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2017年09月08日
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ユーロ圏の景気回復の裾野は着実に広がる。実質GDPは17年2.2%、18年1.8%と予測
ユーロ圏経済の回復の裾野は着実に広がっており、世界金融危機から続いた長期停滞を脱しつつある。
9月7日公表の4~6月期の実質GDP(確報値)は前期比0.6%、前期比年率2.6%で、1~3期の同0.5%、同2.2%からやや加速した。16年10~12月期以降、年率で2%を超えるペースの景気拡大が続いている。
景気の拡大基調は、緩急の差こそあるものの、ユーロ圏のほぼ全域で定着するようになった。4~6月期の実質GDPはスペインが前期比0.9%と引き続き主要国で最も高く、ドイツが同0.6%、フランスが同0.5%だった。主要国で景気の回復が最も遅れたイタリアも同0.4%で拡大基調が続くようになった(図表1)。2008年1~3月の実質GDPの7割程の水準で底這いが続くギリシャも、4~6月期は前期に続き前期比0.5%成長だった。
需要面から成長への寄与度を見ると、個人消費が前期比0.3%で引き続き牽引役を果たした。1~3月期は成長を下押しした固定資本形成は同0.2%成長を押し上げた。外需の寄与度は、1~3月期に続き輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったことで、同0.1%実質GDPを押し上げた。
9月7日公表の4~6月期の実質GDP(確報値)は前期比0.6%、前期比年率2.6%で、1~3期の同0.5%、同2.2%からやや加速した。16年10~12月期以降、年率で2%を超えるペースの景気拡大が続いている。
景気の拡大基調は、緩急の差こそあるものの、ユーロ圏のほぼ全域で定着するようになった。4~6月期の実質GDPはスペインが前期比0.9%と引き続き主要国で最も高く、ドイツが同0.6%、フランスが同0.5%だった。主要国で景気の回復が最も遅れたイタリアも同0.4%で拡大基調が続くようになった(図表1)。2008年1~3月の実質GDPの7割程の水準で底這いが続くギリシャも、4~6月期は前期に続き前期比0.5%成長だった。
需要面から成長への寄与度を見ると、個人消費が前期比0.3%で引き続き牽引役を果たした。1~3月期は成長を下押しした固定資本形成は同0.2%成長を押し上げた。外需の寄与度は、1~3月期に続き輸出の伸びが輸入の伸びを上回ったことで、同0.1%実質GDPを押し上げた。
景気拡大のピッチは、7~9月期に入って、やや弱まっているが、1%程度のユーロ圏の潜在成長率を上回る状態は続いている。総合購買担当者指数(PMI)は7月55.7、8月55.8で、4~6月期よりも低下しているが、なお実質GDPで年率2%近いペースに相当する。
今後は、主に輸出の伸びの鈍化により、景気拡大のペースはやや鈍化するが、緩和的な金融環境と中立的な財政政策に支えられて、内需主導の自律的な成長が続く見通しだ。
実質GDPは、2017年前年比2.2%、2018年同1.8%と予測する。
今後は、主に輸出の伸びの鈍化により、景気拡大のペースはやや鈍化するが、緩和的な金融環境と中立的な財政政策に支えられて、内需主導の自律的な成長が続く見通しだ。
実質GDPは、2017年前年比2.2%、2018年同1.8%と予測する。
ユーロ圏では雇用・所得環境の改善を伴う消費主導の回復は続く
4~6月期の個人消費は、実質前期比0.5%増と1~3月期の同0.4%から持ち直した。
消費の堅調は雇用・所得環境の改善に支えられている。失業率の低下傾向は続いており、7月は9.1%とEUの欧州委員会が推計するNAWRU(賃金上昇を加速させない失業率、17年5月時点の推計で17年=8.9%)に近づいている(図表4)。
賃金の伸びは、世界金融危機前よりも低い1%台半ばでの推移が続いており、加速の兆候はない(図表5)。スペイン、ベルギーなど前年比でゼロ%台の国がある一方、リトアニアは前年比10%を超えるなど圏内でもばらつきも大きい。
実質所得の伸びは鈍化している(図表6)。賃金の伸びが緩やかな一方で、ゼロ近辺にあったインフレ率(CPI)が主にエネルギー価格要因で1%台に回復したことによるものだ。
実質所得の伸びが鈍化しても、消費が底堅さを保ったのは、家計のマインドの改善傾向が続いたからだ。家計サーベイからは、経済や雇用の先行きに対する見方や資金繰りの見通しも改善し、耐久消費財の購買意欲が高まっていることが確認できる。家計のマインドは世界金融危機前の好況期以来の良好な水準にある(図表7)。
業績が好調な企業の雇用への意欲も高まっており(図表8)、雇用・所得環境の改善を伴う、消費主導の自律的な回復の持続が見込まれる。
消費の堅調は雇用・所得環境の改善に支えられている。失業率の低下傾向は続いており、7月は9.1%とEUの欧州委員会が推計するNAWRU(賃金上昇を加速させない失業率、17年5月時点の推計で17年=8.9%)に近づいている(図表4)。
賃金の伸びは、世界金融危機前よりも低い1%台半ばでの推移が続いており、加速の兆候はない(図表5)。スペイン、ベルギーなど前年比でゼロ%台の国がある一方、リトアニアは前年比10%を超えるなど圏内でもばらつきも大きい。
実質所得の伸びは鈍化している(図表6)。賃金の伸びが緩やかな一方で、ゼロ近辺にあったインフレ率(CPI)が主にエネルギー価格要因で1%台に回復したことによるものだ。
実質所得の伸びが鈍化しても、消費が底堅さを保ったのは、家計のマインドの改善傾向が続いたからだ。家計サーベイからは、経済や雇用の先行きに対する見方や資金繰りの見通しも改善し、耐久消費財の購買意欲が高まっていることが確認できる。家計のマインドは世界金融危機前の好況期以来の良好な水準にある(図表7)。
業績が好調な企業の雇用への意欲も高まっており(図表8)、雇用・所得環境の改善を伴う、消費主導の自律的な回復の持続が見込まれる。
ユーロ圏では投資の回復も持続。世界経済悪化、急激なユーロ高、金利上昇がリスク
4~6月期の固定資本形成は、実質前期比0.9%増と1~3月期の同マイナス0.3%から回復した。世界金融危機とそれに続く債務の広がりで停滞が長引いた投資も、四半期毎の振れはあるものの、回復基調が定着するようになった(図表9)。
今後も投資の拡大傾向は続く見通しだ。企業収益は好調で、企業マインドは、製造業、サービス業ともに、世界金融危機前の好況期以来の水準に改善している(図表10)。稼動率も、長期平均を上回る水準にある(図表11)。17年の設備投資は、今年3~4月時点の調査では、16年実績を上回る実質前年比5%が計画されていた(図表12)。10~11月の調査で下方修正の可能性はあるが、大幅なものとはならず、新たに示される18年の計画も、拡大基調の持続を裏付けそうだ。
投資の回復で、18年には、世界金融危機以降、開いたままになっていたGDPギャップがほぼ解消し、潜在成長率の緩やかな回復が進む見通しだ。
今後も投資の拡大傾向は続く見通しだ。企業収益は好調で、企業マインドは、製造業、サービス業ともに、世界金融危機前の好況期以来の水準に改善している(図表10)。稼動率も、長期平均を上回る水準にある(図表11)。17年の設備投資は、今年3~4月時点の調査では、16年実績を上回る実質前年比5%が計画されていた(図表12)。10~11月の調査で下方修正の可能性はあるが、大幅なものとはならず、新たに示される18年の計画も、拡大基調の持続を裏付けそうだ。
投資の回復で、18年には、世界金融危機以降、開いたままになっていたGDPギャップがほぼ解消し、潜在成長率の緩やかな回復が進む見通しだ。
(2017年09月08日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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