コラム
2015年05月27日

ロボットを上手に活かす超高齢社会の構築に向けて-ロボット革命による社会的な課題解決に必要なこと

青山 正治

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2015年1月、「日本再興戦略 改訂2014」(2014年6月公表)で掲げられた「ロボット革命の実現」に向けた「アクションプラン(五カ年計画)」である「ロボット新戦略」が公表された。5月15日には、その推進母体となる産学官による「ロボット革命イニシアティブ協議会」が設立され、ロボット革命の実現へ向けた本格的な取組が開始された。

この「ロボット新戦略」は、単に新分野のロボットを開発することを目標としているだけでなく、ロボットの活用・普及によって様々な社会的な課題を解決することや、ロボットを活用する「人」が様々なメリットを獲得できるようになることをも目指している。したがって、「ロボット新戦略」の推進によって、既に普及を開始している家庭用の掃除ロボットや今後製造業の組立ラインなどで人の作業の一部を代替するロボットのような人と共存・共生するロボットが数多く登場してこよう。

この共存・共生の点について、介護ロボットの開発動向を何年も調査研究をしていて思うことが2つほどある。一つは、開発されたロボットの活用・普及のためには、新たな使い方やルールの開発が必要であるということである。この点は、80年代、90年代のパソコンによるIT化の進展になぞらえることが出来よう。例えば、PCの導入初期には、まずキーボードの使い方に慣れ、各種のアプリケーションソフトの操作方法を学習する必要がある。さらにLANやインターネットの普及に伴って、様々な仕事などの進め方や活用方法の工夫や変更、ルールの整備が必要となる。その結果として、利便性の高い効率的な環境構築が実現される。このICTというイノベーション普及の流れを例にすれば、新たな機器やシステムの普及には高機能の機器開発と導入だけでなく、受入側の意識や対応が重要なカギを握っていると考えられる。

もう一つは、多様な可能性を持つロボットを開発し、社会で上手に活用していくためには、活用分野ごとに「人」とロボットの役割分担等に関する事前の十分な検討が重要であるということである。例えば、今、人が行なっている仕事について、人が行なうべきこと、ロボットに任せるべきことを事前に検討する。また両者の中間に位置する仕事について、最適な人とロボットの協働の仕方を、将来の変化を見据えつつ、事前に十分に検討することが重要である。さらに、今後社会の様々な分野でより効果的にロボットを活用していくためには、人とロボットが共存・共生する社会そのものの在り方の議論も必要であろう。

今日本が直面している超高齢社会の様々な課題の解決には、家庭から企業の製造現場に至るまで、あらゆる場面で、「人」と共存・共生する多様なロボットを活用することが必要不可欠である。海外諸国も日本のロボット活用の動向を注視しており、「ロボット新戦略」の推進とロボット革命の実現による様々な社会的な課題の解決への取組は、超高齢社会のトップランナーである日本が、中長期に亘って世界の中で果たすべき重要な役割ではないだろうか。



 
    1 過去の「研究員の眼」及び「基礎研レポート」は、「執筆一覧」(リンク)より参照可能

(2015年05月27日「研究員の眼」)

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青山 正治

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