2017年02月06日

Jリート市場は年間6%上昇。物件取得額は過去3番目の高水準-不動産クォータリー・レビュー2016年第4四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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4.J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場

2016年第4四半期の東証REIT指数(配当除き)は、世界的な長期金利の上昇を懸念し軟調に推移していたが「トランプ・ラリー」に沸く株式市場に対する出遅れ感などから期末にかけて上昇し、9月末比1.7%上昇した。セクター別では、オフィス(+3.5%)と住宅(+3.7%)が上昇する一方、商業・物流等(▲1.5%)は下落した(図表-19)。12月末時点のバリュエーションは、純資産8.1兆円に保有物件の含み益1.7兆円を加えた9.8兆円に対して時価総額は12.1兆円でNAV倍率は1.2倍、分配金利回りは3.5%で10年国債利回り(0.0%)とのスプレッドは3.5%である。

2016年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数の騰落率は+6.2%となり2年ぶりに反発した(図表-20)。英国のEU離脱決定や米国のトランプ新大統領誕生など海外発のイベントに翻弄されたものの、国内の不動産市況が底堅く推移し各社の業績が好調であったことなどがプラスに働いた。

新規上場7社と物件取得額1兆7,692億円(前年比11%)はいずれも昨年実績を上回った。特に、物件取得額は過去3番目に高い水準で、国内の不動産取引が減少傾向にあるなか4、上場REITの高い物件取得力を示す1年となった(図表-21)。資産タイプ別に見ると、物流施設やホテルが大きく伸びた。一方、運用資産の約8割を占めるオフィス・住宅・商業施設の取得額はいずれも前年比で減少し、これら3資産の占率は56%と過去最低水準にとどまった。エリア別では都心5区の比率が前年の28%から23%へ低下した。不動産の取引利回りが低下するなか、REITもより高い利回りを求めてコアアセットからサブアセットへ、都心部から周辺エリアへと投資対象を拡大している。

また、日銀のマイナス金利政策により実質マイナス利回りで資金を調達する事例が出るなどデットの調達環境は良好で、投資法人債の発行条件は平均で期間10年・利率0.51%であった。
図表-19 東証REIT指数(配当除き、2015年12月末=100)/図表-20 2016年のJ-REIT市場(まとめ)/図表-21 J-REITによる物件取得額(用途別)
ニッセイ基礎研究所が1月上旬に実施した不動産投資市場に関するアンケート調査によると5、現在の景況感について「良い」または「やや良い」と答えた割合から「悪い」または「やや悪い」と答えた割合を差し引いた値(DI、ディフュージョン・インデックス)は+65となり、4年連続で大幅プラスとなった。一方、6ケ月後の景況感について「変わらない」が過去最高の2/3を占め、「良くなる」または「やや良くなる」の割合から「悪化」または「やや悪化」の割合を引いた値は▲4となった(図表-22)。昨年と比べて景況感に大きな変化は見られないが、米国では新政権がスタートしEU主要国では選挙の年を迎える。「国内安定vs海外激動」の構図が鮮明となるなか、現在はマーケットの方向感を掴みにくい状況にあると言える。
図表-22 不動産投資市場の景況感DI(現況、先行き)
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2017年02月06日「不動産投資レポート」)

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