意識したコンセプトではないかも知れないが簡単に触れたい。図表-4が正面からの写真である。住宅の1階の角がそのまま自動運転のEV(電気自動車)になるという発想のコンセプトモデルである。一般の住宅の駐車場スペースをそのまま移動する部屋として家屋に組込んだという発想がとてもユニークなコンセプトモデルである。
図表-5の運転席のモックアップ(原寸大の模型)は、家屋にビルトインされた状態であり、インパネの大型液晶画面にはアクアリウム(水槽)が表示されている。

以上が介護ロボット等を調査・研究する筆者が興味を覚えた多数の展示内容からのごく一部の紹介である。この他にも大手メーカーのパーソナルモビリティや新たなコンセプトの歩行支援機器など、興味深い内容が展示されていた。
(2017年12月04日「基礎研レター」)
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