2017年03月30日

高まる介護ロボット導入による「効果的な活用」への注目度-多くの関係者が詰め掛けた「介護ロボットフォーラム2016」-

青山 正治

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1――「介護ロボットフォーラム 2016」の開催状況

2017年3月1日、東京の有明にて、公益財団法人テクノエイド協会により「介護ロボットフォーラム2016」が開催され、約700人もの多数の関係者が参加して盛況であった。このフォーラムは厚生労働省の「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」の一環として開催された。今年のフォーラムの主な内容は3つあり、一つ目が「最新介護ロボットの展示及び説明、相談会」、二つ目は「介護ロボットシンポジウム」の開催である。さらに、三つ目が「介護ロボット導入好事例の表彰及び最優秀賞の決定」であった。特にこの3つ目の「導入好事例の表彰」は今回が初の取組であり、当日、会場で「最優秀賞」の審査・決定が行なわれた。以降では簡略に同フォーラムの3つの内容の概況に触れる。
1最新介護ロボットの展示及び説明、相談会
介護ロボットの展示では24機種が展示・説明され、それらの介護ロボット等は図表-1のとおりである。展示機器の「分類」に着目すると、「見守り支援」が8機種で最も多く、次いで「移動・移乗支援」が6機種、「コミュニケーション」が4機種、「リハビリ支援」が3機種と続いている。
図表-1 最新介護ロボット(24企業)の展示(参加企業リスト)
以下では展示機種数の多い、上位3分類の機器について簡単にコメントする。

見守り支援」(8機種)の機器は、恒常的な人手不足に悩む介護施設等において、職員の配置が手薄となる夜間の巡回の間の見守りをカバーしたり、離床をプライバシーに配慮した画像で介護職がスマートフォンやタブレット端末への通知で確認して転倒などの発生を未然に防ぐ効果が期待されている。また、機種によっては対象者のバイタル(心拍、呼吸等)や活動が記録できる機種や、靴に発信機を装着し認知症の人の見守りを支援する機器等が展示された。同じ分類の機器でも、機器ごとに様々な特徴を有しており、介護施設や在宅介護などで見守りの目的に応じた機器の活用拡大を期待したい。

次に「移動・移乗支援」(6機種)の機器も、利用者の移動・移乗を支援する様々なタイプの機器が展示された。表の番号「11」「12」「14-②」が非装着型、「13」が装着型の「移乗支援」機器であり、「14-①」「15」「16」が「移動支援」の機器である。外出などの移動を支援して歩行能力を維持することは、様々な自立支援の中でも重要な支援策の一つであろう。非装着の「移乗支援」機器でユニークなのが「11」で、ベッドの縦半分をベッドから分離し、リモコン操作によって電動で介助者用の車いすに変形させることが出来る。このほか装着型の改良タイプや歩行支援用の機器等も試用が可能であり、来場者とメーカー担当者との熱心な意見交換や質疑応答が繰り広げられていた。

コミュニケーション」(4機種)の機器も、この分野では認知度の高いロボット4機種が展示説明されていた。各ロボットとも登場初期に比べると改良やアプリケーションソフトの開発が進展している状況がうかがわれた。

これら以外の分類の「リハビリ支援」「排泄支援」「服薬支援」「入浴支援」の各機器もユニークな機器が多く、その開発の重要性は上述の3分野と変わりなく、介助を支援する上で重要な機器群である。

また、今後の介護の政策的な推進の方向性の検討が行われている政府の未来投資会議の構造改革徹底推進会合の「医療・介護-生活者の暮らしを豊かに」会合では、介護分野の論点として「自立支援」や「リハビリ」、さらにデータ活用(データヘルス)やICT活用が取り上げられている。

今後、これらの具体的推進策の検討で、様々な自立支援の方法の一つとして、介護ロボット等のより効果的な活用方法の普及啓発や利活用を促進するための制度面の工夫などの動向をも注視したい。
2介護ロボットシンポジウム
介護ロボットシンポジウムでは、介護ロボットの展示会場の奥手で、主催のテクノエイド協会や介護ロボット開発・導入に向けた事業を推進する経済産業省及び厚生労働省の担当者から政策動向についてのプレゼンテーションが行なわれた。会場では準備された座席数が足りず、その後方では多数の立ち見の来場者に囲まれるような状況であった。続いて介護ロボットの導入事例報告の2機関と介護ロボットを活用した介護技術開発モデル事業を実施する4機関から報告が行なわれた。下図では、その「導入事例」と「モデル事業」の活用機器名称と報告機関名のみを示す。
図表-2 介護ロボット導入事例(2機関)及び介護技術開発モデル事業(4機関)の成果報告
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青山 正治

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