2017年03月09日

米国経済の見通し-経済への影響が大きいトランプ政権の経済政策は依然として視界不良

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の10-12月期成長率(前期比年率)は、+1.9%(前期:+3.5%)と前期から伸びが鈍化。外需の特殊要因剥落が低下の主な要因。一方、個人消費は堅調な伸びを維持し、消費主導の景気回復持続を確認。
     
  2. 11月の大統領選挙以降、トランプ大統領の経済政策への期待から株価は史上最高値圏で推移、消費者および企業マインドは回復が顕著。もっとも、2月末に行われた同大統領の施政方針演説でも経済政策に関する具体的な言及はなく、大統領就任1ヵ月を経過しても政権スタッフが不足するなど、トランプ政権の政策立案能力に懸念。
     
  3. 3月中旬の予算教書から18年度予算編成作業が本格化。議会共和党とどの程度政策協調できるか注目。ただし、法人税制改革などで考え方の開きが大きく、政策協調がスムーズに進まない場合には、トランプ政権に対する政策期待が剥落する可能性。
     
  4. 今後の米国経済動向は、経済政策運営が左右。経済政策は選挙公約から大幅な軌道修正が不可避と予想。経済政策に伴う成長押上げは、17年がほぼゼロ、18年も限定的に留まる見込み。この結果、成長率(前年比)は、17年が+2.2%、18年が+2.4%と予想。
     
  5. 金融政策は、17年3月に利上げした後、年内は追加で1回(合計2回)、18年は年3回の利上げを予想。長期金利は17年末に2%台後半、18年末に3%台前半を予想。
     
  6. 米国経済に対するリスク要因は、米国内の政治リスクに加え、欧州の政治リスクも含めた海外要因からの資本市場の不安定化。

■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)10-12月期の成長率は前期から伸びが鈍化
  ・(経済見通し)成長率は17年+2.2%、18年+2.4%を予想
2.実体経済の動向
  ・(個人消費)労働市場の回復を背景に個人消費は堅調
  ・(設備投資)資源関連の建設投資が増加
  ・(住宅投資)3期ぶりにプラスに転じるも、懸念される金利上昇
  ・(政府支出、財政収支)トランプ政権と議会共和党の政策協調は不透明
  ・(貿易)当面マイナス寄与が持続。今後の焦点は通商政策の行方
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)エネルギー価格上昇に伴い、物価上昇が加速
  ・(金融政策)3月の利上げ後、17年は追加で1回、
         18年は年3回の利上げを予想。
  ・(長期金利)金利水準の調整局面はあるものの、
         18年末にかけて緩やかな上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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