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まちづくりレポート みんなで創るマチ 問屋町ー若い店主とオーナーの連携によりさらなるブランド価値向上に挑む岡山市北区問屋町
基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.243]

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
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1―問屋町というまちの個性
2―問屋町ブランドを確立するまで
問屋町は、「協同組合岡山県卸センター」(以下、組合)が用地を取得し、1968年に整備したもので、現在も問屋町の多くの土地・建物を組合の構成メンバーが所有している。1992年の大規模小売店舗立地法改正以降、経営環境が急速に悪化していった。この状況を打開するため、組合は、2000年に定款を変更して卸売業以外の入居を認め、幅広い参入を募り始めた。
2|リノベーション
後に、次々と問屋町でビルのリノベーションを手がけて現在の問屋町を形作っていったのが、明石卓巳さん1である。明石さんは、まちづくりに広告プロモーションの手法を取り入れた。メイン通りにある、明石さんの構想に賛同するオーナーのビルをリノベーションし、岡山県内に本社を持つブランド力の高いテナントを誘致した。それらができると、急速に客足が増え、次第に周囲に店舗が増えていった。
1広告プロモーションの企画・制作を専門とする。株式会社レイデックス代表取締役
3|賃料の低さと路上駐車
店舗が増えたのには別の理由もある。当時の問屋町のテナント賃料は岡山駅周辺の中心部に比べ3~5割低く、新規出店するには優位であった。加えて、従来から路上駐車が規制されていなかったため、店舗側で来客用の駐車場を確保する必要が無かった。来客にとっても、駐車時間を気にすることなく買い物や飲食を楽しむことができる。こうして問屋町はブランドイメージを確立し、高感度な若者を惹きつけるまちになっていった。
3―まちづくりの転機
需要が高まれば当然家賃相場も上がる。2009年頃には、市中心部との家賃差はほとんど無くなっていた。家賃の値上げに耐えられない店舗は撤退し、すぐに別の店舗が入居した。問屋町ブランドとは関係なく出店する店舗も増え始め、ブランド力の低下が懸念されてきた。駐車マナーの問題が顕在化したのもその頃からだ。来街者の増加によって駐車スペースが不足し、マナー違反が増え、歩行者などから警察に苦情が寄せられるようになった。
2|テナント会の発足
そうした状況を改善していくため、ビルオーナーとテナントで連携しようとする動きが組合の方から持ち上がり、2010年9月に58店舗が加盟して「問屋町テナント会」が発足した。以降、駐車マナー対策と活性化に向けて、組合とテナント会が協力した取り組みを積み重ねていった。
3|モノサシ
2013年4月、組合は、設立50周年記念として、問屋町マップと、問屋町のロゴマーク及びコンセプトコピーを制作した。明石さんが手がけたものだ。明石さんは、組合とテナント会が協力していく中で、まちづくりに対する考え方を改めたという。自分自身が前面に出て動いていた頃と異なり、テナント会の若手がまちづくりに対しモチベーションを高めていった。その姿に接し、関係者自身がこのまちにかかわることに喜びを感じることが重要だと気付いた。
明石さんはこうした考えを組合に話す機会を得た上で、組合からの依頼でこれらを制作した。コンセプトコピーは、『みんなで創るマチ』。提案書には次のように説明されている。「私たちが目指す“マチ”は形式的なものだけではなく、そこに関わる人々の喜びがプラスされて初めて成立します。だから、誰にでも分かりやすい日常的な言葉を“問屋町コンセプトコピー”として掲げました」明石さんはこれをいつでも携帯できる「モノサシ」と呼ぶ。「このまちに関わる人を増やして、みんなが喜ぶまちづくりを行う。そのときに必要なのが共通のモノサシ。困ったときはこれで測り直せばいい、行動指針になる」
(2017年06月07日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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