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- 「保険」との適切な距離感とは-「生活保障調査」からみる若年加入者の加入状況の変化
2017年01月17日
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このように、男性では伝統的な専業主婦世帯を中心とする子どもがいる片働き世帯を除いて死亡保険金額の大幅な減少傾向が続くなか、女性では、死亡保険金額を圧縮しつつ未婚女性を中心に医療保障を充実させる動きがみられていた。では、このような状況は家計における保険料支出にどのように現れているのだろうか。
2 入院給付金日額は50~60歳代では男女ともほぼ横ばいで推移していることから、生保業界全体としてみた第三分野における保険料収入の増加傾向は、加入率の上昇によるところが大きいものと思われる。
2 入院給付金日額は50~60歳代では男女ともほぼ横ばいで推移していることから、生保業界全体としてみた第三分野における保険料収入の増加傾向は、加入率の上昇によるところが大きいものと思われる。
3――生命保険加入者の年間支払保険料
これを子どもの有無や所得、夫婦の就業形態別にみると、男性では既婚(子あり)層で2004年以降、未婚の世帯収入300万円未満層では2010年以降、それぞれ一貫して減少傾向が続いている反面、女性では未婚の世帯収入300万円未満層で2004年以降、既婚(子あり)の片働き層で2010年以降、それぞれ増加傾向にあることがわかる(図表- 7)。このような一部の増加傾向を示す層を除けば、2016年時点の年間支払保険料は5時点間でもほぼ最低水準にあり、特に男性の既婚(子あり)の常雇・非正規では23.1万円、女性の既婚(子なし)では17.2万円と、それぞれ最高額であった2004年(32.8万円、25.5万円)に比べ10万円近くの減少となっている。
このように、生命保険事業において、永く主要な収益源となってきた死亡保障市場においては、伝統的な専業主婦世帯を中心とする子どもがいる片働き世帯を除いて死亡保険金額を圧縮する動きが鮮明なものとなっていた。未婚者や既婚で子どもがいない層のみならず既婚で子どもがいる共働き世帯においても、妻の雇用形態を問わず男女とも死亡保険金額が減少していたことは、夫婦双方が世帯内の稼得者であることを鑑みれば、世帯における死亡保障の意味合いや重要度が低下しつつあるとも考えられよう。一方で、未婚女性を中心として入院給付金日額が増加するなど医療保障を充実させる動きがみられたことは、「保険」そのものから離れているわけではなく、家族のあり方や、「保障」そのものの意味合い、優先順位が変化しつつあることを示している可能性もあろう。
これまでみてきたとおり、消費者は「保険」から距離を取りつつあるように見受けられる。しかし、多くの消費者が保険について十分な知識を持ち合わせていない3中では、個々の世帯において将来を見通して適切な距離感をもって加入できている世帯ばかりとは限らず、必要以上に距離を取っている場合もあろう。ライフスタイルの多様化が進む中、「保険」との適切な距離とはどのようなものか、売り手、買い手双方ともに、立ち止まって考えてみることも必要ではないだろうか。
3 最新の「生活保障調査」では、金融・保険に関する知識の自己評価について尋ねているが、全体では金融・保険のいずれについても、「詳しくない」が7割を超えており、特に男性20歳代、女性の20~30歳代では保険に関する知識の自己評価として「詳しくない」とする回答が8割を超えている。
これまでみてきたとおり、消費者は「保険」から距離を取りつつあるように見受けられる。しかし、多くの消費者が保険について十分な知識を持ち合わせていない3中では、個々の世帯において将来を見通して適切な距離感をもって加入できている世帯ばかりとは限らず、必要以上に距離を取っている場合もあろう。ライフスタイルの多様化が進む中、「保険」との適切な距離とはどのようなものか、売り手、買い手双方ともに、立ち止まって考えてみることも必要ではないだろうか。
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(2017年01月17日「基礎研レポート」)
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