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2017年09月25日
欧州大手保険グループの2017年上期末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
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(3)トピック
Aegonは、2017年に資本ポジションの強化に向けて、以下の対策を講じている。なお、こうした見直しに基づいて、従来の140~170%のグループソルベンシー比率の目標範囲を150~200%に引き上げている。さらに、ローカルベースでも、オランダ(150~190%)及び英国(145~185%)のソルベンシーII目標範囲の更新を行っている。なお、米国のRBCの目標範囲は350~450%となっている。
(3-1)米国の転換方法の改正
Aegonは、ソルベンシーIIの下での米国事業のソルベンシー換算方法等について、(1)RBCの換算係数の250%から150%への引き下げ、(2)移転可能性の制限を反映するための100%RBC要件による自己資本の削減、の修正を行うことで、監督当局であるDNB(オランダ中央銀行)の承認を得た。この方法論は、EIOPAの同等性に関するグループソルベンシーの計算方法に関するガイダンス、と整合している。この方法論は、毎年のレビューの対象となる。方法論の変更により、Aegonのグループソルベンシー比率は15%ポイント上昇し、欧州の類似会社との比較可能性が高まる、と説明している。
(3-2)オランダの計算方法の修正等
Aegon のSCR比率は、(1)2017年第3四半期におけるグループからの10億ユーロの資本注入、(2)Unirobe Meeùs Groep(UMG)の売却、(3)リスクプロファイルの強化、を反映すると、プロフォーマベースで2017年上期末の144%から175%に増加すると予想されている。
さらに、Aegonは、DNBとの広範囲にわたる協議により、部分内部モデルに関していくつかの優れた方法論的問題を解決した、としている。 例えば、繰延税金の損失吸収能力(LAC-DT)に関するDNBのガイダンスの解釈について合意し、2017年6月30日にオランダのLAC-DT係数を75%に設定した。LAC-DT係数は合意された方法論を使用して四半期ベースで計算されることになる。
(3-3)その他
その他に、米国のランオフ事業の大部分の売却(SCR比率への影響+ 5%ポイント)、Rothesay Part VIIの移転関連(+2%ポイント)、市場へのインパクトや1回限りの項目(+6%ポイント)等が資本の創出につながった、としている。
Aegonは、2017年に資本ポジションの強化に向けて、以下の対策を講じている。なお、こうした見直しに基づいて、従来の140~170%のグループソルベンシー比率の目標範囲を150~200%に引き上げている。さらに、ローカルベースでも、オランダ(150~190%)及び英国(145~185%)のソルベンシーII目標範囲の更新を行っている。なお、米国のRBCの目標範囲は350~450%となっている。
(3-1)米国の転換方法の改正
Aegonは、ソルベンシーIIの下での米国事業のソルベンシー換算方法等について、(1)RBCの換算係数の250%から150%への引き下げ、(2)移転可能性の制限を反映するための100%RBC要件による自己資本の削減、の修正を行うことで、監督当局であるDNB(オランダ中央銀行)の承認を得た。この方法論は、EIOPAの同等性に関するグループソルベンシーの計算方法に関するガイダンス、と整合している。この方法論は、毎年のレビューの対象となる。方法論の変更により、Aegonのグループソルベンシー比率は15%ポイント上昇し、欧州の類似会社との比較可能性が高まる、と説明している。
(3-2)オランダの計算方法の修正等
Aegon のSCR比率は、(1)2017年第3四半期におけるグループからの10億ユーロの資本注入、(2)Unirobe Meeùs Groep(UMG)の売却、(3)リスクプロファイルの強化、を反映すると、プロフォーマベースで2017年上期末の144%から175%に増加すると予想されている。
さらに、Aegonは、DNBとの広範囲にわたる協議により、部分内部モデルに関していくつかの優れた方法論的問題を解決した、としている。 例えば、繰延税金の損失吸収能力(LAC-DT)に関するDNBのガイダンスの解釈について合意し、2017年6月30日にオランダのLAC-DT係数を75%に設定した。LAC-DT係数は合意された方法論を使用して四半期ベースで計算されることになる。
(3-3)その他
その他に、米国のランオフ事業の大部分の売却(SCR比率への影響+ 5%ポイント)、Rothesay Part VIIの移転関連(+2%ポイント)、市場へのインパクトや1回限りの項目(+6%ポイント)等が資本の創出につながった、としている。
7|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIに同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表している。SST比率は2015年末に、規制の変更等により、低下している。SSTの報告は年1回である。
Z-ECMはソルベンシーIIやSSTとは異なり、UFRを使用していないことから、EU諸国を親会社としている保険グループと比べて、金利低下の影響をより受けることになる。
(1)SCR比率の推移
2017年上期は、着実な営業利益の計上に加えて、市場の影響がプラスに働いて、ソルベンシー比率は9%ポイント上昇した。
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIに同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表している。SST比率は2015年末に、規制の変更等により、低下している。SSTの報告は年1回である。
Z-ECMはソルベンシーIIやSSTとは異なり、UFRを使用していないことから、EU諸国を親会社としている保険グループと比べて、金利低下の影響をより受けることになる。
(1)SCR比率の推移
2017年上期は、着実な営業利益の計上に加えて、市場の影響がプラスに働いて、ソルベンシー比率は9%ポイント上昇した。
4―その他の事項
この章では、SCR比率算出等に関係するその他の事項について報告する。
これらの項目については、既に2016年末数値に関するレポートとして、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2016年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-」(2017.4.17)の中でも報告している。
さらには、2016年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2017.7.18)で、各社の長期保証措置や移行措置の適用状況について、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-」(2017.7.19)や保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-」(2017.7.24)等のレポートにおいて、各社の内部モデルの適用状況について報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
これらの項目については、既に2016年末数値に関するレポートとして、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2016年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-」(2017.4.17)の中でも報告している。
さらには、2016年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2017.7.18)で、各社の長期保証措置や移行措置の適用状況について、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-」(2017.7.19)や保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-」(2017.7.24)等のレポートにおいて、各社の内部モデルの適用状況について報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
AllianzとAXAは200%をベースに設定している。Generaliは経営行動を起こす下限水準のみを公表している。Prudentialは地域毎に目標を設定している。AvivaはWorking Rangeという名称で水準設定している。Aegonの目標範囲は、これまでは他社に比較して低かったが、今回の見直しにより、他社並みの水準に引き上げられている。
なお、SCR比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
監督規制上のソルベンシーへの対応方針は各社各様となっている。
2|SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
各社とも内部モデルを適用しているが、その適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については各社とも同等性評価に基づいている。
なお、SCR比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
監督規制上のソルベンシーへの対応方針は各社各様となっている。
2|SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
各社とも内部モデルを適用しているが、その適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については各社とも同等性評価に基づいている。
3|SCR等の算出方法(長期保証措置の適用状況)
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置1の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。
保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2017.7.18)で報告したように、Zurich以外のソルベンシーII制度下にある6社については、全社がボラティリティ調整を適用し、PrudentialとAviva(及びAegonがほんの一部)が、マッチング調整や技術的準備金に関する移行措置を適用している。
これらの措置の適用による影響(2016年末ベース)については、以下の通りであり、英国の保険グループがこれらの措置に大きく依存していることが示されていた。下記の表の数値は、GeneraliもAvivaも監督ベースの数値である。
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置1の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。
保険年金フォーカス「欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2017.7.18)で報告したように、Zurich以外のソルベンシーII制度下にある6社については、全社がボラティリティ調整を適用し、PrudentialとAviva(及びAegonがほんの一部)が、マッチング調整や技術的準備金に関する移行措置を適用している。
これらの措置の適用による影響(2016年末ベース)については、以下の通りであり、英国の保険グループがこれらの措置に大きく依存していることが示されていた。下記の表の数値は、GeneraliもAvivaも監督ベースの数値である。
1 長期保証措置(経過措置を含む)の内容及びそのEU各国における適用状況については、筆者による、保険・年金フォーカス「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)~(4)-EIOPAの報告書の概要報告-」(2017.1.10~2017.1.16)を参照していただきたい。
5―まとめ
以上、各社のプレス・リリース資料等に基づいて、欧州大手保険グループの2017年上期末におけるSCR比率の水準等について報告してきた。
2016年1月1日に新たなソルベンシー制度であるソルベンシーIIがスタートして、1年半が経過した。この間も、各社は自社の考え方をベースとしつつも、新たなソルベンシー制度に適切に対応すべく、各社各様の方式で資本管理への対応を行ってきている。
これらの内容については、これまでの四半期毎の報告書や、2016年についてはSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)において開示や説明がなされてきている。ただし、これまでのレポートで触れてきたように、一般の投資家が理解を深めるにはまだまだ十分とはいえない面もあるように思われる。今後の開示資料や説明資料において、さらなる工夫・充実が図られていくことを期待したい。
いずれにしても、欧州の大手保険グループのソルベンシーIIを巡る状況やそれへの各種対応については、日本の保険会社にとっても大変参考になるものがあることから、今後とも継続的にウォッチしていくこととしたい。
2016年1月1日に新たなソルベンシー制度であるソルベンシーIIがスタートして、1年半が経過した。この間も、各社は自社の考え方をベースとしつつも、新たなソルベンシー制度に適切に対応すべく、各社各様の方式で資本管理への対応を行ってきている。
これらの内容については、これまでの四半期毎の報告書や、2016年についてはSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)において開示や説明がなされてきている。ただし、これまでのレポートで触れてきたように、一般の投資家が理解を深めるにはまだまだ十分とはいえない面もあるように思われる。今後の開示資料や説明資料において、さらなる工夫・充実が図られていくことを期待したい。
いずれにしても、欧州の大手保険グループのソルベンシーIIを巡る状況やそれへの各種対応については、日本の保険会社にとっても大変参考になるものがあることから、今後とも継続的にウォッチしていくこととしたい。
(2017年09月25日「基礎研レポート」)
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- EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの報告書の概要報告-
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- 欧州大手保険グループの2017年末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/06/13 | 欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SCRの算出(内部モデルの使用状況と分散効果の状況等)- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/06/06 | 欧州保険会社が2024年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-長期保証措置と移行措置の適用状況- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/06/05 | IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(13)-新たに1社が指定されてIAIGsは19の国・地域からの60社に- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/05/28 | 複素数について(その2)-複素数と方程式- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
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【欧州大手保険グループの2017年上期末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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