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企業内容等の開示は機能しているか?-より具体的な保有目的開示に期待する
金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
3――特定投資株式に占める持ち合い株式の割合
4――より具体的な保有目的に期待する
しかし、株式持ち合いの複雑さと提出会社の判断の容易性を勘案し、特定投資株式が開示対象となった。結果として、投資家が持ち合い状況を把握することの容易さは、さほど高まっていない。
そこで、業種、企業の成熟度(上場先)などにより、特定投資株式のうち持ち合い株式が占める割合に差があるならば、多少なりとも、投資家の参考になるのではないかと考え分析に取り組んだ。残念ながら、発行企業の業種以外に、特段の傾向は見られなかった。
株式持ち合いの複雑さに起因し、提出会社ですら、株式持ち合いか否かを判断するのが容易でないのだから、外部の投資家が持ち合い状況を把握することは土台無理な話だと諦めるしかないのだろうか。
冒頭で記した、コメントに対する金融庁の考え方の続きには、『投資者の投資判断に有益な情報を提供する観点から、純投資目的か否かという保有目的を個別銘柄開示が必要となりうる銘柄であるか否かの基準とした上で、一定の上位銘柄に該当する純投資目的以外の目的で保有する株式については保有目的を具体的に記載することとしました』と記されている。
確かに、個別銘柄開示が必要となりうる銘柄であるか否かの基準と、一定の上位銘柄の指定(貸借対照表計上額が資本金額に占める割合に関わらず、開示が必要な銘柄の範囲拡大)は、有益な情報提供に寄与している。問題は、保有目的の記載内容だろう。特定投資株式毎に保有目的を具体的に記載している企業も一部ある。しかし、大多数の企業は「取引先との関係維持・強化のため」3など同じ保有目的を並べており、お世辞にも具体的とは言えない。
コーポレート・ガバナンスに関する開示内容を充実した本来の目的に鑑み、より具体的な保有目的が開示されることに期待したい。
3 大多数には、特定投資株式の発行体が金融機関とそれ以外で多少記述が異なる場合も含む。
03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
(2017年02月21日「基礎研レポート」)
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