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2016年健康寿命は延びたが、平均寿命との差は縮まっていない~2016 年試算における平均寿命と健康寿命の差
基礎研REPORT(冊子版)10月号
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
しかし、このことを不安に感じる人の方が多いようだ。平均寿命が延びても、「健康で生きられる期間」が延びなくては、有難味がないというものだ。「健康で生きられる期間」も延びているのだろうか。
本稿では、「2016年簡易生命表」を使った「2016年健康寿命」の概算結果を紹介する。正式な数値は、厚生労働省からの公表を待たれたい。
「健康で生きられる期間」の定義は、人や環境により様々な考え方があると思われる。国では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義し、「国民生活基礎調査1」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問の結果を用いて算出していることから、本稿ではこの定義を使う。
1 「国民生活基礎調査」は毎年実施されているが、健康寿命の算出に使用する設問を含む健康調査は3年に1回実施されているため、それにあわせて健康寿命も3年ごとに公表されている。
1―健康寿命も延びているが、健康寿命と平均寿命の差は依然として長い
2016年時点の健康寿命を、今回公表された「2016年簡易生命表」と、6月下旬に厚生労働省から公表された「2016年国民生活基礎調査」の結果を使って、2013年の算出方法に倣って、筆者が計算してみたところ、男性が72.14年、女性が74.79年となった2。したがって、健康寿命はこの3年間で男性が+0.95年、女性が+0.58年延びたことになる。
この間の平均寿命の延びは、男性が+0.77年、女性が+0.53年なので3、3年間の健康寿命の延びは、男女とも同じ期間の平均寿命の延びをわずかに上回っている。しかし、健康寿命と平均寿命の差、すなわち、健康上の問題で日常生活に影響がある期間は、男性が8.84年、女性が12.35年と、2010年以降やや改善しているが、依然として長い。
国では、2020年までに健康寿命を2010年の数値から1年以上延伸することを目標として掲げている4。この目標は今回の概算で男女ともクリアしたことになる。
2 厚生労働科学研究「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」のロジックを使って計算をした。
4 例えば、2015年7月16日 第8回 日本経済再生本部 配布資料『日本再興戦略 中短期工程表』(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai8/siryou1.pdf)など。
2―健康上の問題で日常生活に影響がある割合
健康寿命の計算に使われているのは、「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問である。2016年の結果は、全体の13.4%( 男性12.0%、女性14.7%)が「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答していた5。
5 2016年調査では、日常生活に影響がある内容として「日常生活動作」が39%、「外出」が37%、「仕事・家事・学業」が44%、「運動」が35%、「その他」が 14%で、2013年調査と大きな変動はない(割合はいずれも男女年齢計。)。
3―日常生活に影響がある期間の短縮、および男女差縮小に向けて
しかし、平均寿命と健康寿命の差、すなわち、健康上の問題で日常生活に影響がある期間は改善しておらず、男性で約9年、女性で12年強と、依然として長かった。特に、女性で日常生活に影響がある期間は長く、男性と比べると、平均寿命では+6.16年上回っているにも関わらず、健康寿命では+2.65年上回っているに過ぎない。これは、健康上の問題で日常生活に影響がある割合の男女差による。日常生活に影響がある割合は、男女とも改善しているものの、60~74歳を除く年代で、女性が男性を上回っていた。さらに、70歳代で男女差が縮まる一方で、80歳以上では差が拡大していた。
健康上の問題で日常生活に影響がある割合は、現在の傾向が続けば、今後も改善していく可能性があり、健康寿命の延伸も期待できる。なお、男女差については、現在、男女差が縮小している70歳代が、80歳代になったときに、引き続き男女差が小さいまま推移するかが注目される。
(2017年10月05日「基礎研マンスリー」)
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2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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