2016年12月09日

米国経済の見通し-来年以降は、米国内政治動向が鍵。トランプ氏の政策公約が全て実現する可能性は低い。

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の7-9月期成長率(前期比年率)は、+3.2%(前期:+1.4%)と前期から大幅に加速し、個人消費主導の景気回復持続を確認。ただし、当期は、純輸出などで特殊要因によって成長率が持ち上げられた面があり、10-12月期の成長率は小幅低下の見込み。
     
  2. 11月に行われた大統領・議会選挙は予想外の結果となったものの、トランプ次期大統領の経済政策への期待から資本市場ではリスク選好の動きが顕著。
     
  3. トランプ氏の経済政策は減税、インフラ投資拡大、規制緩和など景気にプラスの政策と、保護主義的な通商政策や不法移民対策などの景気にマイナスの政策が混在。
     
  4. このため、17年以降の米国経済はトランプ次期大統領の経済政策運営に左右される展開。ただし、財政赤字、債務残高の増加が見込まれることから、減税やインフラ投資の規模縮小は不可避とみられる。この結果、17年の成長率(前年比)は+2.2%、18年が+2.4%と成長加速は小幅に留まろう。
     
  5. 金融政策は、16年12月に追加利上げを再開した後、17年は2回(0.5%)、18年は3回(0.75%)に留まる見込み。一方、長期金利は17年末に2%台半ば~後半、18年末に3%台前半まで上昇しよう。
     
  6. 米国経済に対するリスク要因としては、米国内外の政治リスクに加え、中国をはじめとする新興国経済の減速懸念に伴う資本市場の不安定化が挙げられる。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)7-9月期の成長率は、14年7-9月期以来の高い伸び
  ・(経済見通し)成長率は17年+2.2%、18年+2.4%を予想
2.実体経済の動向
  ・(個人消費)労働市場の回復を背景に底堅い伸びが持続
  ・(設備投資)ドル高が懸念も、資源関連の設備投資は回復見込み
  ・(住宅投資)10-12月期はプラス転換も、金利上昇の影響を注視
  ・(政府支出、財政収支)選挙公約から規模縮小も、
    政府支出の増加、財政赤字の拡大を予想
  ・(貿易)10-12月期以降は成長のマイナス寄与へ
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)総合指数は原油価格の上昇に伴い緩やかに上昇へ
  ・(金融政策)17年は年2回、18年は年3回の利上げを予想
  ・(長期金利)緩やかな上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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