コラム
2017年02月13日

完全数とその魅力について-「博士の愛した数式」を観て、改めて数字の持つ奥深さに魅せられました-

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はじめに

「博士の愛した数式」(小泉堯史監督)は、大学時代に数学を専攻して、曲がりなりにも、アクチュアリーという数学に関係する専門資格を有する私にとって、非常に興味深い映画であった。

小川洋子氏の小説を映画化したものであるが、交通事故による脳の損傷で記憶が80分しか持続しなくなってしまった元数学者である「博士」(寺尾聡)と、彼の新しい家政婦である「私」(深津絵里)とその息子「ルート」の心のふれあいを描いた作品で、映画鑑賞後に本当に心温まる気持ちにさせられた。

さて、この映画の中では、多くの数学用語が出てくる。今回は、その中から「完全数」について、紹介したい1
 
1 以下の記述では、後に述べる「メルセンヌ素数」に関する下記のWebサイトからの情報等に基づいている。
 Mersenne Primes:History, Theorems and Lists  http://primes.utm.edu/mersenne/index.html
 さらに、GIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search)のWebサイトを参考にした。
 http://www.mersenne.org/

完全数とは

「完全数(Perfect number)」と言われると、一体どんなに凄い数字なんだろうと、一瞬身構えてしまうかもしれないが、その定義は「その数字自身を除く約数の和がその数字自身に等しい自然数」ということになる。例えば、6の約数は、1、2、3、6の4つで、6以外の約数の和が、1+2+3=6となるので、6は完全数である。28も完全数で、1+2+4+7+14=28 となっている。「博士の愛した数式」では、これが阪神タイガースの江夏投手の背番号であるため、「博士」は江夏投手のファンだということで紹介されていた。

完全数は限られている

実は、完全数は、現時点で確認されているものは49個しかない(2016年末時点)。小さい順に、

6、28、496、8128、33550336、8589869056、137438691328、2305843008139952128、・・・・・

となっている。最近までは48個と言われていたが、2016年1月に49個目が発見されている。

完全数を巡る未解決問題

完全数については、「完全数が無数に存在するのか、有限なのか」、「奇数の完全数は存在するのか」、「1の位が6か8以外の完全数は存在するのか」といった問題は未解決のままである。

これらの問題自体はシンプルで、数学者でなくても理解できるが、その解答は極めて難しいということになる。こうしたことは往々にしてみられることである。 

偶数の完全数とメルセンヌ素数

一方で、完全数については、「偶数の完全数は、全て2n-1×(2n-1)の形である」ことが知られている。より、詳しくは、2n-1が素数であるような正の整数nに対して、2n-1×(2n-1)は完全数となるが、逆に、偶数の完全数は2n-1が素数であるような正の整数nを用いて、2n-1×(2n-1)という形で表される。

n-1という形の数を「メルセンヌ数」といい、素数のメルセンヌ数を「メルセンヌ素数」とよんでいる。従って、上記は、「メルセンヌ素数と偶数の完全数が1対1に対応している」ことを示している。この定理の後半は、オイラー(Euler)によって証明されている。

実際に、上記で示した完全数は、以下のように表現される。

 n=2  6=2×(22-1)        n=3   28=22×(23-1)
 n=5  496=24× (25-1)      n=7 8128=26×(27-1)
 n=13  33550336=212×(213-1)    

完全数の興味深い特徴

完全数はいくつかの興味深い特徴を有している。例を挙げると以下の通りである。

(1)6以外の完全数は、奇数の立法和で表される。

具体的には、以下の通りである。

   28=13+33                496=13+33+53+73  
 8128=13+33+53+73+93+113+133+153
 33550336=13+33+53+73+93+113+133+153+ ・・・・・ +1233+1253+1273

(2)6以外の完全数は4の倍数となっている。

(3)完全数は、連続した自然数の和で示される(これは、映画の中でも紹介されていた)。

具体的には、以下の通りである。
    6=1+2+3             28=1+2+3+4+5+6+7
  496=1+2+3+ ・・・・・ +31   8128=1+2+3+ ・・・・・ +127
 33550336==1+2+3+ ・・・・・ +8191

(2017年02月13日「研究員の眼」)

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