2017年09月27日

「パワーカップル」世帯の動向(3)-妻の年収と金融資産、経済的余裕は比例するが、持ち家率は必ずしも比例しない

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • パワーカップル世帯の動向(2)」では、20~60代の共働き妻の5.3%を占める年収700万円超のパワーカップル妻は、最近ではDINKSだけでなく、第一子出産前後の30歳代や子育て中もキャリアを積み続けた50歳代のDEWKSでも多いことを確認した。本稿では、妻の収入を「300万円未満」「300~700万円未満」「700万円以上」の三区分に分けて、世帯金融資産や居住形態、経済状況の余裕など、暮らし向きの様子を確認する。
     
  • 世帯金融資産は、妻の年収が高いほど多い。世帯金融資産1,000万円以上は、妻の年収が300万円未満では27.5%だが、年収300~700万円未満では43.9%、パワーカップル妻と見られる年収700万円以上では67.4%である。年収700万円以上では世帯金融資産5,000万円以上も多く、実に32.6%を占める。
     
  • 持ち家率は、妻の年収700万円以上と300万円未満で高い。持家率は必ずしも妻の年収に比例しないが、年収300万円未満の妻ではライフステージが進行した層が多く、住居の購入率が高いことがあるのだろう。また、年収700万円以上の妻では、持ち家のうち集合住宅が多く、利便性を重視してマンションを購入する層も多いようだ。
     
  • 経済的余裕感は、妻の年収が高いほど強い。余裕層は、年収300万円未満では38.6%だが、年収300~700万円未満では66.4%、年収700万円以上では67.4%である。年収700万円以上では「たいへん余裕のある方」も多い。一方、年収300万円未満では「まったく余裕のない方」が多いが、当該層の持ち家率は比較的高い。
     
  • 経済的余裕感・世帯金融資産・居住形態の関係を見ると、世帯金融資産が多いほど経済的余裕感は強い。一方、持ち家率と経済的余裕感や、世帯金融資産と持ち家率は必ずしも比例関係にはない。つまり、妻の年収と世帯金融資産、経済的余裕感は比例するが、これらと持ち家かどうかには必ずしも比例しないことが分かる。
     
  • 家の所有より、安定した収入や多くの金融資産がある方が、「使えるお金がある」という安心感を生み、経済的余裕感につながるようだ。安定した収入や将来の経済的負担の大きさが経済的余裕感に影響し、現在の消費生活に反映される。このことは個人消費の底上げを考える上でも示唆となるのではないか。

■目次

1――はじめに
2――妻の収入から見た暮らし向きの違い
  1|年収三区分で見た世帯金融資産の分布
   ~パワーカップル妻では世帯金融資産5千万円以上が3割
  2|年収三区分で見た居住形態の分布
   ~パワーカップル妻の持ち家率は74%、うち4割はマンション
  3|年収三区分で見た経済的余裕感の分布
   ~パワーカップル妻の2割が「たいへん余裕のある方」
  4|経済的余裕感と世帯金融資産・居住形態の関係
   ~資産や経済的余裕と持ち家率は必ずしも相関はない
3――おわりに
 ~経済的余裕感は家の所有よりも「使えるお金がたくさんある」という安心感で高まる

(2017年09月27日「基礎研レター」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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